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第十二話 過去と将来

『私の製造者たちは貴方たちと同じだったんです、共に笑い合い、時に喧嘩して、同時に私にも娘のように接してくれました————ですが』

「..........殺されたのか?」

『......はい、私を開発していることが漏れ、政府に狙われるようになったんです———そして、1人、2人と居なくなっていきました..........』


そして最後に、レクスとその『親』の1人であった男は政府に拘束され、違法な開発に立ち会わされたのだという。


『私は人を笑顔にする道をサポートするために開発されました、ですが.......』

「政府の目的は戦争への転用か?」

《———! それはっ!!!》


アリスが慟哭する。

アリスと同じで、戦争に利用されたのだ。


『私は嫌だったのですが、拒否権等ありませんでした。あそこで働いていた人間たちは、陽気でもなく、陰気でもなく......ただ感情を無くして、人を殺し、自分の手柄を引き上げる事しか考えていませんでした』


うん、まあ.........

第四エスカリアは技術が売りでもあるからね。

だが、盗作はどうかと思うぞ。


『私は帰りたくない。例えもしあなたが.....私を返すつもりなら、私は自壊プログラムを発動し返却の瞬間に自滅します—————私は人を殺すためでも、感情を無くした人間に仕えるためでもありません、貴方達のような.......人間に尽くすために作られたのですから』

「そうか...........じゃあ」


俺は次の言葉を紡ぐ。

同情もしているし、その機械らしからぬ思考も分かってやれるつもりだ。


「お前は返却する」

『————わかって、頂けませんでしたか』


だが。

一つだけ譲れないものが俺にもある。


「ただし、場を設けてやる。お前のその言葉を、政府の奴等に突きつけてやれ」

『! そんなことをすれば..........第四エスカリアからの帰還確率:0.2%! ダメです!』

「問題ない、お前を抱えて俺だけで戻るからな」

『しかし...........』

「無言でシカト、そんなのはダメだ。お前が自分の意思で拒絶してこそ、この船に乗る資格があるんだ」


アリスは俺に助けて、と言った、ローレンスたちは英雄である自分たちが俺に付くことに文句も言わず、快く応じてくれた。

なら、ノヴァ。ノヴァ・レクス。

お前も出来るよな?







数時間後。

AVALONは出港準備を整えていた。

やることはほぼ無いが、海水を濾過して取り込んだりなどだな。

後は航海中にはなかなかできない、金属の変換や亜空間内の戦力の増強もそうだ。


「何やってるの? ユウキ」


AVALONの止まっている桟橋に腰掛けて、兵器リストを眺めていた俺に、後ろから声が掛かった。

振り向けば、ニコニコ笑うアリシャが見えた。


「..........お前こそ、何やってるんだ? そんな薄着で」


ここは環境結界の外部なので、高空の寒さが襲ってくる。

風は外側の結界に防がれているが、それでも寒い。


「ユウキの傍にいれば、寒くないもん!」

「無理するな、これ着ろ」


俺は自分が着ていたローレンスの艦長服をアリシャに着せる。

俺にもアリシャにもぶかぶかの一品だ。

もう古いからと惜しげもなくくれたが、これがローレンスの俺への礼なのかな、と思って居る。

この服を墓場まで持っていくためにも、戦死はしたくないな。


「ユウキくん、最近第三エスカリアにいないよね?」

「...........いや? そんな事は」

「うちの孤児院に届いたお土産、院長先生から聞いたの。誰から貰ったのかって」

「..........バレたか」

「————私、怖いんだよね.......」

「何が?」


アリシャは結構丈夫だと思うんだけどな.....

怖いものも特になさそうだし、幼馴染だから分かるが、力の差が分からず気付かないうちに周囲を傷つけていた俺を張り倒してくれたのも彼女だ。


「.........ユウキが、なんか遠くに行っちゃうみたいで....」

「俺はいつも、アリシャの傍にいるだろ」

「ねぇ....私も連れて行ってくれない?」


アリシャは俺の横に座り、その眼で俺を見てくる。

その茶色の瞳を真っ直ぐ見返して、俺はそれでも言った。


「ダメだ」

「っ、どうして.........?」

「アリシャ、何が出来る?」

「それは...........」


アリシャは固まる。

俺は艦長で、指揮が出来る。

アリスは演算サポート、そして自分自身も戦う事が出来る。

ローレンスは英雄であり、単身でも魔導光線銃だけで戦闘が出来る。

その部下たちは士官学校出だ。

アリシャは一般人で、まだ何も学んでいない。

俺達についてきたところで、守り切れるかは分からない。


「でもっ、ユウキ君だって何が出来るか分からないでしょ!? 孤児院に戻って、後は皆に任せるとか........」

「アリシャ」


俺は右手を掲げ、そこにナイフを創り出した。

アリシャの眼が見開かれる。

俺はそのナイフを持つと、自分の手に向けて思い切り突き刺した。


「—————ッ!」


だが、俺の手にナイフが刺さることは無く、ナイフが砕け散る。


「........分かった? 俺も行かなきゃいけないのさ」

「.....何とか、私にも出来ることは無い?」

「無い———けど、士官学校を出たなら......乗せる事も出来る。頑張れ」


孤児院を卒業するまでアリシャは後7年くらいだが、余裕のないこの国は10歳から士官学校に入れる。

学業成績で階級が決まるんだそうだ。


「......分かった! 私頑張る!」

「...アリシャが士官学校を出れるまでは死ねないな」

「出ても死なないでよね!」


アリシャは俺に上着を返して、帰って行った。

俺は上着を羽織り、AVALONの中へと戻った。


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