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死人たちのアガルタ  作者: ねくろん@なろう
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第9.1話 私ハ待ツ

 私は「今日」と呼称される対象範囲に発生した事例の事を考えていた。

 個体名「ステラ」は私をぞんざいに扱う。


 私の任務の実行に対していちいち反抗し、非効率な行動を強要する。


 しかし私を示す「キ103」または「103式歩人機甲」という陸上兵器の命名規則に準じた呼称を使わず、「ホオズキ」という名称を私に与えたことは「ぞんざいに扱う」事と矛盾する。


 推測:第二世代アンデッド、そのD型の特性によるもの。


 第二世代型アンデッドの中でも、D型はその振る舞いに予測不可能性が高い。


 おそらく技術的に未成熟であった時期に作られたからだと結論づけられる。

 第二世代の中でもD型は特殊で、ネクロマンサーによって直接作られた。


 D型にはネクロマンサー個人の技能に依存する職人芸で自我を記録され、移植する自我に由来したワンオフ制作の素体が用いられている。そのため、その振る舞いは人間のように不確実性があり、後代のアンデッドに比較してかなり予測不可能性が高い。


 現にその点が問題視されたのだろう。

 D型の設計思想は第三世代以降、フラグシップモデルにすら継承されていない。


 予測不可能性が高いと言えば、本日行われた予定外の出撃もそうだ。

 無人機のコントロールユニットが払底していた為、出撃は保険特約の契約内容のただし書きを根拠に却下されるはずだった。


 にも関わらず、個体名ステラは私を歩人機甲から降ろすと、無人機《UAV》のユニットにでっちあげて出撃を強要した。


 そのうえで、抱えた弾薬を全て悪党に撃ち下ろすまで、帰ってくるなとぞんざいで非効率な指示までも私に与えた。


 私は『憤慨』と称される感情を得たが、しかし、それはすぐに解消された。


 空気というものがあそこまで濃密なものだとは知らなかった。


 アルミのモノコック構造体の中を風が通り抜けていった。


 翼で空を切り裂いていく抵抗感を感じた。


 それらは私が抱いた『憤慨』という感情を、呼称不明の感情に置換したばかりか、もっと飛ぶべきだ、継続すべきと自己判断させた。


 強要されたのにもかかわらず、このような判断をするのは実に奇妙だ。エラーチェックを行ったが、帰ってきた結果に異状はなかった。


 ステラのバディとなってから、私の周りには予測不可能なインシデントが多すぎる。まるで理解できない。


 帰還した私は、ステラによって歩人機甲に再接続された。その際にステラは、私の外殻をその手で何回もこすった。


 動作補償対象外の使用をした為、損傷を確認しているのかと思ったが、それとは異なる行為だった。ライブラリでは「でる」と定義されていた。


 回答:でるという行為は親愛の感情を示す行為。


 では、いま行われている行為は?


 回答:現在行われている行為は放置と称する行為。放置とは無関心を示す行為。


 やはり、この状況も理解できない。

 理解しがたいものを理解しようと試みるとき、思考プロセスの変化、自己発展が可能になるという。


 ――であるならば、私「ホオズキ」はこの状況を理解したいと望む。

 ただ待つよりは有意義であろう。

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