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魔導学園の頑張らない少年  作者: 暇な青年
第一章 頑張らない少年
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第一魔導 主人公不在

 それはいつもより深い闇で街を覆っていた。月は雲に覆われ姿を隠し、街頭はチカチカと点滅し、人が居ない街路で周りの闇と同じかそれ以上に暗く、深い闇で出来た人影がそこにいた。

 人影はまるで何かを探すように右に左に、と首から上を動かす。しかし、見えるのはシャッターの閉まった店のみ。


 「ここにもいない……どこにいる五大精霊」


 何かの気配を探すように黙り込む。しかしやはり探し物は見つからず人影は別の場所へと闇に溶けるように消えて行った。




 ◆◇◆◇◆

 ここは≪和国≫の中にある魔導学園。これからこの魔導学園のいろいろな事を説明しよう。

 ここ魔導学園は大型ドーム四つ分と同じぐらい広い敷地の中心に校舎が建てられている。校舎の周りにはグラウンドが第一~第三グラウンドまで存在し、生徒たちはここで魔導実習や実技テストを受ける。


 魔導実習とは言ってみれば体育の様な物。授業時間中は相当危険な事をしない限り何をしても大丈夫である。

対して実技テストと言うのは毎月の始め……つまり一日に全学年一斉に魔導実習で培った実力を試す場である。そのため対戦相手は必ずしも同学年とは限らず、後輩先輩と当たることもちょくちょくある。ちなみに点数の付け方は勝ち負けではないので、負けた方でも点数が上位な事もある。


 魔導学園に入学した者と教職員は全員寮生活を強いられる。

 寮は校舎から歩いて五分もかかる場所に存在している。寮と言っても見た目は高級ホテルである。食堂も無料で使うことができ、誰一人不自由なことは無い。


 他にも学園の敷地内には公会堂・プール・道場など色々な施設が存在している。

 

 そんな説明をしていると校舎全体に響く様に鐘が鳴り響いた。

 



 ◆◇◆◇◆

 ここは魔導学園二年B組の教室。しかし教室の中には数人のクラスメートだけ。

 その中で窓側を陣取るようにそれぞれの机を合わせ、一つのテーブルにしている。その上に寮から持ってきた弁当や先ほどの休み時間に買った購買のパンなどを出し合っては食べていた。


 教室にいる生徒が少ない理由は三パターンある。

 一つは寮の食堂へと向かったため。二つ目は寮から弁当持参して外の敷地で食べている。三つ目は購買と言う戦地に向かったため。最後の“戦地”の理由はもう少し話が進めば分かる事なのでここでは無視する。


 「そーいや、柊羽の奴いねぇーけどどこに行った?」


 赤髪で前の方がツンツンヘアー。さらには世間一般ではイケメンに分類される程のカッコいい面構えの少年───鋪原しきばら 直登なおとは即席テーブルを眺め、いつも居る筈の柊羽がいないことに気付いた。


 「あぁ、如月君なら──────」


 お昼が始まる前に買ってきた焼きそばパンを口にくわえた直登の、向かい側で弁当に箸を向けていた少女は横の三人席の真ん中を見て、口を開いた。


 「前の休み時間の内に買い忘れたらしく、購買に走っていきましたよ」


 薄紫のロングヘアーに出るところは出ている美少女───夢河ゆめかわ 菜月なつき

 おっとりとした性格で男女、男子からは“守ってあげたい”と人気である。


 今さらだが即席テーブル(縦長)の席順を説明しよう。

 黒板を前に左側は窓際にピッタリとくっつけ、後ろでは直登が一人で座り、前の方に菜月が座っている。で、右側の方は三人席だが、その真ん中が開いている。


 「まぁ、あいつの事だから何とかなるだろ」


 「逆でしょ。あいつの事だから何ともなんないでしょ」


 右側席の真ん中から左隣に座っている茶髪ショートヘアーの少年───鞘魏さやぎ 剣呉けんごは他人事のように箸を動かしながら言うと、またまた真ん中から見て右隣に座っている朱色の髪を頭の上でまとめポニーテールにしている少女───天城あまぎ 美緒みおは箸の先を剣呉に向けた。


 この二人もやはり美男美女で異性から人気である。


 さらにこの四人は二学年でトップの実力を持つ集団で、実技テストの順位は一位から直登・剣呉・美緒・菜月となっている。

 

 だが四人と同じかそれ以上に人気で実力を持っている生徒が一学年と三学年にも何人かいる。


 今回はそのうちの二人を紹介しよう。

 三学年の藤原ふじわら りんと 一学年の藤原ふじわら 智香ちかである。

 苗字を見て分かる通り姉妹である。


 実は現在、直登たちの会話に出てきた柊羽とこの二人はとても接点があるのだがそれはまた今度のお話。


 「さて、あいつが何買ってくるか賭けるか? 剣呉」


 剣呉の方を見て、直登は挑発するようにニヤニヤするがいつもの事。なぜなら──────


 「いや、賭けにならないだろ……何せあいつは──────」


 「「「「頑張らないからな(ね)」」」」


 声は見事にハモり、四人は笑って柊羽が帰ってくるのを待つのだった。




 ◆◇◆◇◆

 そのころ噂の柊羽は──────


 「はっくしゅっ!!」


 購買の前でくしゃみをしていた。ならなぜ購買に行かないかと言うと正確には行けないのだ。なぜなら人と言う波が購買を埋め尽くしているのだ。


 先ほど戦地と言ったがその理由がこれである。

 

 購買は食堂とは違い、外の業者が直々に売りに来ているため文房具・菓子類・雑誌・食べ物などが売っている。


 その中で売られているパンは金を払ってでも食べたいと言う程、人気である。それも人気のパンが販売されるのは四限目が終わって五分後の12時15分ピッタシに販売を始める。当然、それを狙って生徒が集まっているのだ。

そのため現在購買は男女関係なく購買に押し込み乱闘状態。柊羽はその乱闘状態の購買に入る素振りも見せず、終わるまであくびをしながら、気長に待つのであった。


 そんな彼は近くにあった鏡を見る。

 そこに映っているのはうなじを隠す程伸びた黒髪に覇気が無い面構え。性格はよく言えば冷静沈着。悪く言えばやる気が無い。

 そしてあの四人と一緒にいるためよく思い違いされるが少年───如月きさらぎ 柊羽しゅうは至って普通の少年であり、美男では無い、と自負する自分の姿であった。


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