第十七話 再びの殲滅
艦内に雪崩れ込んできた複数人。
その一番前にいた総督は叫ぶ。
「全員整列! これより突撃を仕掛ける!」
「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」
逆らう者はいない。
特攻するという艦に乗ると決意した人物だ。
もとより最早逃げる術はない。
ならば艦を制圧しその後に逃走するという稚拙な手段しかないのだ。
『各員退避せよ、隔壁を閉鎖する!』
声と共に、何十もの足跡が聞こえた。
「総督、何か変です」
「はぁ? 何を言っているんだ、敵が退いたのだから進むべきだろう」
「しかし………ええ、わかりました」
部下は総督に反論しようとしたが、無駄だとすぐに理解し黙ってその後を追った。
数分後、数十人を犠牲にして閉じる隔壁や敵の襲撃から身を守った総督たちは、大広間の様な場所へと出ていた。
「何だ、ここは…?」
「ようこそ、AVALONへ」
総督たちが立ち止まった瞬間、背後の隔壁が閉じる。
慌てて逃げようとした部下は隔壁に挟まれ体を両断されて即死する。
それと同時に反対側の隔壁が開き、ユウキが姿を現した。
「そして、今し方ぶりだね、総督」
「あ、あいつだ! あいつを撃ち殺せ!」
総督の命令に従って、後ろにいた兵たちが、一斉に魔力銃を抜いてユウキに向けて射撃した。
それらは呆気ない程にユウキに届き——————直撃した。
貫く事が出来ず、壁にぶつかった液体のように飛び散る。
「な、何故死なない!? くっ、全員魔導ライフルを準備せよ! 合図は要らん、撃て——————!!」
魔力の弾が連射され、部屋を眩く照らすが....
ユウキに効果を及ぼすことは無い。
「そろそろいいかな」
『分かりました』
無機質な声が響いた瞬間、銃撃が止む。
一瞬で総督以外の兵士が絶命し、床に転がった。
「は...........?」
「さて、総督.............その身をお預かりしましょう」
総督は歓喜した。
自分だけが生き残れたのだと。
生き残れたからには理由があるに違いない、それは自分に利用価値が..........
「ああ、お前に利用価値は特にないけど、この方が手っ取り早いからな」
放たれた声に、総督はふざけるなと叫びそうになり—————
その意識を手放した。
「敵艦隊沈黙、次回攻撃の気配はねえな」
「この程度か」
移乗攻撃を仕掛けたのはいい判断だが、わざと開けてないと中に入れないのは予想してなかったんだろうな。
しかも、最後部から入って後部にある重要区画にたどり着く前に全滅だ。
「にしても、艦長に良心があったとは驚きだ」
「どういう意味だよ」
言っておくが、総督を助けたのは良心からじゃないからな。
俺は通信システムを弄り、敵艦に通信を送る。
すると、直ぐに通信が繋がり音声が聞こえてくる。
『————こちら第四エスカリア二十三番警備艦隊所属、クイン・エルサー。階級は二等空尉』
「こちらは第三エスカリア第九十九王宮騎士艦隊所属、ユウキだ。階級は無い!」
まずは互いにご挨拶。
あ、俺の所属に関しては姫サマにお願いしたら適当にくれた。
どうせ99まで艦隊が増えることは当分ないので、有難く受け取れとのことだ。
「総督の身柄は確保した、早急に降伏しろ」
『そちらの言い分は理解した、だがこちらも引き下がるわけにはいかない』
「何故?」
『総督に従った以上、我等は第四エスカリアに帰った時点で軍機違反で死刑だ。ならば——————刺し違えてでも貴様らに一矢報う!』
次の瞬間、通信がぶちっと切れた。
『敵艦熱量増加、加速を開始』
「こちらも加速だ」
刺し違え?
真っ平御免だ! 俺は逃げるぞ!
『敵艦発砲、反撃準備、第一、第二砲塔照準固定、誤差修正完了』
「撃て」
『了解』
撃ってきた以上情けは掛けない。
俺は揚げ山芋を拾って食う。
「艦長、意地汚ねえぞ」
「食べ物を無駄にするのは勿体ないだろ」
「それもそうか....ってそうはならねえだろ」
「今墜ちた一隻、何人乗ってると思う?」
「100人くらいかな」
惜しい、80人だ。
「そいつらが全員100まで生きると考えると、俺達は今8000年分の食料を無駄に散らしたって事だよな? これくらい許されるんじゃないか?」
「..........うーむ、そんなもんかな」
容赦ない殲滅は続き、結局俺が通信を最初に繋いだ艦だけが残った。
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