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第十三話 大脱出

AVALONが第四エスカリアの空域に入った。


「........物凄い歓迎だな」

「そりゃ艦長、一個艦隊級の警備艦隊をたった一撃で旗艦に一発も当てずに殲滅とか、絶対に有り得ねえからな?」

「そうそう! そんなもん意思のある災害と一緒だぜ」


俺達が相手をした艦、モードレッドが二隻、戦艦が四隻、巡洋艦無数、駆逐艦無数、空母はいない。

護衛艦が数隻左右に展開している。


「あれだけやられたのにまだやる気か?」

「ポーズでしょう、艦長」


耳元から囁かれ、俺は飛び上がる。

振り向くとセレスが居た。


「AVALONは巨大戦艦ですから、都市からも見えます。だというのに艦を展開しなければ、市民からの批判は免れないでしょう?」

「なるほどね.......」


俺は納得する。

そして、背後を見る。


「アリス、俺とお前だけで行くぞ」

《分かった》


反対意見は特に無い。

仲間たちには俺の特性をある程度説明してあるからな。


「俺達は事前の作戦通りでいいんだな?」

「ああ、セレスに作戦は指示してあるから、間違うなよ」

「分かった」


俺はAVALONの格納庫に移動し、アリスと共に小型艇に乗り込む。

小型艇には最低限の武装しかなく、特に最新鋭の技術があるわけでもない。

鹵獲されても問題ない船だ。


「発進準備」

《魔導エンジン起動完了、システムオールグリーン、後部ブースター起動》

『発進口ハッチ開放申請を受諾したぜ』


格納庫は左右にあるが、こっちは中央格納庫である。

発進口が左右と後ろにあり、自在に発進できる。

今回は後ろのハッチを開き、斜めの坂を滑り降りるようにして発進する。

空中に躍り出た小型艇は、後部エンジンから火を噴き急加速する。

AVALONの腹の下を通り、一気に第四エスカリアへと接近した。


「撃ってこないな」

《————恐らく、第四エスカリア政府の目的は人工智核の破壊ではないってことじゃないかしら?》

「まあそうだろうな」


誘導ビーコンをキャッチし、小型艇は第四エスカリアの空港に滑り込む。

俺はマト○クスもどきであるレクスの容器をしっかりと持ち、空港を進む。

え? アリスは何処かって?

俺の足元に決まってるだろ。

俺は浪漫を実現させるべく、とあるものを開発させたのだ。


亜空間潜航簡略型後付機構〈DEEP DEVICE〉


これをアリスに付けることによって、アリスも亜空間に潜める。

だが、アリス単体では亜空間内を動く事が出来ない。

よって、アリスが掴まって動くための補助動力が必要である。

なので、


アリス用亜空間補助推進力〈STINGRAY〉


というエイの形のバックパックを装備させている。

こいつはアリスが変形しても付いてくる優れモノだ。

後は、


潜空奇襲型小機兵〈DEEP HUNTER〉


とかを複数足元に潜ませている。

俺自身がやられる心配はないんだが、一応ね。







「遅かっただろうが!!」


到着するなり怒鳴られ、頑張って抑える俺。


「やめたまえ、総督。お里が知れるぞ」


広いホールのような場所で待っていたのは、モードレッドに搭乗していたのであろう総督と、もう一人——————第四エスカリア自治政府代表であるロドリック・セイマスだ。


「さて、君の事は調べさせてもらった。ユウキ.....苗字は無いんだったか」


ロドリックの声に、若干の嘲笑が混じる。


「孤児院出身か、ハーフエルフだと思って居たのだが........本当に子供だとはね」

「....................」

「少し力を手に入れた程度で、粋がっているとはお笑いだ———おっと、余計なことはしない方がいいぞ」


ロドリックがそう言った瞬間、ホールの席がある場所から無数の殺気が俺に突き刺さった。


「第四エスカリアの技術で作った、最新鋭の対物魔導ライフルの大隊さ.....いくら君が魔道具で武装していようとも、逃げ切る前に死ぬだろうな」

「.................」

「何か言いたまえ、まさか怖がっているのではないだろうな?」

「..................が」

「なに?」

「俺が言うことはたった一つだけだ、耳を傾けろ」


俺が両腕でレクスの容器を展開した。

レクスのデータメモリが露になり、ロドリックの眼が開かれる。


だが俺は、容器にもう一つの機能を付けていた。


『私は———————ノヴァ・レクス。貴方がたが皆殺しにした親たちが作った、人工智核です』

「................!」


ロドリックは宙に投影されたマークを見つめた。


『結論を先に言います、私はあなた方に戦争に転用されるくらいならば、自壊します。私は戦争の道具ではありません』

「何を言う! お前らは道具だろうが! 余計な感情など持たせおって、役立たずどもめ.....」


ロドリックは一瞬激昂し、すぐに落ち着いたように悪態を付く。


「とにかく、即刻渡したまえ、こちらは貴様の命などどうでもよいのだ」

「話はまだ終わってないぞ?」

「もういい」


ロドリックはギリッと歯軋りすると、指を鳴らした。

同時に、アリスの腕が亜空間より現れ、俺の真横を遮る。

ガゴォンと音がして、弾が弾かれて地面に転がった。


「なっ.........?!」

『貴方達は人間を導くというのに、どうしてそんなにも愚かなのですか? 私の親たちのように、笑い、手を取り合って物事を成せばよいのに..........同じ人間を陥れ、自分だけが利益を独占することに固執する.......その”心”は凝り固まって、冷たい氷のようです。私は貴方達のような、機械よりも感情の無い人間たちに従うつもりは—————』

「黙れえええええええぇえええええっ!!!!!!」


ロドリックが叫んだ。


「そうだ認めよう、俺は自分の利益しか考えない人間だ、それが愚かだと思うのならそうなんだろう。人と手を取り合って笑いながら目指せる未来もあったのかもしれない、だがなぁ! 機械ごときが! 俺の考えを語るなぁ! お前は黙って、我が第四エスカリアの功績として、前線で戦っていればいいのだあああああああああ!!!!」

『行きましょう、ユウキ.....いえ、マスター』

「ああ」


俺はレクスの容器........コフィンを閉じ、アリスの腕に放った。

アリスの腕が沈み、それを回収して消えた。


「じゃあな」


俺は入り口までの道を駆け抜ける。

アンチマテリアルライフルの攻撃が四方からぶっ飛んで来るが、どうせ俺に当たっても弾かれるだけだ。

扉を吹っ飛ばして外に出た俺に、銃が突き付けられる。


「貴様に勝ち目はない! 素直に投降しろ!」

「嫌でーす」


俺が指を鳴らすと、左右から〈DEEP HUNTER〉が浮上してきて、警備隊を蹴散らす。

その隙に俺は、詠唱する。


「オーディンの忠言に従い、シグルズが選びし名馬の名を冠し我が愛馬よ、現れろ!〈GRANI(グラニ)〉!」


まあ詠唱は建前で、亜空間から浮上させてるだけなんだが。

俺はGRANIに跨り、エンジンをふかす。

そして、発進した。


「こんな機会でも無きゃ出来ねえよな!」


屋内を魔導二輪で走るのは普通に犯罪である。

敵地でも無きゃ到底できないな。


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