第十五話 底知れぬ悪意
※今回は非常に残酷かつ残虐な表現があります。
苦手な方は次話に簡単なあらすじを載せておきますので飛ばしてください
市場の入口には行列ができていた。
まあ、船着き場のあの盛況を見ればなんとなく分かるけどな。
審査も忙しさゆえか適当で、ローレンスが警備のおっさんと適当に話をつけて、無事に通貨できた。
「ちょっと危なかったんじゃないか?」
「なーに、物事にはコイツが重要だろ?」
ローレンスは袖の下から輝くものをちらりと覗かせた。
こいつ..........”分かって”るんだな。
「だてに修羅場潜ってねえよ」
「そういえば英雄だったな」
「おう」
俺たちは大大縦穴周辺の市場を巡る。
市場にはたくさんの店が並んでおり、ショーケースには見慣れない物品が並んでいる。
「あれ、何だろうな?」
「あれは非活性魔核、微量の魔力汚染があるから禁制品なんだがな」
「じゃあ、あれは?」
「知らんが、どうせ何かの魔物の卵だろ」
どうも大縦穴内部では売れない危険物を売っているみたいだな。
危険物といっても、そこまで危険なものはないみたいだけどな。
「おぉ、マジか..........ルストコアまで売ってんだな」
「ルストコア?」
「通称”拡大する錆”、金属に触れるとその金属に接触してる金属に凄まじい勢いで侵食して腐食させちまうんだ、当然浮遊都市内で使われたらおしまいだな」
「強いな」
「ああ、だが開くと自分も死ぬんで、入念な準備が必要だがな」
前言撤回。
マジモンの危険物もしっかり売っていやがった。
「それ、AVALONにも効くのか?」
「ああ、効くぞ。金属なら何でも効くからな――――けどよ、艦長は錆びた箇所だけ素早く分離してそこを高速修復すればいい話だろ?」
「まあ、そうだけどな」
改修直後にやられると艦の状態のアップデートが済んでなくて前の状態に戻っちゃうんだがな。
「ふざけんじゃねえぞ!」
その時、大声が耳を突いた。
そちらを見ると、少女が床に転がっていた。
その腹を脚で踏みつけている男もいる。
少女の首には目立つ円環がつけられており、赤いランプが点灯している。
「あれが奴隷か?」
「ん? ああ、そうだ。っても、俺も見たことはほぼ無いけどな。あの首輪は奴隷化手術前の仮のものだから、仮奴隷を見るのは初めてかもしれん
「奴隷化手術か.......中々に黒いな」
「ああ、あの首輪は微弱な催眠魔術で意識を操作する程度なんだが、本改造すると制御装置次第で意思の有無から自由度まで他人に掌握されちまう」
「怖いな」
「そうかもな」
俺は一応、少女にIDを付けておく。
「オラッ、立てよバカが!」
「ご、ごめんなさい.......」
悪いな、ここで助けに入れるほど正義漢でもないんだ。
俺は少女の横を抜け、中央エレベーターへと歩き出す。
「(艦長らしくねぇな、ここで何をしても助けるだろ?)」
「(余計な拾いものはするべきじゃない、特に面倒を見る覚悟もない猫を拾うのは勘弁だ)」
ここで騒がなければ少女を含めた命をもっと救うことができる。
IDに登録しといたんだから、夜にまた発見して助ければいい。
それに、今の時点で奴隷を保護してどうする気だよ、あの偵察機は一人乗りなんだぞ。
「ここが最下層か」
遥か下まで降りること数分、やっとドアが開いた。
どうやら最下層は奴隷市場っぽいな。
エレベーターでしか逃げられないからこそだろうな。
俺たちが降りると、数人の奴隷を連れた人間がエレベーターで上がっていく。
IDは付与してあるので、遠くでカモフラージュ状態のままのAVALONがしっかり見張っててくれるはずだ。
「ゆっくり見て回るぞ」
「ああ」
俺とローレンスは地下区画を慎重に見て回る。
