第六話 空のヤベー奴ら
また五話上げます。
「レーダー、魔力レーダーに反応なし、空間振動グラフに変動なし…っと」
レーダーを睨め付けるラムズがそう口にする。
定期チェックを行なっているのだが、正直自動でも出来る。
しかし、気分でやってるかといえばそうでは無い。
それについて気になったのか、戦闘班長であるローレンスが尋ねてきた。
「なぁ、これ自動でも出来るだろ? 俺たち必要か?」
「自動にするとアリスに負荷を掛けるからな…」
今みたいな平時に、アリスの生体脳に負荷を掛けるべきではない。
少人数で運用できる巨大戦艦である以上、人間が駆けずり回る時はアリスにやってもらう事にしている。
「手動でも随分凄いけどな、すげえ分かりやすいUIだ…」
呆れ果てているのはカロンだな。
「この艦はどっから来たかも分からない興味深い技術の塊ですからね」
「ノーコメントだ」
最後はエリナ、そして俺。
「俺たちぁ新規雇用に過ぎねえからな、詮索はしねえ」
「でも、ちょっと気にはなるよなぁ」
ローレンスとラムズが口々に言う。
「言ってもどうせ信じないだろ」
「言ってみろよ、信じるから」
「この艦は全部俺の能力でイチから創り上げた、不思議技術は勝手に補完された謎技術だ」
「嘘だな」
「だろ?」
俺はローレンスとの話にケリを付け、艦長席のコンソールを操作してゲームを起動する。
この世界にもゲームはあり、魔力ネットワークでどこに居ても無遅延で遊べるものが多い。
「2Dにしちゃ面白いよな」
俺がやっているのはBattle of Magesという人気タイトルの一つだ。
多彩な魔術師から一人を選んで5vs5で戦うゲームで、十分くらいで決着がつくので楽しい。
「艦長、何やってるんですか? ああ、それですか」
「エリナはどんなゲームを?」
「昔は空の向こう…宇宙を探索するゲームをやってましたね」
「へぇ、やっぱり戦艦が出てくるから?」
「はい!」
曇りのない笑顔でそう答えられちゃしょうがねぇな…
「なぁラムズ、ゲームってなんだぁ?」
「ローレンス隊長、やったこと無いんですか?」
「無ぇな。ガキの頃は外で遊んでたし、中で遊ぶことはあっても専ら盤上遊戯ばっかだ」
ローレンスって意外とオシャレなんだな。
ゲームとかバリバリにやってそうなもんだけどな(この世界も第六次第魔法戦争以前には画面を見てやるゲームが普及していたが、戦争でほぼ廃れたらしい)
「あの神様、ゲーム好きなんだろうか…?」
退屈してるならゲームでもやればいいと思うんだが、何か間違っているだろうか。
シィィィン!
その時、何かが結界に衝突する音が聞こえ、同時にラムズがレーダーを見て叫ぶ。
「チッ! 死角から不明艦が接近! 砲撃されました」
「ハーデン! 損害を報告しろ!」
俺は艦載機のメンテ中のハーデンに艦内放送で叫ぶ。
『今デバイスで見ましたが、ありません! 魔導防壁の損耗率は小数点以下です』
「分かった! 作業を続けてくれ」
『了解!』
どうやら大した相手じゃなさそうだが…?
「レーダーに感あり! 新手です!」
「数は?」
「4隻です! 2時、6時、8時、11時の方角より接近!」
結構数が多いな。
「艦長、旗艦と思われる艦を特定しました!」
エリナが報告してくる。
根拠はわからないが、彼女は戦艦のプロだ。
間違えることは無い…と思う。
「スクリーンに映せ!」
「はい」
上部スクリーンに敵の旗艦が表示された。
その姿は…
「でかいな」
「ボロいな」
俺とローレンスが口にした通りであった。
その艦の大きさは中型艦程度、恐らく空賊艦だ。勿論AVALONに比べたら虫けらのような大きさだが、脅威になり得る可能性はある。
『発砲確認』
遅れてシィンと擦れ合うような音が連続で響く。
「ハーデン、ブリッジへ上がれ」
『了解! 一応言っておきますが、魔導防壁の損耗率は1%以下です!』
ハーデンはそう言って通信を切る。
「カロン、出力は足りるか?」
「え…? ああ、はい! 機関出力を20%上げて余裕を作ります」
「分かった、ウェポンシステムオンライン」
「やっと俺の出番か」
ローレンスがめんどくさそうに肩を竦めた。
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