第二話 転生
次に目覚めた俺が見たのは、さっき助けた少年にそっくりの男だった。
貼り付けたような笑いを浮かべている。
「どうやら、目覚めたようだね」
俺は体を起こそうとして........固まった。
俺が倒れていた床は............空だった。
それも、凄まじい速度で流れる空だ。
「..........ここは?」
「そうだねぇ.......世界の狭間?まぁそんなカンジだよ」
「世界の狭間..........何でそんなところに」
「君ねぇ、自分が死んだことも覚えてないのかい?」
男はそれだけ言うと、輝くように笑った。
「俺が.....死んだぁ?」
「そう、死んだよ。バカだねぇ、僕を見捨てることもできただろ?」
「いや........体が勝手に動いて」
何故かはわからないが、俺は目の前の男を信用する気になっていた。
同時に、あの時かばった少年と同一人物であるという事も。
「さて、本来なら地球側の死者には干渉しないんだけど......君の勇気を讃えて少しご褒美を上げたくなってね.....いやー、君の魂を地球の神と交渉して譲り受けるのは大変だったよ」
「褒......美?」
俺には何を言っているのか理解できなかった。
だがただ一つだけ分かることがある。
俺は確かに死んだという事だ。
「そう、褒美。ちょっと僕の世界のお手伝いをしてくれればいいんだ」
「.........記憶を持って生き返れるなら、何でもしてやる」
「あ、それでいいのかい?君に所謂.....チー、なんだっけ...そうそう、チート能力を与えることもできるんだよ?」
「.........おまかせで」
「そうかい....あくまで君は人生のやり直しをしたいだけなんだね?」
「まだ彼女もできてないもので」
「そうか......良し、分かったよ。君を僕の世界に転生させる。精々頑張ってくれよ」
「勿論」
そうして会話は終わった。
男が手をかざすと、その先にワープホールのような形の穴が開いた。
「全ての条件は整った。さあ、行くといい」
「何だか流れに乗せられただけのような気がするが......」
俺は疑問に思いつつも、穴をくぐる。
その時、声が響いた。
「じゃあね、勇気ある人間よ。精々頑張って僕の世界を良くしてくれよ」
その声に俺は何かを言おうとして................
その前に意識が消失した。
俺が目覚めると、見慣れぬ天井が目に映った。
そして.............
(まあ、やり直しって話だったしそうだよな)
起き上がろうとして、上げた手が小さく短いことに気づく。
俺は、赤ん坊になっていた。
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