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第13章「赤布の輝き」




咆哮に応えるように、赤布が燃え上がった。

ただの布であったはずのそれは、まるで炎のように揺らぎ、藍翠の羽織と共鳴するかのように光を放つ。


その光は広場を包み込み、およそ五十歩四方を照らした。

死兵たちは一斉に呻き、黒い糸がぷつぷつと切れて操りの力を失う。数体は糸に吊られたまま倒れ込み、土煙を上げた。


「な、なんだ……この光は……!」

リョウが槍を落としそうになり、震え声を上げる。

ハルじいは背の剣を強く握り直し、「……布じゃねぇ……魂そのものが燃えてやがる」と目を見開いた。


シバは息を荒げながらも、一歩も退かず立ち続けた。

赤布の輝きは半刻──わずか三十分ほどしか持たぬと直感していた。その間に決着をつけなければならない。

だが負担は既に身体を蝕み始め、鼻先から赤い雫が土に落ちた。


「シバ!」

翠が駆け寄り、布の光を直視できずに目を細めながらも、袖口でシバの鼻血を拭う。「無理すんな! 体が壊れる!」

シバは首を振り、低く唸った。「……まだ……立てる」


「なら――逃すな!」

綺羅が即座に前へ躍り出る。光に怯んだ死兵の隙を逃さず、ナイフを突き立てた。黒い糸が弾け、屍は崩れ落ちる。

「この布の守りがあるうちに、全部斬り捨てる!」


「……光は光で増幅できる」

アズラが筆を走らせると、白い符が宙に浮かび、赤布の輝きと共鳴する。炎のような光はさらに強まり、死兵たちは後退を余儀なくされた。


だが、影は立ち尽くしたまま苦痛に軋みつつも、裂け目のような顔を揺らがせていた。

「……この力……短い……持続は半刻……」

まるで分析するように、闇の声が地を這う。


「……ちっ、見抜かれたか」アズラが苦々しく呟く。


影の虚無から黒い糸が再び滲み出す。死兵を操るだけではない。地面を這う影は形を変え、蛇のように伸びて仲間たちの足元を絡め取ろうとする。


「時間はねぇぞ!」翠が叫ぶ。

「分かってる……!」シバは血の味を感じながら赤布を握りしめた。


東の空は、まだ白み始めてもいない。夜明けまで残り三刻。

赤布の光が持つ時間は、あと半刻。


シバの身体は既に限界を訴えていた。それでも──誓いがある限り、退くことはできなかった。






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