第九話 空裏の真実
俺たちを乗せてゴンドラは降下する。
暗い空間が底に見えている。
「空間ゲートオープン」
俺はゴンドラの操作盤を弄り、呟いた。
ゴォォォンと音を立ててゴンドラの真下の黒い空間が扉が開くように開き、赤色の光が俺たちを下から照らした。
「ね、ねぇ…これって」
「低階層空間への次元結節点を常に形成しているんだ」
「????」
ゴンドラは光の中へと飛び込み、俺たちは一瞬視界を失う。
次の瞬間に見えたのは回転する壁だ。
壁に無数の横向きの歯車のようなものが埋め込まれ、赤色の光を俺たちに照射している。
ゴンドラは流動する背景の中をゆっくりと降下していく。
「これは何なの?」
「いやぁ、頑丈じゃない一般人は低階層の次元空間に生身で入ると死ぬから、回復魔法と負傷遅延を照射して抑えてるのさ」
負傷を遅延させ、すぐに回復で直す。
そうすることで痛むことなく低階層空間へ入れる。
再び光に包まれ、再び視界が効かなくなる。
次に見えたのは青緑色。
ワインのボトルのようなその色が満ちる空間に、ゴンドラは着地した。
「な、何なの…ここは」
その時、何かがスパークするような音が聞こえた。
アリシャが顔を上げれば、少し上の方で何か巨大なものが建造されていた。
「あれは…!?」
「お見せしよう」
俺たちは浮遊するリフトに乗り、そのものの近くまで移動する。
超巨大なそれはまるで…
「鰐…?」
「正解」
超巨大な金属の鰐だ…いや鰐っぽいだけで、ちゃんと戦艦としての機能は持っているが。
脚はないし、顔の部分以外はガチガチの潜空装置である。
今は未完成なのであとで覆うために露出しているがな。
「完成品を見せよう」
俺はリフトを動かして、空間の奥底へと移動する。
そこには、待機状態の潜空艦————リヴァイアサン(LEVIATHAN)が止まっていた。
「お、大きすぎない…?」
「そりゃ、リヴァイアサンだしなぁ」
どうせ資源も時間も人手(機兵)も無限だし、低階層空間内を潜航するからスペースも問題ないし全長20kmという原作重視にしちまえ!
という超巨大潜空艦だ。
機動力に欠けるが、いざと言うときはあの司令官のコンテナ部分の如く分離して、自爆させることができる。
AVALONとは違って頭にしか人が乗れないため、20kmの巨躯にこれでもか! これでもか! これでもか! と火器を搭載しまくっているので、少し打たれ弱い事を除けば強いはずだ。
一応小型の戦略潜空艦〈ALIGATOR〉も建造しており、挙動は潜水艦でありながら艦列を成して行動する。
「これが俺の秘密の一つさ」
「……凄いんだね!」
「ああ」
「…ユウキは、これで皆を守ろうとしてるの?」
「ああ」
「だったらもっと凄いよ!」
アリシャはそう言ってくるっと一回転し、笑った。
ああ、そうだな…
俺は配備につくために静かに飛翔する〈ALIGATOR〉3機を見上げて思った。
この最も尊き俺の家族を守るために、俺はこんなものまで作ったんだと。
「これがあれば俺が居ない時に襲われても大丈夫だ」
「って事は、あの超巨大戦艦も…?」
「ああ、俺があの船の艦長だ」
「ほ、ほんとっ!? すっごい! 凄い!!」
アリシャはその辺を飛び回って笑っていた。
その後、俺はアリシャを孤児院まで送り、AVALONへと帰還した。
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