27
しばらくして目が覚めた。病院のベッドみたいに皺一つない真っ白なシーツ、窓もない壁、真っ白な天井。起き上がって見えた景色はそんな光景だった。
「!…悠兎!!」
起き上がり悠兎に近付こうとしたら硬い硝子にぶつかった。
「っ…硝子…?」
「ゆ…きは…」
「悠兎!目、覚めたの?」
「ああ…雪刃…ごめん…な…守ってやれなくて…」
「ううん…もういいから…!!」
「!!…雪刃…逃げろ…」
「え?…!!」
頬を何かが掠った。手で触れて舐めると自分の血だった。
さっき掠ったのは切れ味のいい刃物と言ったところか。
「ざんねーん殺せると思ったのになー」
「…あなたは?」
「私は色春夏。夜空雪刃、颯真様の為に今すぐ消えて戴くわ」
少女は愛剣 虎龍を突きつけると構えた。
「奇遇ね、貴女も剣だなんて。あたしも剣使いなの」
にっと笑うと蒼剣を抜いた。
しかしこれから勝負と言う時に怖ず怖ずと少年が部屋に入ってきた。
「春姉~…誰と戦うの…?」
「秋冬!変なタイミングで入ってこないでよね!」
「戦いに混ぜて…?」
「あんたは足手まといだから来なくていいの!!」
「Σガーン!ひ…酷いよ春姉…」
「本当のことでしょお~?残念賞」
「うっ…春姉まで残念って言ったあ…」
「うっさい黙れ!勝負が始めらんないじゃない!あんたのせいよ!」
「うわああんまたオレのせいとか酷いよおお…」
「……」
目の前で繰り広げられるケンカに雪刃はただただポカンとしていた。
少年のほうは秋冬という名で、どうやら二人は姉弟らしい。
「あのー…」
「もうっ邪魔しないで!」
「はい…」
逆にこっちが遠慮してしまった。あまりにも壮絶なケンカだった為、あたしはこっそりと部屋を出て天井裏に回ると悠兎を引っ張り上げた。
「この隙に行くわよ、こっち」
雪刃が道案内をして悠兎は天井裏の戸をゆっくり閉めると後を追った。
「本当狭いな…ここは」
「ある意味隠し通路みたいな感じね」
そんな会話をしながら歩くこと約一時間。少しだけ開いた扉が見えた。
「あれは…?」
「しっ…雪刃、颯真の声がする」
扉から覗くと颯真が何やら話していた。
「総督殿、例の夜空雪刃の能力、翡翠悠兎の能力、手に入れました」
「ご苦労だった。聖奈はどうしている?」
「失敗したことが響いているようで部屋から出てきません」
「そうか。颯真、お前に引き続きリーダーを任せる。何かあったら連絡しろ」
「はっ…わかりました」
再び静寂が戻る中、颯真はゆっくりと口を開く。
「もうすぐ…お前たちが動き出せる瞬間がくる。」