第一話 新天地へ
また五話上げます
「なあ、艦長さんよ」
「なんだ?」
「そろそろ、外洋に進出しねえか?」
第四エスカリアでの一幕から数か月が経過した。
季節は——————高空じゃあんま関係ないか。
俺達は少しずつ帰還しつつあった空賊を次々と撃破し、アジトを島ごと吹っ飛ばしたり(人質や物資は事前に略奪機兵で頂いて)、空賊に襲撃されたけど数時間で全滅させたりなど色々あった。
俺が売った艦艇は残らず王国に買い取られ、末端まで艦が行き渡ったという。
「外洋に?」
「そうだ、最前線である第九エスカリア。その近くに行ってみようぜって話だ」
「...........どうしてもっと早く言わなかった?」
「防衛戦力の生産もそろそろ充分なんだろ?」
「!」
そう、確かに長期間第三エスカリア周辺に居たのは、
・防衛戦力の生産、防衛ラインの構築
・治安維持
・俺の個人的な郷愁の念
という理由の元である。
なので、もうそろそろ離れてもいい事になる。
「だけどよ、行くのはいいんだが........お前らついてくるのか?」
「勿論........だが、エリナは分かんねえな」
エリナかぁ.........
一応優秀な副艦長なんだけどな。
空賊の襲撃の時、夜陰に紛れて近づいた彼等にいち早く気付いたのはレクスだったが、レクスからそれを聞いて即座に提案をしたのも彼女だ。
「しょうがない、後腐れのないよう姫サマに会ってくるよ」
「それがいい」
という訳で、俺は姫サマとOHANASHIすることになった。
「っと........第三エスカリアを一時的に離脱するという話でしたか?」
「そうだ、AVALONと新型艦数隻は持っていく」
「こちらを守る防衛戦力はあるのですよね?」
「勿論だ」
防衛艦隊は亜空間に沈めてあるし、第三エスカリア防衛機構〈TITAN〉も既に正式稼働している。
半端な艦隊では滅ぼすことは出来ない。
とくにTITANは完全に俺の趣味全開で、緊急時以外の運用を考えていないエネルギードカ食い野郎なので、AVALONが200隻くらいいないとまともに太刀打ちできないかも.......
亜空間の底から発掘した亜力エネルギー機構が無かったらまともに稼働させられない。
「でしたら、別に行っていただいても構いませんよ?」
「ああ、行くのはいいんだけど......エリナとかって、置いて行かないとダメ?」
「どうしてそんな事を訊くのですか?」
「いや、エリナは優秀な副艦長で.....」
「ですから、私は第九十九王宮騎士艦隊を、前線に派遣したことになる訳です。つまり、全員何の問題も無く前線行きですよ?」
「それはよかった!」
いつものメンバーで前線に行けるわけだ。
「それで、前線とは言っても最前線ではありませんよね?」
「勿論」
下手に最前線に行って迷惑を掛けるわけにもいかない。
まずは経験を積む意味でも........
「第六エスカリアにでも行くかな」
「えっ」
「うん?」
姫サマが心底驚いたような顔をする。
「レクス、第六エスカリアって何があったっけ?」
『検索中・・・はい、第六エスカリアは無法都市と化しており、空賊の本拠地のような有様だそうです』
「.........面白そうだ」
「本気ですか?」
「うん」
正義の味方に興味はないけれど、無法あるところに娯楽あり。
悪党を潰すもよし、悪の過程で生まれた技術を見て回るのもよし、だ。
「よし、では第九十九王宮騎士艦隊はこれより、エスカリア王女の命を受け、第六エスカリア視察へ出発する............こんなんでいいかな?」
「はぁ..........くれぐれも王家の名を穢すことだけは避けていただければ、何でもいいですよ」
姫サマは諦めたように言った。
「今まで、ありがとうございました」
「————行くのですか?」
「はい」
俺は孤児院を訪れていた。
「........私は前線で昔、戦っていました————多くの人間が、私に挨拶して戦線に赴き...そして二度と帰って来ませんでした」
「俺は帰ってこないつもりはありませんよ」
「分かっています、私が祈るのはあなたの安全のみ。どんな形でも、生きて帰ってきてくださいね」
「勿論」
アリシャに一時の別れを告げないのは、余計な心配を掛けないためだ。
俺は何の躊躇もなく孤児院を後にした。
『魔導機関起動、第一、第二フライホイール接続、魔力伝送管接続、安全装置解除、後部スラスター点火』
「魔力場安定装置起動、C-03魔力場に接続、浮遊石の正常起動を確認」
「システムオールグリーン、レーダーに異常なし」
「ステルスシステム起動、カモフラージュ開始」
艦橋に声が響く。
珍しくローレンスたちが真面目に動いているのだ。
なら俺も、カッコよく決めないとな。
「〈AVALON〉発進! これより通常の巡航速度で、第六エスカリアへと向かう!」
「「「「「「「了解」」」」」」」
〈———了解〉
後部スラスターから魔力の炎を噴き出させ、〈AVALON〉は悠々と蒼穹に向けて飛び立つ。
そして、目を見張るような速度でみるみる第三エスカリアから遠ざかっていった。
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