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第九話 大戦艦〈AVALON〉艦内ツアー(後編)

今回ちょっと長めかも。

「これが浮遊石ですか?」

「そうだよ」

「凄く…でっかいですねっ!」


俺たちは浮遊石の部屋に来ていた。

中央の機械に上下から挟まれるように掴まれているのが浮遊石である。

浮遊石と聞くと青色の光を想像しそうだが、浮遊石はほぼ透明な結晶で、淡い光を放っているだけだ。


「こんなに大きいの、どこで採って来たんですか?」

「自分で作った」

「作った!? 冗談が上手いですね!」


いや、自分で作ったんだけど…

なんならエスカリアサイズの浮遊石も作れますが…

エスカリアサイズの浮遊石を作っても多分大して消耗しない筈だ。

流石に魔法金属で覆われた空中要塞を構築したら二割くらい持っていかれそうではある。


「ここが機関室」

「うわぁぁあああ…デカいエンジンですねぇ! 冷却機構は? 制御は自動で? そもそもどういう原理で? 待ってください、なぜフライホイールが付いてるんですか?」

「秘密」

「ツレないですね…」


その名称だけ判明した無限魔力次元接続型魔導機関…長いので無限魔導機関に付いてる謎のフライホイールは俺もよくわからんので放置である。


「何ですか、この機構?」

「アクセルランチャーか」


魔力をぶち込むと本来時間の掛かる魔力の増幅を時空魔術で無理やり行って返してくれる装置で、巻き込まれると命がない。

何しろ数千年単位で時間の進む空間行きだからな。


「見たことないですよこれ」

「この艦にしか付いてなさそうだよなぁ」


構想にはあったので勝手に補完されたのかもしれない。


「おおおお、液体タンクが一杯ですね」

「ここは緊急用の水備蓄と、プランクトンタンクだな」

「魔導自動調理器用ですか?」

「ああ」


プランクトンは着水時に銃のグリップのように艦底から突出した第三艦橋から回収を行う。

第三艦橋はちょっと変わった方法で収納が出来るので着陸も出来る。


「ここは…艦底っぽいですけど?」

「第二艦橋だな、上が吹っ飛ばされた時の保険だ」


宇宙戦争ものだと露出した艦橋は狙われそうなのに狙われないか凄く頑丈なのだが、リアルだとそうもいかない。


「どうする? エリナはここで仕事するか?」

「考えておきます!」


俺は隕石にぶつかられても多分死にそうにないし、アリスは生体脳部分さえ無事なら体のスペアは幾らでもある。

アリスは艦橋に接続されているが、何かあれば接続部分ごとエレベーターで脱出出来るからな。

となると生身のエリナが一番危険である。

とはいえ俺のそばにいた方が守りやすくもあるし微妙なところだ。


「ここが第三艦橋のメインホールだ」

「エレベーターで移動するんですか? …なんか階数がおかしくないですか? どうして7階分も…」


そう、第三艦橋は7階分のデカさがあるのだ。

こんなもん、いくら30階建て並みにデカい船だからってしまう場所が無い。

だからこそ…


「アリス、第三艦橋収容!」

『了解』


次の瞬間、部屋全体が揺れ、浮遊感。

直後に何かをすり抜けたような感覚がして、しばらくした後にガタン! と重い金属音がして止まった。


「さあ、下に降りてみようか」


俺たちは最下層の一個手前の階へと降りる。

すると暗闇が俺たちを出迎えた。


「電気系統をオンラインに」

『はい』


明かりがつくが、外は暗いままだ。

俺たちは窓際に寄り、外を見る。


「暗いけど、なんでか分かる?」

「さぁ…内部に収納されたから、それは暗いんじゃ無いんですか?」


ふふふふ掛かったな、まあ予想は出来ないよな。


「アリス、第三艦橋の外部ライトをオンに」

『了解』


パッとライトが付くが、ライトは暗闇を照らすだけで一寸先は闇に包まれたままだ。


「……光が呑まれている? それにスペース的に向こうが照らされないのはあり得ない…まさか!」

