第十八話 捨て犬拾いと破滅
今度は映像通信の回線をつなぎ、交渉に出ることにした。
『........何の用だ、殺すなら早く殺せ』
男のくっころを見せられた俺は、ただ冷静に言った。
「いい話があると言ったら、聞くか?」
『..........聞こう』
「俺に協力すれば、お前らを匿ってやる」
俺がそう言った瞬間、ラムズとローレンスが俺に駆け寄った。
「艦長、正気か!?」
「あいつらは俺達を殺そうとしたんだぞ」
「ここで殺しても、何の意味も無いだろ」
俺は席から立ち上がり、セールスマンの如く言う。
「その船を捨ててAVALONに搭乗し、事が終わるまで待機してもらう。その後は俺の私設艦隊の乗員となってもらい、働いてもらいたいのだが?」
『———我々のメリットは?』
「お前らは撃沈されたことになってるから、第四エスカリアではもう生きていけないだろう。だが、第三エスカリアはお前らを大歓迎だし、俺も大歓迎だ。どうだ? お前に選択の自由を与えよう、 このまま撃ち落されて全員無惨に死ぬか、俺の部下になって人生バラ色かどっちかを選べ」
我ながら最大限の慈悲だな。
こんな素晴らしい条件他にないぞ。
『.......一度や二度ではない、貴艦に砲門を向けた我らを信用するのか?』
「別にお前らが裏切ったくらいで何とかなる訳でも無いし、リクルートは重要だからな」
『はは..........我等が勝てない訳だ』
AVALONは超大型の戦艦だが、型さえ決まってしまえばより少ない魔力で量産可能だ。
レクスが号泣するのでやらないが、数万隻のAVALONで帝国を滅ぼすのも悪くないな。
つまり何が言いたいかというと、乗員さえ無事ならその場で再構築および強化して、再び戦い続けられる。
裏切られても権限を〈上書き〉すればあらゆる機能は俺の元に戻る。
裏切られても何の問題も無いな!
「艦長の悪いクセだよな..........」
「そうやって何でも拾っていく.....俺等みたいに」
仲間達の鋭い視線を浴びながら、俺は尋ねる。
「どうする?」
結果として、クイン空尉含む警備艦の乗員はAVALONに降伏し、潜伏することとなった。
さて、後は総督を帰すだけだな.........
第四エスカリア、中央塔の一室にて—————
ロドリックが総督を床に這いつくばらせていた。
周囲には銃を構えた衛兵が立っている。
「誠に申し訳ございませんでしたァァァァ!」
「今さら何を言ってるんだね、謝罪するチャンスをやったことに感謝すべきだな、総督」
「ぼ、防衛戦力の6割を喪失したのは私の責任ではありません! 無能な部下共が下手を打ったせいです!」
「だったとしても無能に気づかないお前が悪いだろうね」
ロドリックは嘲笑する。
総督は使い捨て、これは総督を切り捨てるためだけのただの儀式だ。
「ともかく、君は解任で......第四エスカリアの独自法で銃殺刑だ」
「そ、そんな!!!」
「やれ」
総督が悲鳴を上げるが、逃げる暇すらなく周囲の衛兵が銃を構え、撃った。
総督は一瞬踊るように身体を跳ねさせた後、床に倒れ、その身体から血が溢れだして床を汚した。
「ふぅ.........さて、あの船をどうしようか。あのガキに舐められたままで終わられないからねぇ......」
ロドリックが憎しみに満ちた表情を浮かべる。
「そうだ、孤児院出身とか言ったな。第三エスカリアを襲撃して、孤児を人質に取ればいい」
ロドリックが自分の考えに酔っていると、衛兵が叫ぶ。
「ロドリック様!!!!」
「なんだ?」
「そ、総督がっ!!!」
見れば、総督が立ち上がっていた。
それだけならまだいい。
その身体が、光りながら風船のように膨張していくのだ。
「う、撃て! 殺せええええええええ!!!!!」
銃弾が総督を襲うが、全く効果を見せない。
膨張は止まらず、そして...........
その日、第四エスカリアの中央塔とその周辺に存在する技術区画が謎の爆発によって壊滅し、数万人の被害を出した。
爆発の残骸が偶然周囲のエネルギープラントに激突し、エネルギーの急速的な誘爆を生み出したのだ。誘爆はエネルギーパイプを伝い、安全装置の無い技術区画を蹂躙した。
これによって技術区画は壊滅的な被害を受け、技術者や研究者が多く命を落とした。
そして第四エスカリアは技術という唯一の長所を失い、エスカリア王国において傍流に立たされていくのであった...........
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