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第十話 無双

転移が完了し、AVALONは雲一つない蒼穹に飛び出した。


「逃げ切れたか…」

「艦長、すぐに王女に連絡するぞ」

「ああ」


第四エスカリアで人工智核が開発されていた事実を姫サマが知っていたのなら、分離した上で謝罪と共に引き渡す。

そう思って俺は連絡システムにアクセスしようとしたのだが…


『空間振動検知! 後方より転移を確認!』

「冗談だろ」

「追っ手なら逃す気は無いだろう、艦長さんよ、このまま振り切るぞ!」

「分かった!」


規律を破って第四エスカリア外まで追っかけて来るということは、もう後に引けないということだろう。


「最大戦速!」


雲の流れる速度が一気に速くなる。

通常の艦艇の機関では追いつけないほどに。


『前方から転移反応!』


見れば、前方にも艦が転移してきていた。

すぐさま回頭しているのを見ると、機関に負荷を掛けて長距離転移をして先回りしたか。


『小型艦・・・ハープレス級とソディア級の混合艦隊ですね』

「んなこと言われても分かるか! 魔導粒子スプレッド発射準備!」


回頭した小型艦たちは一斉に砲撃してきたので、広範囲殲滅に特化した魔弾を艦首両舷からぶっ放して全滅させる。

紅い光弾が敵の眼前まで迫り、爆発して無数の高エネルギー弾を撒き散らすのだ、あっという間に蜂の巣になった小型艦たちが量産された。


「艦長、後ろに数十単位の転移反応! 大艦隊だ! 大型艦も居るぞ!」

『大型艦を検索...データベース照合:大型戦艦モードレッド』


俺のディスプレイに詳細が表示される。

旗艦の一隻のみだが、AVALONには到底及ばないが比較的長い射程を持ち、AVALONには到底及ばないが高い火力を持つ砲を二基装備しており、AVALONには到底及ばないが高い防御力を併せ持つ艦らしい。


『止まれ! 止まらんと撃沈するぞ!』

「お断りしまーす」


AVALONは直進を続ける。

だが、向こうの意思も確かめず逃げるというのもなんか嫌だな。

俺はとある案を思いつく。


「レクス、両舷減速」

『はい』

「艦長、何する気だ?」

「墓場へのお誘いだ」


これで射程距離内まで近づけるだろ。

その上で撃ってくるかそうでないかで運命が決まる。


『敵推定射程距離まで、残り3㎞』

『残り2km』

『残り1km』

『砲撃確認......弾着まで、3・2・1...ゼロ』


何かが防壁に衝突し、軋むような音を響かせた。


『全艦一斉射撃!』

「なあ」

『何だ? 今更命乞いか?』


俺は回線を繋げて口を開く。

向こうはあくまでも上手で行くようだな。

その鼻っ柱、折ってやる。


「お前、撃ったな?」

『なに?』

「ローレンス、こちらもお返しだ。全砲門開放」

「マジか!? 分かった!」


AVALONは一見すると前方に五門、後方に七門の砲台を備えた艦だが、装甲の下に数十の砲台を隠している。

それも上甲板だけではなく、艦隊下部のBC砲の両脇にもたっぷり隠されている。


「レクス! 反転180°!」

『はい、よく回転する日ですね』


レクスは冗談を交えつつ、艦を回転させる。


「待てよ.....レクス、90°回転でいい」

『分かりました、後部の砲台も開放します』


俺の意図を素早く理解したレクスが、艦の回頭を途中で止め、全ての砲台を露出させる。


「ああ、そういう事か..........ターゲットは全艦か、こいつはすげぇな、何処に撃っても当たるぞ」

「待ってローレンス、旗艦は残せ」

「なに? どうしてだ?」

〈————ユウキは、力を見せつけたいの?〉

「その通りだ」


全滅してもらっちゃ困る。


「難しい注文だな......レクスさんよ、癪だが照準は任せる」

『承諾しました』


この話をしている間にも、バカスカ撃たれている。


『痛いのを食らわせてやります、一斉掃射!』


轟音が響き、左に見えていた艦隊に爆炎の花が咲く。

応酬とばかりに誘導弾頭が艦隊から放たれる。

全部、弱いところを狙っている。

狙いは良いんだよな、狙いは。


「対空戦闘!」

『左舷対空砲、ガトリング砲発射』


だが、無駄だ。

艦の弱点を知る以上、設計段階で対空砲を設置している。

対空砲で狙えないほど小さい誘導弾頭は、ガトリング砲で薙ぎ払う。


『一番砲塔から第十七砲塔までの魔力装填完了、発射!』


空を無数の光条が眩く照らし、艦隊に突き刺さる。


「このまま砲撃を続けろ! 俺は皆のおやつを取ってくる」

『分かりました!』


丁度おやつの時間なので、俺は下におやつを取りに行った。

多分ファリンかセレスが先行しておやつを作ってくれてるはずだ。







『全艦、密集隊形を維持せよ!』

『ふざけんじゃねえ! 死ねって言うのか!?』

『ラッドがやられた! 俺は逃げる!』


モードレッドの艦橋は通信で阿鼻叫喚の地獄と化していた。

更に、戦列を離れた小型艦に光線が直撃し、内部から誘爆して爆発四散した。

もともと低かった士気は完全に崩壊し、全ての艦が戦列を離れようとしていた。


「ダメだ! 逃げるなああああ! ここであの艦を始末できなければ、ウィルバート様に何を言われるか........」

『そっちの事情なんか知るか! 死ぬなら勝手に死にやがれ! とにかく、俺は逃げっ、ぎゃああああああああああ!!!』

『あづいよおおおおお!!!』


第三エスカリアから来た巨大艦、所詮は王宮製造の艦であるし、簡単に沈められるだろう。

そう考えていた総督の考えはいとも簡単に裏切られた。

通常の艦砲どころか、モードレッドの砲撃ですら効かず、誘導弾は着弾前に撃墜され、モードレッドを超える射程を持つ未知の砲撃でこちらの艦だけが無惨に潰されていく。

しかも—————


「敵は.........何故、この艦を狙わないのだ?」


既にモードレッドの周囲には殆ど艦が居ないのに関わらず、AVALONは移動しながら逃げようとする小型艦や中型艦を潰していく。

移動しているのはモードレッドの背後に隠れて逃げようとする艦を撃沈するためだ。


「————舐められている、という事か........くそ、クソ、クソがあああああああ!!!!!!」


総督は艦橋にて絶叫した。

総督を宥めるものはもう誰もいなかった。

その後、数分にて勝敗は決し、残存艦はモードレッド一隻となった。

モードレッドの艦長である総督には目もくれず、AVALONは悠々と進路を第三エスカリアへと向けた。


「追え! 追わんか!」

「....................」

「追えと言っている! 俺を舐めたことを後悔させてやる!!!」


喚き叫ぶ総督に耳を貸すものもまた、もういなかった。

数十の艦の残骸が海に浮かぶ空を、大型艦一隻が反転し、よろよろと飛んで行った。


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