第二話 深海へレッツゴー!突然の寒さは死の予感?
(オッス、俺の名前はマン次郎、もと人間のしがないマンボウさ)
(まさか転生したらマンボウになるなんて驚きだよ)
(まあ、魚になりたいと言ったのは自分なので後悔はしていないけどね)
(今回も俺のマンボウ生活をお見せするよ。じゃあ、楽しんでくれよな)
海、それは広く深く果てしない場所。
そこに一匹のマンボウが泳いでいた。
「う~ん、気持ちいいなあ。マンボウに生まれ変わって不安もあったけど、自由に生きれるって幸せだなあ」
マン次郎はそう言いながら、スイスイと泳いでいる。
最初に比べると格段に泳ぎが上手くなっているようだ。
「神様の言う通り、ループ転生すると能力が上がるみたいだな。つまり、死ねば死ぬほど強くなれるということか。とはいっても、そう簡単に死にたくないよな、うん」
ループ転生によって、何度でもマンボウに生まれ変わり、そして強くなる。それがマン次郎に与えられた特権であった。
「まあ、前回は岩にぶつかって死んじゃったけど、そのおかげで丈夫な体にもなったしいいかな」
「さて、今回はどこに行ってみようかな?もう少し深く潜ってみようかな、体も丈夫になったし行けるよな」
マン次郎は今いる場所よりも、深い場所に行ってみることにした。
スイスイと底に向かって泳いでいくと、少しずつ日の光が弱くなってきた。
深海に近づくほど光はなくなり、漆黒の世界が広がっていくのである。
「深海は人の身ではいけない場所だからなあ、人間の頃はどんな世界が広がっているのか、密かに憧れてたんだよな」
そう言いつつ、どんどん潜っていく。
ふと、体が冷えてきたことに気づいた。
「何か寒いなあ、深海って、こんなに冷たいんだな」
特にそれ以上はなにも思わず、気にせずに潜っていった。
しかし、だんだんと体に異変が起こり始めた。
最初にヒレが上手く動かなくなってきた。
次に心臓がドキドキしてきた。
「これ、ヤバイような気がする…」
そう思った頃には遅かったようだ。
突然の苦しみ、心臓が痛い!ヒレも動かない。声もでなかった。
(うう、い、痛い…体が動かない。どうして突然こんな…)
そこからは一瞬だった。意識が途切れ、マン次郎は海底へと沈んでいった。
(何だろう?声が聞こえる…前もこんなことがあったような気がする)
(確か、岩にぶつかったときか。ということは、もしかして…)
「マン次郎、起きなさい」
何度も聞いた声だ、間違いない。
「おはようございます、神様」
マン次郎は、目を開き答えた。
「おはようございます。さて、今の状況は分かりますか?」
「自分は死んで、また転生したんですね」
前と同じ状況から、マン次郎はそう答えた。
「そうですね、今回は何故亡くなってしまったか、その理由は分かりますか?」
神に問われ、マン次郎は考えてみることにした。
(今回はぶつかったことが死因ではないし、う~ん…何かあったかな?強いて言えば、途中からヒレが動かなくなったんだよな)
(それから心臓が痛くなったんだよな、そこからポックリだもんな)
考え込むマン次郎に、神が優しく語りかけた。
「マン次郎、潜った時に何か感じませんでしたか?」
そう言われて、マン次郎は一つ思い出した。
「そういえば、寒かった気がします。あ、もしかして…」
「そうです、貴方の亡くなった理由は寒さによる、ショック死です」
(ああそうか、確かに最初は冷たいと感じたけど、途中からは何も感じなかった。つまり、寒さで体が麻痺してたんだな。そんで心臓も止まったということか)
納得の理由を知って、マン次郎は頷いた。
「今回は寒さでお亡くなりになったので、寒さに強くなり、また、心臓も少し丈夫になっています」
「分かりました。いつもありがとうございます、神様」
「はい、では次も力の限り生きてくださいね。また会いましょう」
神の声が聞こえなくなった。
「あと何回転生するんだろうか?いつか純粋に老衰したいなあ」
そんなことを呟きながら、マン次郎は再び泳ぎ始めた。
自由に泳ぐ姿は、海底へと消えていった。