第十九魔導 不穏な影
短くて主人公たちが出ません。
シルエット男目線です。
そこは自分の手も足も見ることができない程暗く、そして冷たい部屋だった。いや、部屋と呼ぶには広すぎる。そんなだだっ広い部屋の奥にごつい椅子に誰かが座っている。
だが先ほど言った通り自分の手足も見えない暗闇で椅子に誰が座っているか分かるはずがない。それどころか椅子がある事に気付くことも普通ならできないだろう。
だが椅子の数メートル先に立つ私はそれを簡単に遣って退ける。
私の姿もまた部屋の暗さと同じかそれ以上に暗い。それはまるで闇、と言ってもいい程だ。闇の様に暗い私の背には等身大の、やはり闇の様に暗い刃物を背負っている。
「──────それで五大は見つかったか? オルクス」
前方から凛とした低い声が聞こえる。それは女性の声で我らが主の声。
オルクス、それが私の名前だ。
「いえ──────しかし場所は分かりました」
「ほう、それはどこだ?」
主は興味津々に聞いてくる。
「和国の──────」
そこで一旦言葉より先にあの時の戦闘を脳裏に浮かべる。
時間にして一か月前。自分より4、5歳下の男女三人組。女の方も名前は覚えている。菜月と美緒、と男に呼ばれていた。
だが女より名前の分からない男に何らかの違和感を私は覚えていた。
彼と会う前に感じたあの膨大な魔力、そして五大の魔力。その魔力を頼りに向かった先には820にも満たない魔力の持ち主だった。つまりあれは……──────
「──────魔導学園です」
違和感であって確信ではない。
そのため学園であった男女の事を話さず、場所のみを口にする。
「魔導学園、ね」
姿の見えない主はうっすら笑みを浮かべた。いや、浮かべた様に気配を感じた。私はそのまま黙って主である女性が次の言葉を放つのを待つのだった。




