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魔導学園の頑張らない少年  作者: 暇な青年
第一章 頑張らない少年
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第一八魔導 誰得?

 いや、まぁ予想はしてたが……


 「いくらなんでも態度が変わり過ぎだろ」


 なんて教室の窓側でぼやく俺の横で直登と剣呉、それに菜月は苦笑していた。


 「仕方ないだろ。あの大房をあれだけ簡単に倒しちまうんだから」


 窓から落ちないように付いている手すりに上半身を乗っけて直登は言う。その横で背中を手すりに預けてこちらを見る剣呉は面白そうに口を開く。


 「それに魔力820程度の柊羽が精霊二体と契約している、なんてありえないことをしてるしな」


 「それについては言ったろ? 実は魔力20000です、って」


 ふぅ、とため息を一つついて俺は昨日のあの後の事を思い返す。

 昨日の試験終了後、全校生徒と言っていい程の生徒の波が俺に押しかけてくるし、それから逃げるように逃亡するも直登たちに捕まって学園全体に白状させられた。


 場所は始業式や卒業式に使うバカでかい体育館。そのステージの上で俺と生徒会長である凛姉が上り、質問攻め……と言う名の公開プレイをさせられた。

 誰得? とか最初思ったが体育館に入るとかなり大勢の生徒と全教職員がいた。


 で、結局バラしてしまった内容は以下の事

 ・俺の精神魔力は5000。(嘘のMax魔力)

 ・契約精霊は二体。炎と水だけ。(これも嘘だが)


 で、最後は今まで頑張らなかっただけです、と最後にして本当の事を説明した。本当の事を知っている凛姉と智香は怪訝そうな表情を檀上にいる俺に向けてくるだけで何も言ってこなかった。

 ここまでの説明でわかったと思うが直登達には部屋に戻ってから改めて本当の事を説明した。魔力20000のこと。契約精霊が5体の事も(五大の事は秘密だが)。最初は凛姉と智香みたいな反応だったが、このやろう、と直登が肘で突っついてくるだけでこの話も終わった。


 「それを知っているのは私たちと凛先輩に智香ちゃんだけ。他の生徒は知らないでしょ」


 菜月は俺の顔を覗く様にして見てくるのだが、ただでさえ人気で可愛い菜月にこのようなことをされて俺は顔を赤くしない自信が無い。そんなわけで顔が赤くなる前に教室に顔を向ける。教室の中ではいつも通りの光景が広がっているのだが時折、こちらをチラッと見てくるクラスメイトに若干嫌気が差す。


 別に今まで万年ビリだったから苛められてた、とかでは無いので何の問題は無いんだが昨日の今日で噂ができていた。


 『学年10位内に如月 柊羽が入る!?』


 と、いう噂だ……実際は噂と言うより学園新聞の号外なんだが。

 新聞部が面白そうな記事を見つけては学園の掲示板に張るのだ。基本週一なのだが昨日の試験結果+俺の実力がバレてしまい号外がでた、と言うわけだ。


 万年ビリが昨日の今日で学年10位内に入ってたら騒がれるか。


 「美緒は?」


 「美緒ちゃんなら飲み物買に行ってるよ」


 室内に顔を向けているから当然後ろから聞こえる。

 そーか、それだったら頼んでおくべきだったなぁ、と残念がっているとドアが開き、美緒が腕に抱えるようにして缶を持っていた。


 「おまたせ」


 美緒はキンキンに冷えた缶を俺の机の上に乗っけると取るよう促してきた。どーやら人数分のジュースを買ってきたようだ。あらかじめお金を払っていたようで直登と剣呉はお礼を言って机に置いてある缶を手に取る。菜月はお礼と一緒に軽く謝りを入れる。


 難儀だねぇ。

 多分この『謝り』は買いに行かせたことに対してだろう。


 「別にいいって菜月。あたしが買いに行くついでにみんなの分を買っただけなんだから。ちゃんとお金も貰ったしね」


 そう笑って残り二本になった缶の一本を手に取りプルタブを開ける。


 「って、ことは残りの一本は俺のだな。あざーっす。金は───」


 やはり俺だけお金を払って無かった。それは流石に人としてどうかと思うので後ろポケットに仕舞ってある財布を取り出そうと後ろに手を動かそうとした時、美緒がそれを止めた。


 「いいよ。今回はあたしのおごり」


 「………………え〝!?」


 いつも俺の昼飯を奪っていく美緒が俺に(ジュースだが)奢る……だと!? 明日は雨……いや、雪か嵐だな! 最悪、魔導の嵐が──────


 「柊羽……失礼なこと考えてるでしょ?」


 ジト目で見てくる美緒に苦笑いを返す。


 「そんなことねーって。でもなんでだ?」


 「んー……まぁ、昨日の試験頑張ってたし。それに、格好良かったから」


 偶になんだが美緒の最後の方何を言ってるか聞き取れないことがあるんだよな。声が小さくて。それも美緒だけじゃなくて菜月も偶に声が小さくなるんだよな。


 「頑張ってた、ってガキか俺は!? まー、お言葉に甘えて奢ってもらいますか」


 残り一本となった机の上に置いてある缶を手に取りカシュッとプルタブを開け、豪快に呑み込む。キンキンに冷えたジュースが喉を一瞬にして冷やし、潤してくれた。


 「ぷはっ!」


 缶から口を離してうっかり出てしまった俺の台詞に直登たちは笑うのであった。


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