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翌日の朝。起きると窓辺に悠兎が座っていた。使用人たちが雪刃が起きてこないって騒いでたぞ、なにしてたんだって話して笑っていた。
あたしは悠兎に話さなきゃと思ったけれどまだ…このままでいたいと言う思いがあったから言わなかった。
もし言ったとしても悠兎のことだからきっと真剣に答えてくれるだろう。けれどそれで関係が崩れるなら話さないほうがいい。そう思った。
「…雪刃が能力を解放するなら俺も一緒に戦う」
「…!?」
「俺は王子だからと、いつも戦うことを周りに止められてきた。それでも護る為に戦いたくて稽古を付けてもらった。けれど颯真たちに国は壊され、人など誰も居なくなった。そんなとき、お前に会ったんだ、雪刃。」
「あたし……」
「…初めて会ったとき、少しだけ俺に似てると思った。本能に従いつつも自分を持って自由に生きてる雪刃をただ抱きしめて守ってやりたい。国が決めた結婚でも雪刃とは一緒に居たいって…」
「悠兎……」
「雪刃を護れるなら俺は能力を解放して戦う。今度は国を守れるように」
悠兎は決意を固めていた。あたしよりも先に国のことも、立場も、護る人も、考えていた。あたしは……
「…悠兎、あたし決めたわ。颯真たちを倒す為に居場所を突き止める。悠兎も協力してくれる?」
「…ああ、もちろん」
「よかった…っ!!」
ドクン、と胸が鳴ると同時に倒れそうになったあたしを悠兎が咄嗟に抱き留める。
「無理するな。純血を入れたばかりとはいえ、お前の身体はまだ万全じゃない。能力だって今すぐは解放出来ないくらいなんだから…」
「うん…わかってる…」
あたしたち魅血鬼には能力を解放して使える条件がある。体力が万全であるというのがその一つだ。万全じゃない時に能力を解放すると自分自身さえ無くす原因になると一族の間では言われている。きっと能力を最大限発揮出来ないと言うのが原因でそんなことを言われ始めたのだろうけれど、実際あたしや悠兎は半信半疑に思っていて信じ切ってはいないのもまた事実だ。