第二話 次なる目的地
「ずぞぞぞぞぞぞぞぞ」
俺は麺を一気に啜った。
視線が痛いが、そんな事は気にしていられない。
この完全食を俺は堪能するんだ!
「艦長さんよ、流石に昼間っからカップ麺は.........」
「もっと他に美味しいものがあると思いますけど......」
ローレンスとエリナが俺に視線をぶつけてくる。
ローレンスは釣った魚介類を調理した料理を、エリナはサンドイッチらしき何かをそれぞれ食って
いる。
「お前らだって、ずずず.....好きなもの食べてるだろ」
「まともなメシだから良いんだよ、そいつは......小麦、豆、卵————それくらいしか使われてねえ
じゃねえか、もっと肉を食おうぜ?」
「エビが入ってるんだからいいだろ」
そう、この鶏がらスープのカップ麺には海老が入っているのだ。
俺の知識のまま作り出されたカップ麺がこの艦には備蓄されている。
パッケージはこの世界の言語になっているが。
「艦長、そいつだけで足りるのか?」
ラムズが聞いてくるが、この身体は5歳程度である。
これで満腹になれるのだから幸せだ。
俺は残ったスープを飲み干し、紙の容器を机の傍のダストシュートに捨てた。
立ち上がり、壁際に設置された装置のボタンを押して取り出し口に落ちてきた紙コップを取り、そ
れを機械にセットして水を注いだ。
それを一杯飲み、俺は椅子に座って休んだ。
麺類を食べていると水が欲しくなることがあるが、水分を摂りすぎると消化に悪いので注意だ。
残骸の回収を終えた俺達は、再びステルスを展開し索敵に出た。
といっても、この間急いで建造(高速構築、設計図が決まってると時間も掛からない)した大量の〈
ALIGATOR〉が亜空間を進んでプローブだけ露出させ、探査活動を行っているため直ぐに撤退中
の艦隊の情報が入ってくる。
「やっぱり潜空艦って卑怯ですよね」
「何とでも言ってくれ」
長短距離転移の準備に入りながら、エリナがしみじみと呟く。
まあ、情報収集という面では無敵だよな。
この技術に関しては帝国は未知の分野であるし、この先も対策は為されないだろう。
帝国以外だと分からないけれどな。
《ここから最も近い空域の敵艦隊を選択し、該当地域に長短距離転移シークエンスを実行しま
す》
「待て、長短距離転移は短くした方がいいだろう」
ラムズがアリスに意見する。
俺は根拠を求めようとしたが、ラムズがすらすらと答える。
「ステルスで接近するにしても、長短距離転移はやめておいた方がいい。空間振動で気づかれ
る........それに、さっき潰した艦隊の救援要請を無視して航行している以上、空間振動なんて感知
したら火が付いたように逃げ出すんじゃねえか?」
「なるほど......今までは見逃されていたのも、そういう理由なのかな」
第三エスカリアに大した反撃が出来ないと知っていたからこうだったのだろうが、最近はそうもい
かなくなった。
〈AVALON〉、〈LEVIATHAN〉、〈ALIGATOR〉。
こいつらから逃れるのに必死だからな。
あと別に、〈LEVIATHAN〉と〈ALIGATOR〉は通常空間で航行出来ないわけではない。
亜空間とこっちでの推進力の違いがあるものの、兵器に関してはほぼ運用法は変わらないから
な。
ステルス装甲は無いものの、長短距離転移で現れては亜空間に潜りつつ大量の魔導兵器を浴
びせかけるという陰湿戦法は恐れられているようだ。
ただ、AIの精度が低いのか被弾は避けられないようで、エスカリア下の亜空間ドックは常に大忙
しだ。
「魔導技師が欲しいなあ」
「第三エスカリアには良い腕の奴は居ねえよな、工業区がねえし」
「行ってみるか.....まずは帝国の艦隊を片付けよう」
俺はお買い物兼新クルー探しの為に、命じるのだった。
「短距離転移、開始!」
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