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第17章「別れと北への道」




森を抜け、ベルンの町での短い滞在を終えた一行は、再び街道へと戻ってきていた。

市場で耳にしたのは、黒い外套に身を包んだ白衛団の姿。白い制服に銀の刺繍、黒いベルトを締めた彼らが町を通過し、北の街道へ向かったという噂だった。

さらに彼らは町中で、「赤布を纏う犬を見なかったか」としつこく尋ね回っていたと。


シバの背筋に冷たいものが走る。

赤布の名が、すでに白衛団の耳へ届いている。


バルグは大きなリュックを背負い直し、のんびりとした口調で口を開いた。

「俺たちは東の村々へ商いに行くよー。キミたちは北なんだろ?」


翠が煙を吐きながら目を細める。

「……獣人を快く思わねぇ連中も増えてる。あの団の“純血主義”とやらも厄介だな」


バルグは苦笑しつつも頷いた。

「そうなんだよー。俺みたいな熊獣人や、フィオみたいな子は……あんまり好かれないからね。だから白衛団の近くには寄りたくないのさ」


フィオはシバの尻尾へ駆け寄り、ぎゅっと掴んで笑った。

「でもね! 次に会うときは、フィオも強くなる! シバのお手伝い、できるようになってるから!」

その瞳には、子供らしい無邪気さと、それを越えるような決意が宿っていた。


シバは言葉を探したが、結局はただ耳をぴくりと動かすだけだった。

それでもフィオは満足そうに笑い、シバの胸元に顔を埋めた。


「……約束する。また会おう」

シバは短く呟いた。その声音に、誰よりも強い確かさがあった。


バルグがその肩に手を置き、柔らかな声を重ねる。

「赤布の聖域って呼ばれる遺跡が北にあるらしい。キミたちが目指すなら、そこで何か分かるかもしれないよ」


アズラが目を光らせる。

「……古の碑文術とも関わりがあるはずだ。見逃せないな」


翠は鼻で笑いながらも真剣な声で言う。

「博打みてぇな話だが……今はそれが唯一の手掛かりだ」


綺羅は軽く肩を竦め、笑みを浮かべた。

「じゃあ決まりだね。赤布の聖域に向かう。それまでにまた会えるといいけど」


バルグとフィオは東の道へ、シバたちは北の街道へ。

別れの言葉を交わし、互いの背を見送る。


朝靄に包まれる街道の先、白衛団の黒い外套がちらつく噂は、これから待ち受ける困難の影を示していた。






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