第一話 不可視の脅威
また五話上げます。
曇天の下、日差しが分厚い雲を突き破れず薄暗さが支配する空を、無数の黒い点—————艦隊が飛行していた。
その規模は中隊程度で、その進路は敵対するエスカリア————の間反対、本国へと向けられていた。
『マザー』の指示に従い、彼の道具である軍人たちは有無を言わさず撤退を強いられていた。
—————その時。
ザァァァァァァァ..............
海面から浮上するような音と見た目で、何もない虚空から金属の塊が現れる。
それは大口を開き—————その中に搭載された光学兵器を艦隊にぶちまける。
艦隊は蜂の巣をつついたような騒ぎとなり、即座に散開して回避行動をとるも、数隻が蜂の巣になり炎上しながら落下、爆発四散した。
態勢を立て直した艦隊によって反撃がなされるが、口を閉じたそれは再び水面に沈むように消えていった。
何だったんだ.......?
と困惑する艦隊だったが、地獄の業火は彼等を待ってくれはしない。
雲を破り、艦隊後方の上空から巨艦が姿を現す。
艦隊から無数の光線が放たれ、巨艦を打つが何の痛痒も与えることは出来ない。
巨艦の下部が開き、数十の砲台が姿を現す。
いくつかの艦が離脱する動きを見せたが、無駄であった。
一斉砲撃を上から浴びせられた艦隊は、数秒も経たずに全滅した。
「いやー、大漁だな」
俺はアヴァロンを海面に着水させ、墜落艦の残骸を大型の魔導マグネットで吸い寄せては箱に放り込んでいた。
物を虚無から作り出すより、別の物体を変成させた方が魔力消費は少なくて済むので、地味な努力ではあるがこういう資材回収もしっかりしていかなくては。
あと、今回沈めたやつは王国に引き渡して懸賞金を貰う。
傭兵を引き留めるため中型艦以上には懸賞金が出ているらしい。
空賊相手にはもっと凄まじい懸賞金が掛けられていたが、〈AVALON〉の影に怯えて空賊は皆この空域から消え去ってしまった。
ボーっと作業をしている俺に、横からローレンスが話しかけてくる。
その手には釣り竿。
「艦長さんよ、釣るなら俺みたいにモノホンの魚を釣ったらどうだい?」
「生憎魚介類には興味が無くて」
エビとかカニとかは食いたいんだが、どうも魚って言うものの臭いがダメなんだよな。
刺身も苦手だ。
甲殻類と貝類最強! だな。
「食ったことがあるのか? 奇特な人だな、あんたも」
「おおっと」
浮遊都市の人は魚すらまともに食ったことが無いんだっけか。
勿論売っていることは売っているが.........
そう、肉に比べて「磯臭い」のだ。
前世のそれよりも臭く、加工前はもっと強い臭さだそうだ。
この世界のエビやカニも恐らくそんな感じだろうから、怖くて食えない。
だが、この〈AVALON〉に搭載されている調理機器なら恐らく臭みを消し去って加工することも可能だろう。
何しろ不思議技術の塊だ。
特にこの艦は、人間の三大欲求の内睡眠欲と食欲が重視された方向の設備だしな。
「あ」
唐突に俺の腹が鳴った。
ローレンスの方を見ると、ローレンスは古びた腕時計を見せてくれた。
もう昼時だ。
「昼食にしよう」
「それがいいな」
俺達は甲板を後にした。
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