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第1話 騎士の少年アルケ

ユステア王国。

アムレエ大陸の真ん中に位置しており、比較的裕福な国として知られている。

面積は広いとは言えないが、豊かな自然に恵まれており、それを活かした農業や商業が盛んだった。

また、周辺の大国に比べて国軍の人数は少ないが、優秀な兵士を育成し続けているため、長年侵攻されずに済んでいる。




そんなユステア王国で、訓練に励んでいる一人の少年がいた。

「はぁ、はあ……やっと休憩時間だ……」

少年は仰向けになりながら息を整えていた。

「お疲れアルケ。ほら、水だ」

「あ、ありがとう……ございます……」

一緒に訓練していた兵士が彼に水の入った容器を渡す。すると彼は起き上がり、一気に飲み干した。

少年の名はアルケ=アンドレオス。彼は齢16ながらも、一人前の騎士として王国軍に所属している。

アルケが息を整えた後、仲間の兵士たちが話しかけた。

「それにしても、やっぱりすごいなアルケは!」

「さすが元騎士団長の息子、ってとこか!」

口々にアルケを褒め称える兵士たち。

アルケの父親は、かつて王国軍のトップで活躍していた騎士団長だった。

しかし、アルケが10歳の時に病で亡くなってしまったのだ。

「いやいや!俺なんかまだまだですよ!親父には遠く及ばないし……」

アルケは謙遜して言った。

「何言ってんだ!」

「そうだよ!最年少で一人前になったじゃないか!俺なんか14で見習いになったけど、一人前になれたの10年後だぞ!」

兵士たちはアルケの言葉に反論する。

彼らの言う通り、アルケは一人前の騎士として王国軍に所属している。それも異例の若さでだ。実力も、次期団長候補として噂されるほどである。

「お前ならすぐ親父さんを追い越せるさ。実力はあるし、髪色と顔が親父さんそっくりだしな」

「それは関係ないのでは……」

アルケは呆れながらそう答えた。

彼の髪は金髪で、整った顔立ちをしている。目の色は母親の茶色だが、父親に似てないと言えば嘘になるのだ。

「みんな!訓練を再開するぞ!」

騎士団長の号令がかかり、兵士たちは訓練を再開した。

アルケも立ち上がり、再び剣を構えた。




(はぁ……疲れた……)

訓練を終えた後、アルケは王宮の廊下を歩いていた。すると、後ろから声をかけられる。

「あれ、アルケじゃん。ここにいたんだ」

振り返ると、そこには薄い紫色の髪で金の刺繍が入った黒いローブを着た女性が立っていた。見た目は20代前半に見える。

「ルイザか……」

アルケに声をかけたのは、宮廷魔術師のルイザだった。

年齢不明でミステリアスな雰囲気だが、彼女はおよそ900年ほど前に滅びたと言われる魔法使い一族の生き残りである。

先王の頃から仕える者によれば、彼女は50年間見た目が変わっていないらしい。魔法で不老だと皆噂している。

ルイザの予言は百発百中で、国の重要な局面を救ってきたのだ。ある年は作物の不作を予言し、またある年はなんと、王の暗殺も予言したという。その実績から、彼女を国中が頼りにしていた。また、ユステアだけでなく、ユステアと友好条約を結んでいる国までもがルイザを信頼しており、他の国へルイザが赴くことも時々あるのだ。

「さっき姫さまが探してたよ。話し相手になってほしいみたい」

「ええ……またか……」

アルケは嫌そうな顔をした。

彼はユステア王国の姫の幼なじみなので、よく話し相手になっているのだ。

「まあまあ、そう言わずに。幼なじみで年齢が近い君じゃないと、暇な時話せないんじゃない?」

「そうだよな……まあ、良いんだけど」

「それに〜姫さま、アルケのこと好きみたいだからちょうどいいね」

いたずらっぽく笑いながら、ルイザは言った。アルケは顔が赤くなってしまう。

「は、はあ!?何を言ってるんだ!そんなわけないだろ!!」

アルケは顔を真っ赤にして慌てふためいた。その様子を見てルイザはさらに楽しそうにわらう。

「照れちゃって!まあ、あとはよろしくね〜♪」

そう言い残すと、ルイザはどこかへ去っていった。

(くそ……変なからかい方しやがって……)

ルイザにからかわれたことに腹が立ちながらも、アルケは姫の部屋へと向かうことにした。




姫の部屋の前まで来ると、アルケはノックをした。

「姫さま、俺です。アルケです」

部屋の外から声をかけると、中から声がした。

「アルケ!入ってきていいよ!」

ドアを開けると、ドレスを着た少女が立っていた。

長く明るい金髪に、エメラルド色の瞳を持つ美しい少女だった。彼女こそがユステア王国の姫であるリンネだ。

「座って!お茶も用意してもらったし」

リンネは窓際にあるテーブルと椅子に案内した。テーブルの上にはお菓子や紅茶が置かれている。アルケが椅子に座ると、リンネも向かいの席に座った。

「姫さま、お話というのは……」

アルケが聞くと、リンネは不満げな表情をした。

「もー!二人のときは姫さまって呼ばないでって言ったでしょ?幼なじみなんだから!敬語も禁止!」

そう言うと、彼女は頬を膨らませた。

彼女のこういう仕草を見るたびに、アルケは幼い頃を思い出す。父親に連れられ、初めて王宮に訪れたときに彼はリンネと出会った。明るくて無邪気な彼女とはすぐに仲良くなった。そのときからリンネに振り回されていたが、不思議とアルケは嫌な気持ちはしなかった。

「はぁ……わかったよリンネ」

「よくできました♪」

リンネはニッコリと微笑んだ。

見た目は美しく成長したが、中身は昔のままだな……とアルケは思った。しかし、そんな彼女だからこそ親しみがあるのだ。

しばらく雑談をしていると、アルケの目にあるものが止まった。

「またこんなに読んでたのか?」

それは山積みになった本だった。

「うん!神話って面白いんだよね!」

リンネは目を輝かせながら、アルケに神話の話をし始める。

彼女は昔から神話に興味津々で、暇さえあれば王宮の図書室から本を借りて読みふけっているのだ。

「神話によるとね、戦争で天から堕ちた神様たちの転生者の『メテン』が今でも世界のどこかにいるんだって!すごいよね!」

リンネは興奮しながら言った。

彼女が言うには、1000年前に起きた天界と下界の戦争によって力を失った神たちは、地上で転生をしているという。神が転生した者たちは『メテン』と言うらしい。

が、アルケはその話を聞いて浮かない顔をしていた。

「俺は信じないよ。神の転生者とか、天から神が堕ちたとか……実際にありえるわけないだろ」

アルケはあまり神話を信じていなかった。(今の世界の人々もほとんど信じていない)彼にとってはおとぎ話にしか思えなかったからだ。

「そんな偉大な神様が天からいなくなってたら、今頃世界はめちゃくちゃになってるよ。みんな生活ができなくなってるさ」

リンネはため息をついた。

「もー……アルケの石頭!なんで信じてくれないかなぁ……」

そい言いながらも、彼女もそこまで本気で信じているわけではないようだ。

(神の転生者……いるわけないよな)

アルケは自分の中で結論を出し、紅茶を一口飲んだ。

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