12/39
12
ー魅血鬼 鬼城ー
「「……」」
雪刃は立ち上がり、外を見上げる
この世界は夜が明けない。空はずっと夜のままだ。魅血鬼の一族に"死"がないようにこの世界も終わりがない。…いや、あって、ないようなものかもしれない
中には死のうとした者もいたがそれさえ一族は許さなかったと聞く。
「婚姻は強制するのに"死"はいけないなんてね」
「…今となったらそれも所詮、形だけの掟だろ…俺らの一族はほとんど絶滅に近い。生き残りで力があるやつは俺と雪刃だけだ」
そう言って、ぐっ…と拳を握るとそのまま壁に叩きつけた
「…悠兎…」
確かに悠兎の言う通りだ。統べる姫とその王子と二人きりで全てをまとめ上げてこの世界を率いて行くのは難しい。
「雪刃、この世界は…」
終わるのか、と言いかけたところで真剣な目をしているのが見えて俺は言うのを止めた。