七
空腹は最高の調味料である。
これは紛れもない事実であった。
私は餓えていた。
そして、涎も出ないほど渇いてもいた。
アニメや画集で口を湿らすも、渇けば飢えは増すばかり。
荒民が思い思いに燐寸を擦り、現れた幻想の御馳走で空腹を紛らわせようとするのは自明の理であった。
それは自らの胃袋を慰めるだけではなく、発表されることで私のような民の渇きも満たした。
時に天よりもたらされた短編は、当然のようにどれも素晴らしい物であった。
もちろん恵みに感謝し、充分に咀嚼し、丁寧に胃袋に納めた。
牛のように反芻することで寿命が延びもした。
だが流民は止められない。
もちろん生きていく為には食べねばならない。
世の中に目をやれば、飢えを感じる暇もないほどに供給が過多であることがわかる。
それは仕方のないことであった。
私も、いつかは戻るとしながらも、その流民の一人に身をやつしていた。
ある老松が、ある王に問うたことがある。
問う。
民に今一番必要なものはなんであるか、と。
王曰く、家である、と。
老松はこれを否とした。
それは飢えたことのない国の答である、と。
老松曰く、それは食物である。
それ程までにこの国は困窮しているのだ。
王は恥入り、老松に更に教えを乞うたという。
国に、民に必要なものは、その時々によって変わる。
それは燐寸で現れた御馳走であったり、他の沼であったり、暖かい家であったりもする。
それらは、私が生きるためには必要なものであった。
それを否定することは出来ない。
こうやってこの度主上からもたらされた恵みも、民の置かれた事情によって、味も違えば満足感も違うのだろう。
食べ方も違えば作法も違う。
様々な民が、この宴に参加している。
そこには善も悪もない。
是も否もない。
私の食事の作法に眉を顰める民もあるだろう。
だが理解してほしい。
断食していた胃に急に食物を入れたらひっくり返ってしまうのだということを。
そろそろ痙攣していた胃袋も温まってきたことだし、私も読み始めようと思う。
過去作を読むことは敢えてせず、このまま進むことにする。
最初に書いた通り、空腹は最高の調味料であるのだから。
くぅ〜疲(略)
くだらない話にお付き合いいただきありがとうございました。
意外と読んでくださる民がいて吃驚しましたが、主上のご威光によるものなのでしょうね。
特に評価してくださった民よ。同志でございますね。
本当にありがとうございます。