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「ん…ここ…は?」
目を覚まして起き上がると目の前に門があった。荊が伝い、門に絡み付いてどこかゴシックな雰囲気を漂わせる。
「起きたか、姫よ」
「颯真…!」
「まあそう構えるな。目の前を見ろ」
颯真はスッと指を指す。
すると門に絡み付いた荊が更に門を締め付けた。まるで何者も通さんとするように。
「…!…あの門がどうかしたの?」
「自棄に冷静だな、まあいい。あの門は世界再生の門だ。その門をお前の能力で開いてもらう。なに、簡単だ。ただ願えばいい」
「願う?」
「そうだ」
「……」
拳を握りしめ、雪刃は黙りこんだ。あの門を開いたら世界は再び生まれ変わる。けど、開いたら…きっと…
「どうした?さっさと願え」
「…私は、願わない。貴方をここで殺すわ」
足に仕込んであった小刀をすばやく取りだし喉元に突きつけた。
それに動じることなく颯真は拍手した。
「…?何が可笑しいの?」
「いや、君は素晴らしい姫だと思ってね。予め仕込んでおいた小刀を素早く取りだし、相手に隙を与えず喉元に突きつける。実に素晴らしいよ」
「…ゼロ距離ならいつでも相手を追い詰められるわよ」
「くく…参った参った。姫を怒らせると怖いね。さ、斬り捨てればいいよ。これで魔血鬼と魅血鬼の戦いは終わる。姫とは今日でさよならだ。」
「…ほんとにそれでいいの、貴方は」
「うん?雪刃に斬り捨てられて死ぬなら本望だよ。さよならするのは寂しいけどね」
「…そう。」
「君を…雪刃を好きになって幸せだったよ。ありがとう。また会えたら君を好きになるよ。」
「…!」
颯真は微笑むと雪刃の手を掴んで自分の胸部に小刀を刺した。
「雪刃、さよなら」
ちゅっと手にキスを落とすと颯真は倒れた。