表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/50

45. 甲斐への工作

 岐阜にて設けられた**「聞政所」と「掲論板」**。

 その“開かれた言論と政策説明”の仕組みは、予想以上の勢いで広まりを見せていた。


 武士だけでなく、町人、百姓、職人までもが

 「まつりごとに“参加できる”」という空気に触れ、心を動かされていた。



◆ 武田領に忍ぶ“言葉の種”


 甲斐国・躑躅ヶ崎館。


 「……またか。岐阜の聞政所の話が、ここまで届いておる」

 「信長の手の者どもが、商人や山伏を使って“仕組み”を語り歩いておるようで……」


 信玄の家臣たちは苦い顔をした。


 民の間で囁かれていたのはこうだ。


 >「岐阜では、年貢の行方を“板”に書いて説明するんだと」

 >「聞政所ってのがあって、町人でも殿さまに意見を言えるらしい」

 >「わしらも声を上げられたらのう……」


 それは、単なる噂ではなかった。

 実際、信長は越前商人のルートを通じて、簡素な“聞政所の始め方”を小冊子にして配っていたのだ。



◆ 「理」が攻める


 躑躅ヶ崎館では、焦燥が高まっていた。


 「信玄公、これはもはや“軍”では防げませぬ。言葉が民の心を変えようとしておりまする」

 「……わかっておる」


 信玄もまた賢人である。

 信長が“言葉”をもって世を動かすことを、武器と見抜いていた。


 「ならば、我らも“書”で返すのみよ。僧に説かせ、学者に筆を取らせろ」


 武田家も、仏教と儒学による“精神の正当化”で対抗しようとする。



◆ 忍者の報告


 その頃、伊賀忍のひとりが岐阜に戻り、報告を上げた。


 「甲府では民の間に聞政所の話が広がっておりますが、直接の導入はまだ……」

 「だが、興味を持った百姓の若衆が“わしらにも書けるかのう”と書き板を立てたとか」


 信長は笑った。


 「“制度”より、“欲望”が先に伝わる。それでよい。

 民が望むなら、それはもはや我らの武器だ」



◆ 転生者の思考


 信長――いや、現代から転生した“彼”にとっては、情報の価値は痛感していた。


 「武器で征くより、思想で征くほうが長持ちする」

 「独裁の下に自由を演出することもできるが――

 本当に民が“声を出せる”という幻想を信じられれば、それだけで国家は強くなる」


 武田信玄は未だ強大だ。

 だが、岐阜の“言葉”は、じわじわと甲斐を蝕み始めていた。



◆ 次回予告:第四十五話「“声”を封じる剣――甲斐の戒厳」


 武田信玄は、ついに“言葉”による揺さぶりを警戒し、甲斐国内に対する言論封鎖令を発令する。

 だが、それは逆に民の間に“自由への憧れ”を増幅させていく。

 一方、信長は“言葉が奪われた地”への次なる一手――**「声を持たぬ者への声の代弁」**を準備する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