第四話 データメモリ
《内部は密封されていません、内部に危険物質存在の可能性0.00000001%》
「よし、開封する」
《念のため、換気システムを遮断します》
「分かった」
俺は今、AVALONの実験区画にある気密室にいる。
男の残した謎の言葉の真相を探るべく、謎のアタッシェケースの中身を見ることにしたのだ。
だが、何が入っているか分かったものではない。
人の頭ほどの物が入るサイズだ、しかも密閉タイプ。
なので、大抵の事では死なない俺と、気密室、この艦の解析システムのコンボで開封を行ってい
るわけだ。
そして、ケースを開いた中に入っていたものは.........
「マト○クス?」
某超ロボット生命体に出て来そうな、左右にグリップのついた球体だった。
球体を縛るように構造体が付けられ、グリップに繋がっている。
《ユウキ、マトリ○スって?》
「こっちの話だ」
とりあえず、開くか。
俺はグリップに手を掛け、力を入れる。
「.........開かねえ」
まさかマ○リクスのように資格がないと開かないとでも言うのか?
その時、正面の水晶が嵌っている部分に文字が映る。
『DNAデータを参照してください』
「あー、遺伝子ロックか」
本人とその親族しか開けられないロックとは、余程重要なものだったのだろうか。
《表面の成分が判明。特殊なミスリル塗料でコーティングでされてるけど、アダマンタイト合金みた
い》
「冗談だろ」
AVALONの表面にこれでもかと使われているアダマンタイトのプレートは、アレ一つで国家予算
が飛ぶほど希少だ。
流石にあれほどではないとはいえ、高価な金属が使われた外殻ということだ。
「こりゃ国家プロジェクトが関わってんじゃねえのか......?」
何でこんなもんを持ってあのおっさんは逃げてたんだ。
「まあいいや、失礼どころじゃないけどここは無理矢理開けさせてもらおう————〈上書き〉」
俺は遺伝子ロックの内容を上書きし、解錠状態にする。
そして、両側のグリップを持って、開く。
ガコン! と音を立てて開いた収容容器の中には..........
「うーむ、ますます謎だな」
左右にスライドし、開いた内部には————
なんか澄んだ電子音を響かせながら、一つの球体の周囲を二つの円が交差しながら回ってい
る.........ものを映し出している小さな加工魔石だった。
『艦長、こいつはやべえかもしれんぞ』
「ローレンス、何か覚えがあるのか?」
『いや、魔石を加工するにしても、目的が無ければ意味がねえ....そいつは恐らく大量の情報を集
積した魔石だ..........この船のコンピューターに繋いでみたらどうだ?』
「ちょっと怖えな..........」
拾ったUSBをPCに接続するのがヤバいのと同じで、こいつもかなりヤバい可能性が........
《私と戦ったのに、何が怖いの? 頑張れ頑張れ!》
「わ、分かったよ.......」
俺はアリスに後押しされるように中央コンピュータールームに向かう。
居住区より厳重に護られている場所で、普段はアリスの演算サポートを行っている。
もっとも、全体の1%も機能を使用していないのでもはや無駄なのだが.......
俺は部屋の中央にある端末を接続する台座に、取り出した魔石を乗せた。
《ローレンスの言うとおり、データメモリだったみたい》
『解凍中・・・02%』
さて、解凍待ちかな。
俺は携帯端末を取り出すと、パズルゲームを始めたのだった。
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