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死人たちのアガルタ  作者: ねくろん@なろう
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第13話 トコロザワヘ

2022/11/02 ルビ修正

 アップグレードされた装備を受け取った僕らは、隊商が護衛タスクを出していないか探しに、イルマの衛兵隊の窓口へ行った。


「フユさん、なんでカクタさんを通さずにやるんですか~?」


 疑問に首をかしげるウララさんの動きにちょっと遅れて銀髪が揺れる。まるで、髪でもはてなマークを作ってるようでちょっと面白い。


「そういえば、まだウララには説明してなかったね」


 クズ拾いがタスク(依頼)を探すルートは2つある。


 まずはラグ.アンド.ボーンズや、ゴプニクのような酒場のバーテンダーから仲介を受けるルート。これは結構アングラな方面のタスクになる。

 

 例えば密輸業者が使う秘密のルート、そこをうろついているなれ果てを始末しろとか、ちょっとわけありの()()()()()()とお話をするとか、そういった具合のものだ。


 このルートから受けるタスクは、実入りはいいけど相応に危険だという事をウララに説明する。


「で、もう一つのルートが街の衛兵隊から受けるタスクになるんだけど、こっちは護衛とか宅配とか、内容がシンプルで、なおかつ安全、って覚えておくといいかな」


「そうなんですか~わざわざ分ける理由ってあるんですかぁ?」


「衛兵隊のほうでやり取りされているタスクは、腕前の信頼より、人格面での信頼の方が重視される。そういった具合だね」


「なるほどですね、宅配しないでポッケに入れちゃうような、悪いクズ拾いさんは、衛兵隊の人に「めっ」ってされちゃうわけですね~」


「衛兵隊だから……『めっ』で済めばいいけどね……」


 僕はステラさんを想像した。あの人に「めっ」てされるのはご褒美だけど、

 どう考えてもパワーアーマーを着て「めっ」ってされるほうだよなー。


 衛兵隊の仲介で、僕らはトコロザワ方面へ向かう隊商の護衛タスクを受けた。


 隊商のメンバーは職人の「ゴトウ」、店を持たない旅商人の「ササキ」だ。


 2人とも人間型のアンデッドで、特に後付けのパーツで強化している様子はない。フラットな人間型。まあそこは僕も同じか。


 問題は武装だ。彼らは水道管で作った簡素な銃しか持っていない。

 身体能力は人間並みで、消音効果も糞も無いハンドメイドの銃だけ、となると戦闘ではなれ果てを呼び寄せるだけだ。もういっそ弾を抜いておいてほしいくらいだ。


 いや、本当はもうちょっといい装備をした隊商もいたのだけど、僕らの装備を見て断られてしまった。


 僕たちの装備は、ある点についてのことが、すっぽり抜け落ちていたのだ。

 ――そう、見た目だ。


 ハインリヒさんの狂気じみた努力の結果で、性能はめちゃくちゃ高いにもかかわらず、僕らの装備の見た目が、200年以上前の骨董品なのだ。


 そりゃ依頼人も嫌がるわ。

 本当は以前に比べても、僕らの装備はかなり向上しているんだけどね。


 見た目だけでは、僕のライフルがレーザー銃なんてわかりっこないし、猟銃にしか見えないウララのドリリングが、そこら辺のセミオートショットガンより高性能だなんて、誰が思うだろう。


 見た目と性能が乖離かいりしているというのは、クズ拾い同士の戦闘では初見殺しに使えるという事だから、そんな悪い事でもないのだけれど……。


 依頼人に対してのアピールが不足する、そこでは頭が回っていなかった。

 これに関しては後でハインリヒさんにも言っておかないといけないだろう。


 多分、シュヴァルツの商品が一般受けしない理由、性能以外にありますよって。


 ……あっ、太い客って暗殺者とかそういうんじゃないよね?……まさかね?


 さて、依頼人の対象の人たちに話を戻そう。


「ゴトウです。トコロザワでは職人をやってます、立ち寄ったら店に寄ってください。機械で動くものなら、大抵のものは削りだしてパーツをつくれますよ。」


 ゴトウさんはトコロザワで機械のパーツを作る鍛冶をしていて、イルマには部品の納品をするために来たらしい。帰りは細かいネジやバネなんかの細かいパーツを工房に持ち帰るそうだ。


「まあ、よろしくお願いします」


 あまり言葉の多くない寡黙なササキさんは、ゴトウさんと一緒に所沢からやってきた行商人で、線路の上を走るレールカーをもっている。これを使ってイルマまでやってきたらしい。


 レールカーはエンジンの無い手押し式だ。中央に車輪を漕ぐためのレバーがあり、レバーの左右に荷物を押すスペース、前後に座席というレイアウトだ。


 少し全長が長いタイプでよかった、もうちょっと小さかったら、ウララの乗るところがどこにも無い所だった。


 僕たちは彼らと打ち合わせをすませると、次の日の朝早くにイルマを出た。


 朝靄の湿っぽい匂いを嗅ぎながら、まだ野盗たちやなれ果てが眠りこけていればいいのにな、と淡い期待を抱いて、交代でレバーを漕ぎながらトコロザワにむかう。


 錆びたレバーに力を込めるたび、足の下ではキィキィと気に障る音を立つ。このまま何事も無ければ結構なことだが、8時間の移動のあいだ、何事も起きないという事はまずない。


 ウララは消音器が追加された『ドリリング』を軽く抱くように構えて前方を警戒している。「つぎはちゃんと使えるといいですね~」なんて言っていたが、冗談ではない。


 仕事なんてサボれればそれに越したことはない、だがこういう時に限って厄介ごとというものはやって来る。


 イルマを出て2時間たった頃だ。


 経年劣化でパネルが落ち、つくりかけのジグソーパズルと化した看板の林を通り、屋根が落ちて、壁だけになった家々が立ち並ぶ住宅街を抜けた先。

 コンクリート製の巨大な陵墓と化した、見通しの悪いビル街に差し掛かった時だ。


 レールカーの先を警戒するウララが「止まれ」のサインを出し、前方を指示する。

 僕はレールカーのレバーの操作を止めさせ、線路前方を見た。


 300M先の線路上に、改造された列車があった。


 その屋根には銃座と、ギザギザの牙のような鉄板が並べられたバリケードがある。

 ……まるでサメの下顎だ。


 バリケードで守られたその内側には、こちらを見据える武装した連中がいる。


 ――クソ、野盗だ。

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