02
足元に転がる残骸。
滴り落ちる赤い血たち。
それを舐めて満足そうにする、少女が一人。
「今日はいいものを見せてもらったわ。…でもまだまだ足りない」
ぺろ、と舌を舐めずり少女はその場を後にした。
「ただいま。」
「姫様!また出かけていたのですか!あれほど外出は禁止していると…!」
「あーはいはいわかってるって。あたしたち一族は夜しか出歩かないって決まりだもんね」
雪刃は使用人の制止を振り切り手をひらひらとさせながら部屋に戻って行った
この世界ではあたしが次期、王候補だ。本当は候補がたくさんいたけれど皆人間たちによって殺されてしまった。
現に今、この城にはあたしと使用人たちしかいない。
その日の夜。
空を見上げると月はいつにも増して紅くなっていた。
「…また力が増したかな」
ふう、と溜め息をついて手を眺める。
ふと、昔、父親が言っていたことが頭を過ぎる。
月がいつにも増して紅い時は魔力が増す日。
だから力を制御出来なくならないようにしなければならないと。
「…今日は力が増す日だね、雪刃」
「悠兎…!」
悠兎は、よ、っと窓を開けて部屋の中に入る
「久しぶり、雪刃。会いたかったよ…」
ぎゅ、と抱きしめられて少しだけ視界が暗くなった。
「…あたしもだよ、悠兎」
抱きしめ返すと悠兎の体温が伝わってきて熱が灯ったみたいに熱くなる。
悠兎とは元々魅血鬼の姫君として血を求めて飛び回っていた時に出会った。
でもその時点で悠兎は既に国で決められた婚約者で、姫であるあたしを知っていたらしい。
「…もっと早く会いたかったな、雪刃と」
そう言って首筋をなぞるように舐めた