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第16章「町のざわめき」




森を抜けた一行の前に、広がる町の外壁が姿を現した。

周囲を畑に囲み、街道を結ぶ要衝に築かれた中規模の町──ベルンの町。

周辺の村々から避難民が押し寄せ、門前は朝から活気と混乱が入り混じっていた。


「わぁ……!」

フィオが瞳を輝かせ、シバの尻尾をそっと掴んだ。好奇心の塊のように町を見回し、耳をぴくぴくと動かしては声を弾ませる。

バルグは巨大なリュックを背負い直し、のんびりとした声を漏らした。

「にぎやかだねぇ。ここなら商いもできるよー」


町は活気に溢れ、石畳を埋めるほど人の流れがある。市場の露店には果物や布、乾いた香草の束まで並び、威勢の良い呼び声が飛び交っていた。


アズラは市場で紙と墨を探し、綺羅は財布の軽さに眉をひそめながら情報を探していた。

一方でシバは警備兵に呼び止められ、赤布に目を留めた兵が小声で呟く。

「……まさか、あれが……」

シバは鋭く睨み返すだけで言葉は返さなかった。兵は気圧され、深追いすることなく人混みに紛れていく。


「気にすんな。見たやつが勝手に怖がってるだけだ」

翠がタバコを咥えたまま吐き捨てるように言う。

「……だが忘れるな。目立ちすぎりゃ、厄介事を呼び込む」

シバは首元の赤布に無意識に触れ、短く息を吐いた。


その後、バルグは商人らしく店を広げ、薬草や干し肉、旅に必要な小物を並べていた。

「ほらシバ、干し肉は新鮮だよー。獣人だし好きだろ?」

そう言って差し出すと、シバは少しだけ耳を動かして受け取り、口元を緩めた。

「……悪くない」

その仕草に、フィオが嬉しそうに笑って跳ね回る。


日が傾き始めた頃、宿に戻った一行は簡素な夕食を囲んだ。

町の酒場では「白い制服に黒外套の一群が通っていった」という噂が広がっている。

「白衛団か……やはり動いていたか」

アズラが目を細めると、翠が煙を吐きながら鼻で笑った。

「アイツらの動きが早ぇのは珍しくもねぇが……こっちに絡んでくんなきゃいいけどな」


静かな間が落ちる。

アズラは懐から小さな符を取り出した。そこには複雑な碑文術の線が重ねられている。

「影が残した“座標の媒体”。白衛団が一時的に封印を継続したが……いつまでも安泰じゃない」

符の表面がかすかに黒く脈動し、周囲の空気を冷やした。


「……結局、まだ終わってないんだね」

綺羅が小さく呟く。

シバは赤布を握り締め、仲間の顔を順に見回した。

「終わらせる。必ず」


宿の窓から差し込む夕暮れの光が、赤布の端をかすかに照らした。

それは再び訪れる戦いの予兆のように、静かに燃えていた。






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