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「そこまでよ、颯真」
「これはこれは姫君。忠犬くんも一緒か」
「お前の作ったその人型は動かさせねぇ。」
「それはどうかな。我々bloodylipを嘗めないで貰いたいね」
コツ、と足音が聞こえ振り返ると囲まれているのがわかった。
「じゃあね、吸血鬼の姫君と忠犬くん」
「待て!颯真!」
「…っあああああ…や…ける…」
「雪刃!…お前、何をした!」
「別に?あなたたちにはこの場所とともに死んでもらうだけ」
「!!なんだ…壁が…」
「じゃあねー♪」
気づけば辺りは崩れてきてあちこちが瓦礫の山になっていた。
とにかく出ないと。そう思って俺は雪刃を抱きかかえなんとか全部崩れる前に城を出た。
あれからどれくらい経っただろう。気づくと俺と雪刃は布団に寝かされていた。
使用人たちが入れ替わり立ち替わりで俺と雪刃の世話をしてくれていたらしい。
俺が起きたのに気づいた使用人が声をかけてきた。
「よかった気がついたんですね、悠兎さん」
「…いつのまに城に戻ってきたんだ」
「姫様とともに窓際で倒れていたところを運ばせていただきました。お二方とも顔色が思わしくなかったので、今まで交代制でお世話をさせていただきました」
「…そうか…」
ほっ、と安堵の表情を浮かべたあと隣に眠っている雪刃が自分以上に傷だらけなことに気づいた。
「雪刃は…」
「まだ目を覚ましませんが命に別状はないようです。ただ、血を相当持っていかれたようで安静にしているようにと」
「……わかった、ありがとう」
「いえ、お気になさらず何かありましたら申しつけ下さい」
「ああ」
使用人は失礼しますと言って部屋を出て行った。