第二話 救出任務
基地へと最接近した俺は、機関出力を落として音を誤魔化しつつ、基地のそばで待機する。
暫くすると...
『敵襲!』
サイレンが鳴り響き、人が一斉に正面の砂浜に集まって整列した。
「各員持ち場に付け!」
「「「「「了解」」」」」
ステルスを解いたAVALONが敵基地に近づいたため、一斉に警戒がなされたのだ。
だが、灯台下暗し。
デカイやつに気を取られていると、足元から這い上るネズミには気が付かないものだ。
ドドドォン!
三つの砲口が光り、結界に直撃して貫通する。
結界の修復が始まる前に俺は内部に侵入して、基地の裏側の断崖絶壁に強襲艇を張り付かせ
る。
そのまま強襲艇を降り、基地内に忍び込み...
「おい、何してんだ?」
そんな声を聞いた。
俺は身構えたが、その声はかなり遠くの方から聞こえた。
俺はスーツの隠蔽機能をオンにして、自身に魔力ではなく気を使った結界を張る。
気を使うって、結構気を使う作業なんだよな...
「ああ、G-46か」
「そうだ、外では戦いが始まってんのにこんな所に居ちゃあ、いくら俺らが『下級民』だからって『終
了処分』は免れねえぞ」
「『終了』を受けるのはお前だけな、俺はここの見張りだよ」
「この先は...エスカリアのゴミ虫どもの掃き溜めか」
「その通り」
会話を聞く限り、男が見張っているのが牢屋への扉なわけか。
「じゃあ『終了』されねえように物資倉庫にでも籠るか」
「敵の侵入を警戒して倉庫でサボってましたってか?」
「うるせえな」
時折知らない単語が紛れ込むが、どうせ碌な事じゃ無いんだろうな。
俺はG-46が去るのを待って、男のそばに立ち、後頭部をぶん殴った。
「うおっ」
男はそんな声をあげてぶっ倒れた。
その隙に俺は扉へと入り込む。
下へ下へと降りて、扉を開けて...
「...............」
惨状を見た。
垂れ流しの汚物、死んだ目をした男たち、そして絶望に打ち拉がれ考えることをやめたのであろ
う子供達。
全員の目が入ってきた俺を見て、「ああ、新入りか」という憐れみの雰囲気を纏った。
次に俺の横を見て、誰も居ない事に気付く。
「あの...」
「君は...?」
無精ヒゲのおっさんが、俺に話しかけて来る。
「助けに来ました」
俺は堂々とそう答える。
同時に、おっさんは失望したような顔をする。
「君みたいなガキだからここに忍び込めたんだろうが、ここはとてもじゃないが私たち全員が脱出
出来るほど甘く無い」
「...それでもこんな所で飢えて死ぬよりマシでは?」
「うっ...」
おっさん達の健康状態はよろしく無い。
子供はもうガリガリでいつ死ぬか分からない。
「〈清浄〉」
俺は失われた魔術である生活魔術で部屋を綺麗にして、空間収納からテーブルを取り出す。
そしてその上に食事を取り出した。
「食事を摂ってから出ましょう」
「ああ...だが、牢屋の鍵はシステムで管理されていて...」
「おっと、忘れてたわ」
俺は監視カメラからシステムに魔力を直接侵入させる。
「〈上書き〉」
それだけで基地内のシステムは完全に俺に掌握された。
機械の一部でも見えてりゃ余裕である。
ただしこういう基地のシステムには緊急用の自己修復機能がある。長持ちしないだろう。
ピー、ガコン
全ての牢のロックと、手錠のロックが外れた。
次に俺は基地内の全ての隔壁を閉じた。
ダクトも封鎖。
次に基地内の調理システムを熱暴走させ火災を発生させる。
基地内管理用のドローンに油を弾薬庫まで引かせる。
弾薬庫周辺には今人はいない。
「ジ・エンドだ」
俺が呟くと、牢屋が激しく揺れるほどの衝撃が伝わってくる。
「今のはなんだ!?」
「弾薬庫を吹っ飛ばしました、敵は牢屋どころじゃ無いでしょうね」
「君は...悪魔かね」
「さっさと食べ終わらないと空腹で脱出するハメになりますよ、ほら食って」
俺はサンドイッチをおっさんの口に詰め込む。
おっさんはサンドイッチを苦戦しながら完食し、立ち上がった。
「我々はこれより敵基地を脱出する!」
「分かりやした隊長!」
俺は彼らを先導するように、扉を蹴りで破壊した。
隊長と呼ばれた男が目を丸くするが、無視だ無視。
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