第五話 エスカリア外縁部殲滅戦
5話分投稿終わりです。
次回の更新は不明です。
敵艦は発進してくるこちらを見た瞬間、反転して逃げようとした。
とはいえ射程距離外なので追いつけない。
「中距離転移準備!」
俺は声認識にそう命じる。
すると、〈中距離転移まで後10秒〉とモニターに出る。俺は遠ざかっていく戦艦を見つめて、ワープを待った。
その頃、帝国兵は憔悴していた。
エスカリアから出てきた、世界最大級の戦艦であるハイペリオン級を遥かに上回る大きさの戦艦。
しかもそれにロックオンされたというのだから恐怖以外の何物でもない。
「だが…なんとか逃げ切れたな」
「ああ…」
艦長がぼそりと呟く。
帝国兵たちも同感であった。
全員がほっと一息を吐いた時、レーダーから警告音が鳴り響く。
「じっ、次元振動検知! 巨大質量が転移してきます!」
その言葉と共に、背後から轟音。
後部カメラに切り替えれば、空間を引き裂いてあの悪魔の戦艦が現れていた。
「こちらも短距離転移だ!」
「チャージが間に合いません!」
逃げる手段はほとんど無い。
その時、偵察艦隊の司令から命令が届く。
『砲撃準備』
「…そうだよな、あのデカブツでも撃てば沈む!」
帝国兵は艦を反転させ、艦の二門の砲台を敵艦に向ける。
他の艦も反転し、それぞれのあらゆる武装を展開した。
『発射!』
「撃てぇぇぇぇぇぇぇっ!」
艦長の指示で、砲台から魔導粒子砲が、艦の両脇からそれぞれ二発の魚雷が発射された。
それらは全て敵艦に命中し、爆発を起こす。
だがすぐに爆炎は晴れ、黒煙を破って巨艦が姿を現した。
「クソッタレ!」
攻撃が効かなかったことで、士気は完全に崩壊した。
艦はなんとか逃げようと、敵艦の真下に潜り込んで…
「マジかよ」
普通戦艦は上部にこそハリネズミのような武装があるが、下部にはない。
そう帝国軍学校で学んでいた操舵席の帝国兵は、思わずそう漏らした。
艦は無数の砲塔に狙われていたのだ。
ドドドドドドドドドドドド
無慈悲な砲火が見え、その艦は一瞬にして蜂の巣になり爆散した。
その光景を見ていた旗艦の艦長は叫ぶ。
「全艦、魔導防壁チャージ!」
全ての艦に艦を丸ごと覆う防壁が展開されるが…
ドドン、ドン、ドン
敵艦の放った砲撃は、防壁を貫いて左右にいた艦を破壊した。
内部の魔導コアに誘爆が発生し、二つの艦は爆発四散する。
「くそぉ、魔導防壁を前方に集中!」
「了解!」
砲台が回転し、砲門が最後に残った旗艦を狙う。
ロックオン警告が鳴り響く中、司令官は若干焦りつつもそう命令を下す。
ドォンッ!
ギィイイイイイ!
砲撃が旗艦の艦首に直撃する。
が、集中展開した魔導防壁で旗艦は一発耐える。
「もう一発耐えられるかッ!?」
「無理です! 司令官、私は貴方の部下で光栄でした!」
「…私もだ」
「クソォ、こんな所で死んでたまるか、俺は脱出——」
次の瞬間、砲撃が旗艦を射し貫き、二つに分割した。
旗艦はバラバラになりながら誘爆し、遥か下方の海に水飛沫を上げて落下し、最後の大爆発を起こして沈んだ。
「いやあ、中々苦戦したな」
OSが弾き出した戦闘データを見ながら俺はそう呟いた。
艦砲の出力を絞ったせいで一発耐えられてしまったしな。
おまけにこの艦はシールドが自動で展開されているわけでは無いようで、集中砲火を受けてしまった。
まあこの艦は全ての装甲が“魔力/物理衝撃吸収空間ステルス対応アイディアルブラックアダマンチウム合金”で出来ているらしいので、あの程度じゃ傷一つ付かなかった。
表面には黄昏色オリハルコンコーティングなるものがされているらしいしね。
「よっしゃ、帰るか」
この船にアリスを合体させたらもっと楽できそうだな、と思いつつ、俺は舵をエスカリアへと向けた。
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