第九話 決戦
振り切った!
そう思って私は安堵した。
しかし、それは間違いだった。
私が機兵が攻撃をしてこなかったことに安堵し、眼を逸らした瞬間.....
その巨体が、綺麗さっぱり消え去っていたのだ。
どこへ?
そう思って、隊長に声を掛けるために前を向き.......絶望を目にした。
自分の家、王城の前に巨体が音を立てて着地する。
勿論、衝撃は消滅したわけではない。
音の爆発が装甲車を巻き上げ、私たちを吹っ飛ばした。
「くぅ、あっ!?」
私は車から投げ出され、地面に転がる。
そして、慌てて上を向いて........無機質な瞳と目が合う。
無機質な瞳.......機兵は私にレンズの照準を合わせ.........
思い切り、拳を私に放った。
私はつい、目をギュッと瞑ってしまった。
ああ、死ぬんだ.........
死ぬ........
死.........
「おらぁっ!」
え?
聞こえるはずの無い、少年の声がその場に響き渡った。
私がゆっくりと目を開けると.........
「え?」
眼前.........本当に眼前。
そこで止まった巨大な拳。
そして、それを止めているのは................
「あ、あなたは...........」
「よう、王女サマ」
私が直々に案内した、孤児院の子供たち。
その中で、異彩を放っていた少年..........そう、
「ユーキさん」
「ユウキだ」
ユウキ、その少年は私ににやりと子供らしからぬ笑みを向けた。
ゴウゥゥゥゥン!
直後、腕が動き出し、その側面についていた回転砲塔が動き出す。
「あ、危ない!」
だがもう遅い。
あれを受ければ、仮にあの拳を受け止めたのがこの少年だったとしても、
一瞬で蜂の巣だろう。
銃弾に勝てる人間など、そうそう居ないのだから。
ダダダダダダダダ!!
雨霰と銃弾の雨が降り注ぎ、私は死を覚悟した。
だが..........
「やれやれ」
そんな声が聞こえたと共に、私は強烈な浮遊感を体感する。
目を開ければ...........
「自分が動くのは、最後の最後って決めてるんだけどな」
「は、え、え、えぇぇぇ!」
なんと、少年が私を抱き、銃弾の雨を潜り抜けていく。
その技量には感服するが、それよりも........
「何故お姫様抱っこなのですかぁ~!」
「これが一番楽だから」
そうではなくて!
心の中で叫ぶ私だったが、直ぐにそんな空気は吹き飛んだ。
巨大機兵が、先程の光線を再び放とうとしていたからだ。
「こ、今度こそ...........」
「そろそろ面倒臭いな....降ろすぞ?」
「は、はい..........」
私は地面に降ろされる。
何をするつもりなのか、まさか、私をかばって死ぬつもりなのか?
私を庇って死んだあの兵士たちのように?
だが、杞憂はすぐに晴れた。
「カムヒア!マイリトルアーミー!」
少年が何かを叫ぶと、一体の機兵が飛び出してくる。
私は一瞬身構えるが、違和感に気づく。
アイカメラの部分が黄色に発光している。
戦闘を示す赤ではなく、待機を示す黄だ。
つまり...........
「よっし、俺を乗せて大ジャンプしろっ!」
「・・・・・!!」
そして、機兵は少年を乗せて指令の通り大きく跳躍する。
巨大機兵は、砲口を少年へと向け............
そこから、神話の竜の吐息と見紛う極光を放った。
対する少年は...............
「いい加減に..........」
拳を振りかぶり......跳んだ。
そして、光線は少年に迫り............
「しろぉぉぉぉぉおおおおおおおおおッッ!」
少年を避けるように光線が曲がっていく。
結界術の類?
いえ、それにしては魔力が感じられない。
では一体...........?
私の疑問は誰にも知られることなく、時間は進む。
光線を受け切った少年は、巨大機兵の顔に降り立つと、
その拳をアイカメラに叩きつけた。
「全力全開!〈上書き〉ッ!!」
少年がそう叫ぶと、殴りつけた場所からじわじわと光が広がり..........
巨大機兵は、その両手をだらんとぶら下げ、完全に機能停止した。
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