第六話 噂
また五話上げます。
今年もありがとうございました。
第六エスカリアに着艦したAVALONは、現地での注目の的になっていた。
浮遊都市に着くと受信できるローカルネットワークでは、AVALONの詳細についてや、王宮の悪口を交えた視察団の詳細について考察大会が開かれていた。
「視察は俺1人で行く」
「まあ.......それが一番だろうな」
俺以外が行くと、銃弾一発で死ぬからな。
一応機兵は連れて行くけど。
それと――――――
「アレフ、ベート......出ろ」
『『了解です、マスター』』
一人で出歩かなければいけない時の為に、レクスが自らのシステム中核を分離してコピーした人形を二つ作ってくれた。
レクスと違い、その人形内で全てが完結できる自律型だが、レクス程の演算能力は持たない。
戦闘面においては白兵戦向けで、徒手空拳を得意とする。
コアは胸板上だが、狭域結界で守っているので対結界装備でも無きゃ破壊できない。
《むー.........》
「どうした、アリス?」
《最近、ユウキが構ってくれないから》
「.......そりゃ悪かった」
最近は積極的に戦闘ばかりしてたもんな。
それ以外の時間はミーティング、後は自室でゴロゴロしてた。
たまに艦橋で寝てるけど。
とにかく、アリスと一緒になる場所がほぼ無かったのだ。
「まあ、アリスは連れて行くよ。銃弾くらいじゃ死なないしね」
《ありがとう!》
モノアイをキラキラさせるアリスを後ろ目に、俺は今後どう動くかを考えた。
無法者たちの間で、視察団は注目を浴びた。
いい意味でも、悪い意味でも。
『今度来た視察団、すげえな』
『どうすげえんだ? バカデカい戦艦が入港してきたのは知ってるが』
『リーダーがガキなんだよ、エルフってなってるが耳が短けぇ』
『ガキぃ? 俺達を舐めてんのか?』
『それがよ、あいつを狙って数十の傭兵弾が動いたらしいんだが――――全員返り討ちに遭ったらしい』
『そんなわけねえだろ、話盛ってるな?』
『アイツの周囲には常に機兵が展開している上、いつもそばにいるメイド2人が物凄く強いらしいぞ』
『じゃあアイツ自身が強いわけじゃないんだな』
『当たり前だろ、ガキに負けて堪るか』
などと、会話が繰り広げられている。
相当舐められているが、実際に子供だししょうがないな。
『不快ですね』
「なーに、真っ向から喧嘩売ってきたらBC砲で吹き飛ばす」
『そこまでする必要は無いかと?』
「お前にも慈悲はあるんだな、レクス.........」
『いえ、効率的ではないと思いまして.....機兵を大量に送り込み、中の人間を抹殺したうえで第六エスカリアを占拠し、新たな拠点に、と.........』
「待った待った」
吹き飛ばすよりはるかにエグイ手段が出て来たな。
逃げる時間のあるBC砲と移乗攻撃という名の蝗害かどっちがいいかって事だな。
「とりあえず、時間もあるし街に出るよ」
『分かりました、ギメルとベート、アリスを連れて行くのですか?』
「ああ」
ショッピングと行こう。
AVALONが停泊しているのは、第六エスカリア外周部に存在する旧軍港だ。
かつてはここに沢山の艦が居たらしいが、フューリオン帝国との戦いで全部持っていかれたそうな。
そこにAVALONと、艦隊が停泊している。
AVALONの浮遊石は起動しっぱなしだな。
そうしないと第六エスカリアが傾斜し始める。
「ベート、最初に行くべきは何処かな?」
「..........フィカン大広場がいいと思います、元々は市民公園だったようですが、今では食糧系の屋台が労働者向けに展開される場所になっております」
「.......そういえば、お腹減ったな」
時間は昼時。
太陽が真上にある。
「食いに行くか」
俺は軍港を出て、歩き出す。
距離はそこまでじゃない。
数分歩けば着く。
「しかし........寂れてるな」
「そうですね、恐らく元々は軍の関係者向けの店舗が主だったのでしょう」
「なるほどな」
ここで働いていた人たちはどこへ行ったのだろうか?
店を都心へと移したのか、他の都市に軍と共に移動したのかそれとも泣き寝入りしたのか…?
分かりようもないそれを考えつつ、俺たちは都市郊外へと出た。
「ここからはグラニで行く」
「わかりました。アリス様、我々を…」
《分かった》
アリスが亜空間から腕を伸ばし、二体を収容した。
同時にグラニが浮上してくる。
俺はそれに乗り、エンジンを掛けた。
独特の低く静かな駆動音が鳴り、ハンドルの中央から空中モニターが展開された。
『システムオールグリーン、接地待機システム作動中』
俺が跨ると、モニターの内容が変化しマップが表示される。
『目的地まで、残り4㎞』
「よっしゃ、旅と行くか」
俺はアクセルを踏んで、グラニを発進させた。
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