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死闘

隣を走っている陽太君が黙りこんでからしばらく経った。

さすがにお茶目が過ぎただろうか、と僕は考える。

食料調達をサボって美春と二人で蜜月を楽しんでいたのはさすがに不味かったのか?それとも陽姫ちゃんに冗談半分で避妊具を渡したのが良くなかったのだろうか。

いやいや、イノシシかもしれないな。

イノシシから逃げ回っている時は誰かと合流出来たのが嬉しかったが、状況を見るに彼の厄介事を増やしてしまっただけなのだろう。

後で謝っておこう。

そう言えば、いつの間にか追っかけて来てた耕史君もいなくなっている。

まぁいっか、最悪後で探しに行けばなんとでもなる。


「それより……、」


チラリと彼女、美春の方を見る。だいぶ息が切れてるな……。美春も俺も走るのに限界が来ている。陽姫ちゃんを担いで走っている彼は僕達なんかよりもキツイだろう。

最悪怪我をするかもしれないが、ここは上級生として、美春の男としてみんなを避難させてやろう。

と、そう考えていた時だ。


「先輩、一か八か。やってみます……!」


と、陽太君は言った。


「柳田先輩!陽姫、頼みます!」

「いや!僕が行く……!」

「先輩……、先輩は出雲先輩と陽姫を見ててください。まぁ、危なかったら二人を連れて逃げて下さいね?俺はあそこに友人もいるんで行くしかないんですよ……。って訳で後輩の我儘、聞いてくれたら嬉しいです!」


そう言いながら陽太君は陽姫ちゃんを降ろし、僕に預けようとする。


「やだぁー……、先輩行かないでくださいよォー……、ふぁああ……」


さっきまでハイテンションだった陽姫ちゃんは急に眠くなったのか、あくびをしながら陽太君の服の裾を掴んでいる。

まるで酒にでも酔っている見たいだが、高校生だし飲むわけ無いか……。

何か別の理由があるのだろう。今は聞いている時間が無いから思い出したら聞こうかな。


「陽姫、ちょっとだけ、今だけ我慢してもらえる?後で存分に甘やかしてあげるから」

「んー、約束……です…よ…………、」

「ああ、約束だ。」


そう言ってそっと陽姫ちゃんを抱きしめる陽太君。

既に十二分に甘やかしている気もするが口にしない。

ここで口を挟むのは野暮ってもんだろう。

二人はこれでも付き合ってないとのことだから不思議だ。

僕と美春は中三の頃から突き合っている中だと言うのに……。

……、失敬、話が逸れた。


「じゃ、先輩!行ってきます!」

「ああ、陽姫ちゃんの為にも怪我だけはしないように。無理だと思ったらしょうがないから僕が調理班に包丁を借りてくるよ」

「あはは!じゃ!もしもの時は頼みます!」


そう言って陽太君は後ろを向くとそのまま突進してくるイノシシに向かって行った。


そして、ぶつかる直前、少し実を捩りイノシシを蹴り飛ばす。


「「は……?」」


心の声が漏れたのはどうやら僕だけでなく、美春も同じだったようだ。

だって重さが自分の倍はありそうなイノシシを二・三メートル程蹴り飛ばしたのだ。


「かかってこいや、ブタ公!!」


彼が吠えると、攻撃を受けさらに興奮したイノシシが体制を整えようとしている。


陽太君はそのまま駆け下ってきた斜面を登り出す。

だが、相手はイノシシ、山道など関係なく駆け登る。

そして直ぐに追いつき、


「あっ……!」


陽太君はイノシシが突進してくる寸前に直角に曲がり避けた。

そしてイノシシが横を通り過ぎる瞬間、また蹴り飛ばす。

また、走りだす。

突進、避けて蹴り飛ばす。

何回やってもイノシシは起き上がり執拗に陽太君に突撃を仕掛ける。


陽太君は陽太君で山を登りながら何かを探しているように見える。

一体、彼は何がしたいんだ……?


と、思ったその時、陽太君は木の根元に走り込み、スライディングで何かを取る。

何を取った?あそこに何があったんだ?

陽太君が手に持っているものに目を凝らす。

左手にはなにか赤色に白い斑点のキノコ?か何かを持っている。


すると、陽太君は突進してくるイノシシを前に突然動かなくなった。イノシシを正面に睨んでいる。まるで、これが最後の決着だと言わんばかりに。


イノシシが正面からぶつかりに行く。


「危ないっ!!避けろっ!!」


思わずそんな言葉がでた。

彼は微動だにしない。

そして、やっと動いた。

空いた右手を大きく後ろに引く。


イノシシがぶつかる直前、大きく右腕をしならせ、イノシシの頭ごと地面に叩きこんだのだ。

だが、しばらく経つとイノシシは起きてしまう。どうなるんだろうと見ていると、左手に持っていたキノコをイノシシの口の中に放り込み上から抑えかかる。


イノシシは痙攣し、やがて泡を吹いて動かなくなった。


「ふぃー、疲れたぁ!もう大丈夫ですよ!あのイノシシはしばらく動きません。もし起きたとしても酒に酔ったようにフラフラでしょう。出雲先輩でも倒せると思いますよ」


そう言って陽太君は汗を拭いながら歩いて来る。疲れたなんて話じゃないだろ。


「あ、先輩ありがとうございました!」

「え?あ、あぁ陽姫ちゃんね」


陽姫ちゃんは酔っ払ったかのように寝息を立てている。

陽太君に渡すと軽々しく陽姫ちゃんをお姫様抱っこする。

ジャージを来ているからよく分からないが、彼は凄い筋肉の持ち主なのだろう。何回もイノシシを蹴り飛ばしてたし。

ま、とりあえず誰も怪我をせずに帰れるのはいい事だ。と、たまには班長らしいことを考えながらキャンプ広場まで帰るのであった。

柳田先輩?誰か忘れてませんかね!?

と、言うわけで次回、隅川耕史、捜索回です。


ジャンル別日刊ランキングまさかの28位だった。Momijiビックりして心臓1回止まりました。

なんかどんどん、順位が上がって行ってます。

やる気に直結するのでこれからも☆を投げたりしてくれるとありがたいです。

ブクマ登録もよろしくぅ!!

んじゃ!また次回にお会いしましょう!アデュー!!

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