第六話 襲撃を抜けて
俺が外に出ると、外は中央塔へと入った時とは打って変わって騒がしくなっていた。
戦闘機や小型戦艦が人型兵器に向かって飛び、
俺の髪が風圧で揺れる。
「さて、行くか」
俺はそこらに留めてある魔導二輪に跨る。
『状態〈所有者ロック〉』
「〈上書き〉!」
エンジンをかけようとすると、当然ながら鍵がかかっているらしくエンジンがかからないが、上書きで無理矢理エンジンをかける。
俺はバイクの事はよくわからないが、魔導二輪の標準的な駆動音と共にエンジンが起動する。.....内燃機関なのかな。これ....
「行け!」
俺はハンドルを握る。
声帯反応でバイクが自動で加速する。
俺は街を走る。
「待って!........え?どうして魔導二輪に..........」
俺は今この瞬間に俺の愛馬と化した(持ち主上書き)バイクで走り出したのだった。
俺は街を走り抜ける。
チュン!
俺の真横に、何かが飛んできた。
俺がそちらを見ると、そこにはあの多脚型機兵がいた。
無機質な砲身が俺を狙う。
通常ならば、どんなに頑張っても逃げ切れないだろう......通常であれば。
「〈上書き〉」
俺の能力が行使され、多脚型機兵は脚を畳んで俺に恭順の意を示した。
……いや、ただの指令待機モードで、跪いたように見えたのは俺の錯覚だろうけどよ。
俺は多脚型機兵に指令を下す。
「他の機兵を見つけたら破壊しろ。出来なければ出来る限り民間人の盾になれ」
「・・・・・・」
機兵は何も言わず、さっと立ち上がってガシャガシャと歩き出した。
その後ろ姿が頼もしい。
機兵を見送っていた俺の背中に、何かが激しくぶつかる。
後ろを振り向くと、別の機兵が俺に銃口を向けていた。
悪いが、お前らの機関砲程度じゃ傷一つ付かないよ。
「上書き」
「・・・!」
機兵はその場に硬直し、俺の指令を待つ。
この能力で上書きできない権限などないが、油断はしない方がいいな。
「お前も.......そうだな、他の機兵を見つけて攻撃しろ。民間人が巻き添えになりそうなら攻撃をするな」
「・・・・・」
機兵は何の躊躇もなく後ろを向き、爆音の響く方へと走って行った。
俺はそれを横目に、再びエンジンを起動したが.......
「おいおい、お出迎えってわけか?」
俺の前方、斜め上、すぐ横の路地。
そこから機兵が出て来た。
恐らく仲間の信号を受け取ったのだろう。
「まあ........」
残念だが、俺はお前らに付き合ってやる気はない。
「上書き!」
それだけで全ての機兵はおすわりの姿勢を取る。
「あーあ、面倒臭いなあ.......お前ら、民間人、助ける。行け」
俺は指令を出し、機兵はさっきまでの無機質さはどこへやら、本物の犬のように慌てて走っていく。
その速度は、明らかにバイクより速い。
こりゃ、逃げても追いつかれるな。
待てよ......?
「待て」
俺の指令を受け、三体全てが立ち止まる。
「俺に一番近い奴、俺を乗せてあのデカい奴のところまで走れ」
「・・・・・・!」
俺に一番近い機兵が俺にゆっくり近づく。
他の機兵はそのまま踵を返し、全速力で散って行った。
子供の俺のために屈んだ機兵の背に乗り、
俺は爆音の響く中心部を指差す。
「行け」
「・・・!」
そして、機兵は走り出した。
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