地下通路のようなものは無数に存在するが、外に通じているのは特にないんだな、絶対バレないという鉄壁の自信がある様だ。
「そこの兄ちゃん! 寄っていかねえか!?」
「どうする、艦長さんよ」
「行こう」
俺とローレンスは呼ばれた店に行く。
「ここはどんな奴隷がいるんだ?」
「おおっと、説明がまだだったなぁ、ここはミミ付き、長耳、鍛冶族と異種族奴隷が揃ってるぜぇ」
「そうなのか......まぁ、後で寄らせてもらうぞ」
「ああ、待ってるぜぇ」
店内の生体反応にIDを付与しておいた。
次の店に行こう。
「(これ、店主と店員だけID自動付与対象除外にした方が早いな)」
「そうかもな」
俺とローレンスは協力して奴隷市場を回り、IDを付与していく。
そして、道中…
「お願いです! 私を買ってください!」
「俺を買ってくれ!」
何度も何度も縋られたが、振り払わざるを得なかった。
こんな理不尽が、文明の影で蠢いていたとは。
俺の中に怒りが少しずつ積もっていく。
「お願いします! 今日買われないと殺されてしまうんです、俺を買ってください!」
「うわあああああああああん!」
奴隷達は皆身綺麗だったが、懇願する様子でどれだけ精神を痛めつけられたかがよく分かる。
きっと、尊厳を踏み躙られ、苦痛と恐怖によって抵抗力を完全に奪われたのだろう。
地面に頭を擦り付け懇願する様子には、自尊心というものは全く感じられない。
「………そろそろ全部か?」
「まだだ、まだ地下がある……」
俺は自分の端末に、チケットを表示させた。
入る為に必要なチケットであり、俺の能力で奪い取ったものだ。
「地下?」
「ここに居るのは全て、五体満足の奴隷だけだろう? それに、廃棄された奴隷はどこに?」
「まさか………」
「その通り」
最下層の更に下…そこはチケットを持つ人間しか入れない特別なマーケットエリアだ。
五体満足ではない、もしくは何らかの異常がある奴隷が押し込められており、既に息絶えた奴隷の骸も保存してあるようだ。
それらの奴隷に用があるか、死体を引き取り何かに使うか。
どっちにしろ虫唾の走る話だ。
数分後、俺たちはエレベーターで最下層へと降りた。
チケットさえあれば審査も連絡もなしで入れた。
ガバガバ過ぎるだろ…
「うっ……!」
「凄いな」
「お客さん、初めてかい? 死体売り場は滅菌消毒が為されてんだが、異常奴隷どもが悪臭の原因でな……まぁ見てってくれや」
胸糞が悪い事を言われ、俺たちは異常奴隷の区画へと入った。
「ガアアアアアアアッ!」
「うお!?」
いきなり見えたのは、口があちこちにある人間だった。
こちらに向けて敵意を向けている。
首輪があれば制御できるんだろうが…一体何があったんだろうか。
「して…殺して…!」
「はぁ…」
悪臭の原因が分かった。
ドロドロに溶けた少女が、ジェル状の腕を持ち上げて助けを求めている。
湯気の上がるその身体からは、凄まじい腐臭が漂っていた。
「助けて…痛い…うう…」
「…君は」
「おお! お目が高い! そいつはスライムと同化した希少な種族奴隷だぞ! 少々値段は張るが…」
「いや、興味ない」
これ以上いると耐えられなくなりそうだが、全員を助けるのが俺の我儘だ。
IDを振らないと…
その後も、トレント化した少年や欠損奴隷、瀕死の奴隷などを見せられ、鬱屈した気分のままIDを振り終えた。
奴らは異常奴隷を芸術のように扱っているのだ。
背中に虫が這うような思いを抱えつつ、俺はAVALONへと帰還するのだった。
今日の分はここで終わりです!
次の五話はいつになるか分かりませんが、次で章終了は致しません。
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