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死人たちのアガルタ  作者: ねくろん@なろう
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造兵工廠(3)

 襲ってきた軍用アンデッドを撃退した後、僕らは探索を再開した。

 背中の探知機がチキチキッと鳴る音に耳を澄ませ、ガラクタを拾っていく。

 

「これ、なんです?トマトスープ工場にしてはちょっと物騒ですね」


 工場にあったその作業機械は、これまで見たことが無いものだった。

 コンクリートの床の穴に、丸鋸のお化けみたいなのが無数に連なっていて、まるで中世の拷問器具か何かにしか見えない。


「これは造兵工廠の、人工蛋白質を生成する精製施設の一部ね」


 僕の言葉に答えたのは、ステラさんだ。

 彼女は部屋の一角に立ち並んだ、人の背丈より高い貯蔵タンクを指さした。


「ここで破砕したものを、あっちのタンクにため込んで、プラントで素体に成型するんでしょうね。ここでつくられたものは、別の棟に送られてるはずよ」


「見た感じ、ここは素材をバラバラにするのが目的って感じですか?」


「そうね。何を砕いていたかは、知らない方が良さそうね」


 急かすように鳴りわめく探知機は、工場の倉庫から管理棟、その一角のオフィスに僕を誘った。そこは工場の中でも、異質な雰囲気を放っていた。


 工場の中にありふれた、パイプやタンクもおろか、油汚れのひとつも無かった。

 ただただ、未来的な印象を与える、つるっとした表面の事務用品が並んでいた。


 僕は探知機の音を頼りにして、携帯ゲーム機みたいな、娯楽用途の電子機器、机に入っている、薬物や煙草といった、嗜好品の類を拾う。


 ふと引き出しの中を改め、手に取った書類。ヒトの写真が張り付けられたそれ。

 その書類には目もくれず、クリップボードを手に取って、金属部分のバネを外す。


 詰め込んだ戦利品で、衛兵隊から任された僕のバッグは、もういっぱいだ。


「これでもう6つ目です」

「大豊作ね」


 衛兵隊の人たちに、ガラクタでいっぱいになったバッグを渡すと、工場にあった、車輪付きのゴミ箱に重ねられていく。


 ゴミ箱と言っても、街や家にあるようなものじゃない。工場で出た産業廃棄物をいれる為の物で、自動車も入ってしまいそうな、かなり大きな奴だ。


 箱がカバンでいっぱいになると、パワーアーマーを着た衛兵さんが、よっこいせとばかりに押していく。


 野盗が使っているようなボロはともかく、ちゃんと整備と調整がされたものは、中々のパワーがあるので、こういった力作業もお手の物だ。

 あっという間に「缶詰」の中が、ガラクタで満ち満ちていく。


『ステラ、ちょっと来てくれ、クズ拾いもだ。見せたいものがある』

「了解、フユくんもこっちへ」


 今回の作戦のリーダーに呼ばれた場所。

 上空から見たときに、まるで怪物のようだと感じた、その建物だった。


 工場の各所から伸びる、大小様々のパイプが集合し、近くで見るとよりタコ足感が増して見える。地上で見ると凄い圧迫感で、まるで要塞かなにかみたいだ。


 分厚い鉄筋コンクリートのブロックと、錆の浮いた鉄骨と鋼板で形作られていて、ただの一つも窓が無く、いっさい中がどうなっているのか伺えない。

 みるかぎりでは、換気用の穴すら見当たらない。

 周りのすべてを拒絶しながら存在する。そんな印象の建物だった。


 リーダーと数人の衛兵は、その建物の目の前にいた。その傍らには、大鉈とリボルバー式の大砲を持った、重武装の軍用アンデッドが、解体され横たわっていた。


 こんな護衛がついているという事は、それなりに重要な建物なのだろう。しかし、その入り口は完全に封鎖されている。


「見せたいのって、この防爆(ブラスト)ドア?政府の核シェルターで見たことある奴だけど……何を守っているのかしら?」


「窓もなんもないから、まったくわからん。で、クズ拾い。探知機の反応は?」


 僕は背中の探知機をマークされた物資を捜索するモードから、自分の周囲を分析するモードに切り替える。がっちり閉鎖されていて、光も放射線も届かないはずなのに、扉の先から、わずかに反応が返ってくる。


 端末に送られたデータ。画面に表示されたそれから、元素を読み上げていく。


「チタンやアルミニウム、あとは何かの生物が……中で動いてますね。」


「つまりこの中が、造兵工廠の中枢で間違いないな?」


「護衛のレベルから見ても、回れ右以外の選択肢が無いわね。周囲のガラクタで十分に、缶詰を動かした元は取れてるでしょ?このままにしておきましょう」


「だよな?すまんかった。さぁ仕事は山ほどある、片づけに行こう!」


★★★


 あの時の作戦は、それで終わった。

 そこからは何という事はない。

 戦利品のガラクタを満載した缶詰で、何事も無くイルマに帰っただけだ。


 そしてその後の僕は、いつものようにタスクを受ける毎日に戻る。


 一つ変わったのは、この依頼を機に、僕はライフルを使うようになった。

 そのおかげで払いのいい、荒っぽい仕事もできるようになった。これ以来、ドリンクに対して串焼き一本追加とかの、ささやかな豪遊もできるようになったのだ。


 クズ拾いとしての僕の、ちょっとしたターニングポイント。

 だから他の依頼と比べても、記憶が鮮明だ。


 ――そうだ、あそこにもう一度行かなければならない……。


 当時、アンデッドを作ることで、何が行われていたのか?

 きっとあの防爆ドアの奥、造兵工廠の中枢には、その秘密が隠されている。

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