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死人たちのアガルタ  作者: ねくろん@なろう
111/120

第94話 東京駅防衛線

★★★


『機銃手は交叉させろ!十字砲火で正面にプレッシャーをかけろ!』

『新手だ!7時!!』『手が離せん!弾持ってこい!』


 戦闘が始まってからというもの、無線が賑やかな事この上ない。

 ああ、なんでこれを聞くと口の端が上がるのだろう。


 懐かしい、楽しいと思ってしまう。

 その度ごとに、おびただしい数の命が失われるのに。


 ネリーや私、第2世代は戦争の子だ。


 第1世代アンデッドは、ドローンや歩行戦車を動かしているAIの延長でしかない。虫のような衝動的な低自我のアンデッドだ。だが私たち第2世代は違う。


 どっかの誰かさんが元になっているのは確かだだ、独自に学習する自我を持ち、独自に判断して、効率的に殺すためにデザインされた。


 この心の高揚も、誰かによって「そのようにあれ」と望ましく思われ、設計として神経回路か何かに織り込まれたのだろうか。


 それとも単純に、私のもとになった私が邪悪なのか。

 まあそんなことは、この銃弾飛び交う空間に比べたらどうでもいいことだ。


「「Ahhhhhh!」」


 制圧のために撃ち込まれる機銃を恐れもせず、こちらに向かって愚鈍に吶喊(とっかん)してくる者たち。『アガルタ兵』だ。


 といっても本当にこいつらがアガルタによって何かされたのか?

 その経緯は逃亡兵の証言以外、細かいことはまったくもって不明だ。すべてはあいまいな証言と状況証拠でしか無い。


 私たちはひどく不確かな状況のまま戦い続けている。

 しかし向こうはこちらに対して明確な殺意をもっているのは確かだ。

 なら、戦う十分な理由になる。


 軍装品と一体化しかけている目の前の『アガルタ兵』に対して背中の軍刀の一撃を加える。数体をまとめて袈裟懸(けさが)けに切り落とすが、奴らは残った方の手で銃を掴みなおして、なおも戦い続けようとしている。


 なんともしつこい奴らだ。

 返す刀で腰と腕を十文字に切り裂きながら、私は連中の側を駆け抜けた。


 ボトボトと血肉が降りしきる中、前方向へ身を沈めて、地面に手をついて背骨全体に力を溜め、それを一気に解放して跳躍して敵の集団を抜ける。


「火炎瓶!」

「ほいよっ!」


 ネリーが時を置かず、切り身となったアガルタ兵のグループに火炎瓶を投擲した。やはり戦い方を知っているものがバディにつくと心強い。


 シリンジが不足している今、これにトドメをさす方法は別に用意しなくてはならない。今回は手っ取り早く焼くことにした。


 しかしそのためには。まず仕留めて動きを止めないといけない。

 私たちはそのまず仕留めるという部分を担当する。


 ライフルマンがこいつらの相手をすると、必然的に遠くに死体が残る。そうなると火炎瓶で燃やしつくす前に、その場で再組成して立ち上がってしまうのだ。


 そうならないよう、私やネリーといった、接近戦にも対応できるベテランが前に出て、なるだけ近くでまとめて処分する。火炎瓶も数が限られているからだ。


 ネリーが突入する私の援護についてくれたのは幸運だった。もし彼女がトコロザワを抜け出してこなかったら、もっと苦労していただろう。


「しかし、まだ増援が途切れる様子が一向に無いわね」


「アトラスに乗ってたのを片っ端からおろして、こっちにかき集めたんかな?」


「でしょうね。現地徴用もいくらかしたみたいだけど」


 そう。日防軍以外にも、野盗、クズ拾い、そして商人のような者たちがアガルタ兵の中には混じっている。こいつらを好き放題にさせるべきでは無かった。


 これは完全に「様子を見る」と判断した私のミスだ。

 速めに動いていれば、彼らは死ぬ必要が無かったかもしれない。

 

「まだまだ来るで!!」


 やつらはスクラムを組んで、波浪のようにこちらに押し寄せてくる。ホオズキが放つグレネードが中央で炸裂しても、両翼の機銃が薙ぎ倒しても止まらない。


 アガルタはこの駅に居座られるのが、よっぽど気にくわないらしい。


 押し寄せてくる連中を続けて相手にするが、背負った軍刀の片方が負担に耐え切れず、ついに破断した。


 ……これはよくないわね。


『左翼、残弾なし!!撃ち尽くした!』『右翼もだ!もうカンバンだ!』


『報告:すべての弾薬を打ち切りました。近接戦闘に強制移行します』


 ホオズキも弾切れ、か……。

 これはいよいよね。


「総員着剣、白兵に備えなさい!!」


「あっちゃー、間に合わんかったかー?」


「……っ! そうでもないみたいね」


 スクラムの側面に大口径の重機関銃の掃射がくわえられ、文字通り引きちぎられていく。銃声の先を見ると、装甲車に箱乗りになった、気まぐれな装備の連中がいた。


 あれは野盗、「OZ」の連中だ。

 ここまでしろとは言ってないのに、どうしてここに来た?


 どうやら「OZ」のリーダーは、こんなこともあろうかと、先に足の速い車だけの部隊を送って来てくれたようだ。火力はそうでもないが、正直助かる。


「遅れてすまねえな!!なんせ道が悪くてな!!」


 爬虫類の顔をしたアンデッドが長巻をこちらに振っている。

 私はそれを見て、なんだかものすごい嬉しくなって手を振り返した。


 そう言えば「彼」が言っていたな、第1世代と第2世代の大きな差は、第2世代が「交渉」できる存在だということを。


 ――それはどういう事か?


 彼にそう問いかけたら、未来を信じることができるかどうかだと言っていた。


 なるほど、それはきっと「こういうこと」だったのだろう。

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