第八話 大戦艦〈AVALON〉艦内ツアー(前編)
桟橋から艦内に入った俺たち。
まずは広がる廊下を手で示す。
「連絡通路だ、内側の壁は内壁装甲」
「おおっ! この煌めきは純粋オリハルコン! それが見渡す限り!?」
早速気絶しそうな勢いだ。
「こっからだと……大浴場が近いかな」
「おおっ!? お風呂があるのですか!?」
すごい食いつきっぷりだ。
変な艦に興味があるんだろうから、そういうことだろう。
俺は何の面白みもない通路を突き進む。
「内壁装甲は何枚あるんですか?」
「全部で四枚、それぞれ六枚重ねの壁だよ」
「おおぉぉ! 内部まで貫通されてもこれじゃ糠に釘ですね」
貫通されたらされたで修復がめんどくさそうだ。
流石にこの艦全体を再構築はぶっ倒れるレベルだしな。
魔力はともかく精神力が持たない。
「さあ、ここを通過するぞ」
俺は頑丈なセキュリティドアを3個開けて、内側に入り込む。
「このセキュリティドア自体もホワイトオリハルコン合金ですか?」
「ああ」
アダマンチウムが黒ければ硬いように、オリハルコンも白いものは硬い。
俺たちはセキュリティドアを通過し、またしばらく歩く。
すると…
「これが大浴場入り口だ…一応男女別々」
無駄にデカイとスペースが自由に使えるからな。
しかも両方内部構造が違い、日替わりで入れ替わる。
「中に入ってみても?」
「俺は付き合わないぞ」
「了解でーす!」
エリナはさっさと浴場内に入っていってしまう。
中は浴槽が6つくらいあって、シャワーが5つ、シャワールームが2個ある。
風呂には富士山の絵が…無いので、モニターから自然の映像を流して居る。
『わぁああああ!? 無骨な戦艦内にお風呂がっ! 凄い、凄いですぅぅぅ!!!』
おいコラ、何が無骨な戦艦だ。
これでもデザインは得意なんだぞ。
女子でも受け入れやすいフォーマルなデザインだと自負して居る。
「はぁはぁ…次は何がありますか!?」
「うーん次は…士官食堂?」
「食堂まで!?」
エリナは驚く。
反応が新鮮でいいなぁ、あのお姫サマじゃこうは行かなかっただろう。
エリナでよかった。
また面白みの感じられない艦内移動を経て、俺たちは食堂へ辿り着いた。
食堂といっても小さいレストランくらいのスペースで、奥に機械があってテーブルが並んでいるだけだ。
「おおっ、ま・さ・かっ! アレは…」
「魔導自動調理器だ」
「凄いですねぇ! 戦艦に積むもんじゃ無いですよ!?」
どうせ構築するなら…と思い、俺の使える魔力の予算全てをチート能力に預けて出来た船だ。
あらゆる設備が高級品である。
「何か作って貰っても?」
「食べるなら昼にしよう」
一応プランクトンをタンクで保管して、それを分解して食料に変換するシステムだが、無駄にするのは良くないからな。
原理は謎だが“わかんないところ勝手に補完創造”のおかげで助かって居る。
また暫く廊下を進み、居住区に出る。
居住区と言っても個室が数十並んでるだけだがな。
「ここに荷物を置いても?」
「なんか持ってたか?」
「はい、最愛の戦艦の写真を」
胸ポケットから凄え形をした戦艦の写真を取り出し、エリナは微笑む。
これ、息子とか娘とかの写真に向ける微笑みだよな、本来…
「とりあえず置いてきます」
プシューと扉を開けて、エリナは中に写真を置く。
部屋の中は机とスタンド、本棚とクローゼットにミニ冷蔵庫とベッドがあるだけだ。
ミニ冷蔵庫をいつ使うかは謎だが、別に宇宙を航海するわけでは無いので、どこかでジュースを買うこともあるだろう。
「置いてきました」
「よっしゃ、じゃあ次はっと…」
面白そうな艦内設備は見尽くした。
次は主要区画か。
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