「そう、そのまさかだ。第三艦橋は亜空間に収納できる」


無論着陸時だけの機能だがな。

それでも硫酸の海で溶け落ちたり、敵の決戦兵器を避けたらついでに巻き込まれたりなどの目には遭わないだろう。


「凄い…!!!! 凄いです!! …ところでこれ、外部に酸素は?」

「無い」


第三艦橋の収納されている亜空間は限定的に範囲を歪めた無の世界の一部である。

無であると言うことは酸素も当然無い。


「連絡などはどうやって?」

「亜空間と現実間のポータル部分にケーブルを通してる」


使わない時は勝手に左右から縮まって切断される。

急にポータルが消えた時断線しちまうからな。


「外からはどう見えてるんですか?」

「機体下部に第三艦橋が収納されて、第三艦橋の最下層がフタになる」

「ほぉおお…なるほど」


ポータルが切れて落下しないよう、蓋部分も固定される。


「最後は…この部屋ですか?」

「ああ」

「いやに広いですね…まさかここも亜空間?」

「いや、ただの拡張次元だ」


一応外部からの供給が途切れても機能するように内部に魔力バッテリーを10日分備えている。

そしてその中は……


「夢に見そうですね」

「ああ…中々不気味だよな」


白い床が黒い天井をバックにずーっと続いていた。

一応10kmくらい進めば壁があるのだが、地平線にしか見えない。

そして、この床は何のためにあるかと言えば…


「…よっと、この辺に」


ポチ

ゴゴゴゴゴゴッ!


冷気とともに、床が迫り上がる。

そして、その正面には扉が付いていた。


「これまさか…倉庫なんですか!?」

「そう!」


冷暖フリーの倉庫が床下にあるのだ。

しかもこれは一層に過ぎない。

立体駐車場のように、何層にも部屋が分かれているのだ!


「籠城戦になったら勝てませんね…」

「そうでもない、艦橋や居住区から離れてるし、装甲を抜かれたら終わりだ」

「いえ、持久戦の話です」


ああ確かに。

この船なら無限に持ちこたえられるんだよな。

装甲を打ち破る力がない相手なら…の話だけど。

しかもこの艦、〈万物創造〉で形成したせいか継ぎ目が無いんだよな。

それ故に装甲単体でもかなりの強度だ。

特に重要区画は独自に装甲で覆ってるので、万一侵入されても籠城できる…はず。

コアシップは艦橋以外の装甲がクソ雑魚なので、単艦戦闘は不可能に近い。


「最後は…AMDだ」

「何の略ですか?」

「Alice Mystery Dominion…本当はAlice in wonderland にしたかったんだな」


AMDはアリスの本体である中数コンピューターとそのサーバーである。

小型化の際に取り外した長期間のデータバンクはこちらにある。

不思議な国のアリスじゃなくてアリスの不思議な国にしたかったんだよな。

メインコンピューターなら国と称しても問題はないし。


「凄い数のサーバーですね…動力源は?」

「魔晶石を嵌めてる」

「なるほど、外部の動力源に頼らないシステムという事ですね?!」

「そうだ」


この艦の重要区画は全て独自動力源を持っているか緊急用のバッテリーが付けられている。

俺なりの安全策でもある。




「これで終わりだけど…次はどうする?」

「うーん…自宅に戻って引っ越しの準備をします!」

「生活基盤は移さない方がいいんじゃないか?」


万一撃墜でもされたら家財道具全部無くなっちゃうけど…


「大丈夫です! 戦艦の写真集の方は全部実家に預けてあるので、軍服のスペアとレーザーガン、その他諸々を取ってくるだけです!」


ああそうか、この人戦艦キチ…マニアだったわ。

大方司令官として貰っていた給料も戦艦に注いでいたんだろうな…


「これからも宜しくな」

「はい!!!」


エリナが俺にとって信頼のおける人物になった時は…

新型艦の建造ドックを見せてやろう。


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