表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ハムエッグ

作者: 大石次郎

深酒した朝、起きると同棲していた彼女が部屋から出ていっていた。


ダイニングにハムエッグとサラダがラップ掛けて置いてあり、メモもあった。


別れよう、いつか歌にする


そう書いてあった。



彼女に出てゆかれても大学はある。


「いやでもムーちゃん私物少なかったんだな、って」


楽器も何もなかった。

俺は学食で同じゼミの山田相手にコーラを飲みながらグチるしかない。


「関係性の比重が違ったんじゃないか?」


「えーっ?」


配慮してた方だと思うんだが・・



バイトしているダイニングバーで開店準備をしていると、ムーちゃんの友達のアキさんから電話が入った。


「ムーはさっきの新幹線で秋田に帰ったから。住所は知ってる?」


代金に怯んだけど、タクシーから降りてT駅の新幹線券売機を目指す。人混み。


隣県に嫁いだ姉と不仲、売れない男女混成アマチュアバンドをやってて、親が末期癌だってわかって、連絡は取れなくて、秋田までの往復の交通費、明日からの大学、バイト、会った事も無い向こうの親族、病院まで俺は行くつもりなのか?


足が、止まった。苦笑する。


「比重、軽いの、俺か」


俺は人の波を横にすり抜けて壁側に寄って、暫く項垂れていた。

頭の中にあまり上手じゃないムーちゃんの歌が響いてた。



妻が長男の着替えを見てくれている内に、ワイシャツを袖捲りした俺はキッチンで朝食と弁当を作っていた。


ニュースを音で聞きながら自分と妻と長男の分のハムエッグを纏めて作りだす。


と、テレビから以前より落ち着いたムーちゃんの歌声が響いてギョッとした。


見れば秋田で注目の歌手としてムーちゃんが紹介され、ハムエッグという別れの歌を歌っていた。


「今は地方でもイイ人いるよね」


感心している妻に相槌を上手く打てなかったが、俺は涙をどうにか堪えた。キーボードと歌が凄く良くなってる。癖は強い。


歌の中で、バカみたいに眠る男にキスをして彼女は帰るべき所に帰っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