16.信長包囲網、胎動す
岐阜の祭が終わった夜。
城の奥の間で、信長はひとり、地図の上に目を落としていた。
「次に動くのは、あのあたりか……」
指が示すのは、北――越前・朝倉家の領地。
そして東――甲斐の武田信玄。
さらに、都では足利義昭が、静かに苛立ちを募らせていた。
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◆ 越前・朝倉義景、焦燥
「織田信長が……岐阜に都を作るつもりだと?」
重臣の報告に、朝倉義景は怒声を上げた。
信長が諸国から人・銭・文を集めることは、将軍家の権威を奪う動きに見えた。
「足利様にご報告を。信長の動きを止めねば、将軍の名も地に堕ちましょう」
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◆ 京・室町第、暗躍のはじまり
京では、足利義昭の元に諸国の書状が集まっていた。
「尾張のうつけは、もはや暴君に近い。これを討つ大義名分が欲しい――と」
義昭は、苦々しく呟いた。
「信長が作る国では、我ら公家の居場所などあるまい。ならば先に、“消して”しまわねばな」
彼は、密かにある刺客を招く。
「おぬし、織田信長を討て。どのような手でも構わぬ」
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◆ 暗殺者、岐阜に潜入
夏の終わり、岐阜の城下にひとりの男が姿を見せた。
僧衣を纏い、物乞いのような風貌。
しかしその手には、毒針と細工短刀を隠し持つ。
彼の名は――不明。
ただ“足利の刃”とだけ呼ばれる、暗殺専門の傭兵だった。
「主命、承った。織田信長、今宵を命日と定め申す」
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◆ 信長、察知す
だがその夜。
暗殺者が天守の外階段に足をかけた瞬間、背後から気配が走った。
「遅かったな」
暗闇に浮かぶ声。
信長が、直々に待ち伏せていた。
「毒、刀、火薬――お前の持ち物はすべて想定済みだ。
俺の城に、見ず知らずの“風”が吹いたら、俺が気づかぬわけがない」
次の瞬間、闇から矢が飛ぶ。
警戒していた狙撃手が、刺客の肩を正確に射抜いた。
「……見事、ですな。これが、“うつけ”の力とは……」
そう言い残し、男は毒を嚥下して崩れ落ちた。
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◆ 信長、警戒を強める
城内が落ち着いたあと、信長は勝家に命じた。
「これから、岐阜の警護は三倍に増やす。
それと、尾張・美濃の間者網を一斉に再編しろ。敵は、動き出した」
「……敵とは?」
「将軍、武田、朝倉、石山本願寺、上杉……
それに、時を見て揺らぐ者たち。
“天下布武”とは、時代そのものに抗う行いだ。敵は多い。だが――」
信長は天守から城下を見下ろす。
「全て、迎え撃つ。
“革命”とは、そういうものだ」




