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魔導学園の頑張らない少年  作者: 暇な青年
第一章 頑張らない少年
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第一七魔導 頑張りすぎた

 ぽかーん、と黙ったまま向けられる視線に俺は耐え切れず苦笑しながら結界の外に出ようとしたとき、背後から魔導を感じ咄嗟に振り替えるが遅かった。目の前にあるのは炎の玉───炎弾である。


 「なっ──────っ!!?」


 瞬時に両腕を前に出し、炎弾を貰う。直撃した時に出た煙を払いのけ俺は魔導を放った下種野郎を睨む。どうやら先ほどの蹴りだけでは気絶することは無かったらしい。おかげで後ろから狙われてしまった。


 「まっ、対魔導制服のおかげで何ともないがな」


 口では何ともない振りをしてみたが結構な威力であったため衝撃が体の芯を襲い、両手は軽い火傷を負った。


 「この……下種野郎が」


 聞こえないように小さい声で悪態をつく。


 「糞ガキ……ぶっ殺してやる!!」


 一つ。また一つ描いた魔方陣にそれぞれの手を入れ、引き抜く。そうやって再び下種野郎の手にはハルバード、それも二つを構え怒りの声を上げて突っ込んでくる。


 「くっ!?」


 試験は終わったのに下種野郎が襲ってくるのを見て教師が俺の前に慌てて躍り出るが、それをひと薙ぎして教師を進路上から排除する。


 「おらぁ!!」


 「この……」


 下種野郎はハルバードがギリギリ届く範囲から『斬り』『突き』『砕く』三つの攻撃を混ぜてくる。俺としても避けてばかりではなく攻撃したいのだが得物の差があるため攻撃が届かない。かといって魔方陣を描こうとするとハルバードが猛威を振るう。


 「ははっ!! さっきまでの勢いはどーした? 所詮は俺様の前では雑魚に等しいってか? きゃはははは」


 「ちょーしこいてんじゃねぇ……ぞ?」


 防戦一方のため俺は避ける動作のみ行う。その瞬間も結界の外から俺を助けよう、と教師や生徒たちが寄ってくる。その中に指だしグローブを付けた直登と雷電を握った剣呉の姿。

 逆サイドからは今にも魔導を放とうとする菜月、美緒。それと凛姉と智香の姿。


 いやいや、いくらお前らでも結界を壊せるわけないだろ。それ壊せたら極級魔導師レベルだぞ?


 この区切るように造られている結界は結界内にいる教師が認めた者のみ入退出ができる。しかし先ほどの攻撃によって運悪く教師が気絶してしまったため出ることはおろか入ることもできなくなった。つまり俺と下種野郎にとってはバトルロワイヤルってことだ。


 「オラオラ、ビビッて声が出せないのかぁ? あぁ!?」


 そろそろ反撃に出るかな。あいつらを心配させるのも悪いし……何より、もうめんどくさい。さっさと部屋に戻って寝たい!


 なんて先ほどの怒りとは別の感情が俺を動かす。


 「お遊びは終わりだ」


 左右から迫ってくるハルバードをバックステップで避ける。それは同時に距離をとる事につながる。それを分かっているようで下種野郎も慌てて接近してくるが、俺はそれに合わせてこちらから接近する。

 俺の方から接近してくるとは思って無かったらしく慌ててハルバードを振るおうとするが、


 「おそい」


 ハルバードが俺を捉える前に俺の拳が下種野郎の腹にめり込む。


 「ぐはっ!」


 苦しそうに一歩、二歩と後ろに後ずさる下種野郎の目の前で空中に魔方陣を描く。その魔方陣を見た下種野郎の表情は痛みから驚愕の色へと変わって、結界の外で何とかしようとしている生徒、教師の顔色も変わった。


 「て、てめぇ……その魔方陣の色…………」


 「なんだ、謹慎中も俺の噂は知ってたんだろ? だったら俺の契約精霊の属性ぐらい知ってると思ったが違ったか。そいつは悪かったな、いつも炎魔導こっちを使ってるんだよ、せんぱい」


 試験中は水魔導しか使わなかったから周りの連中も忘れていたらしいな。俺がいつも使う魔導はシュラ。つまり炎だって事に。

 さてさて、周りの驚きはどうゆう理由で受け取っていいのかね?


 俺の予想は下種野郎と同じで今日まだ一度も使って無い炎魔導を使う俺に驚いてるんだろうな。魔力820程度で契約精霊二体ってことになるし。 


 なんて周りの反応について考えている間に俺は赤く光り出す魔方陣に向かって叫ぶ。


 「我、契約図を描き、此処に招来す───紅!!」


 これでもかって程に赤く光る魔方陣から放たれた炎は下種野郎を呑みこみ、そのまま奥の結界に叩きつける。さらに俺の紅によって結界は黒く焦げはじめる。放っている俺が言うのもアレだが、


 「罪人に対しての火あぶりの刑だな」


 結界に圧し付けられ紅によって燃やされる、これを火あぶりの刑と言わずなんという物か。さすがに対魔導制服でもこれは危ない。ってことで紅を放つ魔方陣を人差し指で横に切る。切られた魔方陣は消え、紅も消える。同時にドサッと結界に圧し付けられていた下種野郎の体が地面に倒れる。


 今度こそ終わった、何て柄にもないことを思い、顔を俯けしばし無言で恥ずかしがる。んでもって、気持ちを入れ替えて前を……と言うか、顔を上げると再び俺は顔を俯ける。


 何でだ? って聞きたいだろ? 簡単だ。


 「頑張りすぎた」


 今の今まで結界のそばにいた生徒と教師たちが黙って俺を見ているから。当然と言えば当然か。万年ビリでやってきた俺が学年十位に入る実力の持ち主をあっさりと倒しちまったからな。


 今度こそ……今度こそこれからの学園生活に不安を覚える俺だった。


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