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第3話 メタボでニートだった俺が悪い王様と貴族を殺して王権奪取成功wwwうれぴーwwwwww



一二三の城一の街、ニの街、三の街を長年支配下と置いている王が住む強大なお城の事である。


豪華絢爛の飾りつけが成されてゴージャス感漂よわせており、気品というよりいかにも俺悪い事してお金儲けしてますとあからさまなアピールをしてる様な強固な城であった。


しかし城と違い、王が支配する三つの街はみずぼらしく、平民達は満足に食事さえ取れない。

それは至極簡単な理由。この城に住む王が住民から多額の税を取り絞っているからだ。


ゆえに王族やそれに使える貴族のみがぜいたくな暮らしを堪能し、酒池肉林の日々を謳歌している中で

彼等に良いように扱われているにも関わらず、反乱を起こす力も武力も持たない平民達はただただ大人しく従うしかないのだ。


しかしそれは”あの男”がこの城にやってくるまでの話だ。


長き苦しみに耐え抜き、必死に明日を送れるよう生き延びる生活を何世代も渡って暮らしていたい平民達の為に(正確にはその平民の中の女性、男はどうでもいい)


魔王を討伐戦と立ち上がった勇者が世直しの為に王の下へと現れたのだ。



後にこの地区は大きく変わるであろう。


何故なら民を虐げ己は裕福な生活を送る堕落した王に成り代わって、この男が新しき王となり平民達を長きに渡る苦しみから解放してくれるのだから



その勇者の名は








「ほほう、ぬしが魔王を討伐せんとはるばる一の街からやってきたといわれる”ルシファー=ヘルヴェイン”という者じゃな! よう来たよう来た!」

「……」


ここは選ばれた者のみが足を踏み入れる事を許される、王の間。

そして中央の煌びやかな玉座にて座るのは一二三の城で最も偉いもの、すなわち王である。


ふさふさの白いひげを蓄え腹はでっぷりと出し、ゲラゲラと笑う様はいかにも堕落した王という感じだ。


そんな彼の謁見を許されたのは一の街からやって来た一人の男。


名はルシファー=ヘルヴェイン。肩まで伸びた黒い髪、そして着飾っているのは漆黒のローブ。

見た目はどう見繕っても勇者っぽくないのだが、どういう訳か彼はこの格好を好んでいた。


そして彼の真の正体を知る者は例え王であろうと知る由もない。


実は彼はとある異世界からはるばるやって来た転生者なのだ。


大学を卒業してから親のすねを血が出る程かじり続けて10年もの時間を無職で過ごしていた所


ある日、アニメグッズだらけの小汚い彼の城ともいうべき部屋に上から巨大な雷が屋根を突き抜けて落下。


その雷をまともに食らい、男は即死したのかと思いきや、なんといきなり真っ暗な空間に移動しており、そこでとてもとても綺麗な女神が現れたのだ。


その女神は彼に言った。私達の世界にはびこる悪の権現である魔王を倒す為に来て欲しいと、そして望むべき力があるのであればなんなりと申し付けてみよと


男は即決でやると言った、魔王を倒せと言った時は渋ってたクセに、望むべき力を与えると言った瞬間コンマ0.1秒で承諾した。男は極めて欲に忠実な性格だったのだ。


そして男はこの世界に転生し、新たな名、ルシファー=ヘルヴェインと女神から与えられた特殊能力を授かり、それから数十年の時を費やし遂に魔王討伐の為に立ち上がったのだ。


「なるほど、これが俺の故郷を支配していたかの王か。まるで醜い豚のようだ」

「な、なんじゃと!? 今なんと言うた!」

「やれやれ見た目だけでなく耳も悪いのか、とことん救いが無いな豚が」


そして勇者ルシファーは王都の謁見を特別に許されてもらったにも関わらず、その王に対して無表情で突然キツイ言葉を浴びせる。


「何度でも言ってやろうか、お前にはこの城はもったいな過ぎる、豚は豚らしく養豚場に行け」

「ぐぬぬぬぬぬ! このわしに向かってなんて無礼な……! 貴様それでも勇者か!」

「鏡を見た事無いのか? その醜く太った体、たるみにたるんだ贅肉、それを豚と称して何が悪い」

「ぬぅ! この王を何度も何度も豚と呼びおって!(豚ってああ見えて体脂肪率低いしそんな太ってる訳じゃないんだけどなぁ……)」


鷹の様に鋭い目つきでズバズバと物を王に浴びせるルシファー(言ってる事は大体同じ事を繰り返してるだけである)

そんな彼に王の顔色は徐々に赤くなりカンカンに怒っている様子、遂には自ら玉座から飛び降りて、その豊満な体を震わせながらキョロキョロと見えない首を振り回しながら叫び始めた。


「兵士達よ! すぐにこの男をひっ捕らえよ! 王を侮辱した大罪人としてすぐ処刑してくれ!」

「悪いがお前の兵達は既に俺のモンだ」

「ひょ!?」

「俺にはある御方から授かった能力を生まれつき持っている、その力を持った俺に、お前等豚共はこの俺に触れる事さえ出来ないんだ」


突如、ルシファーの周りに黒い霧がたちどころに発生する。

そして黒い霧の中から次々と何かが這い出るように姿を現し、それを見た王はあまりの恐怖に腰を抜かし、大きな尻を高級カーペットの上に付けてしまう。


ルシファーの周りには今、かつて自分が従わせていたであろう兵士達が体を腐乱させた状態でワラワラと沸いて出て来るではないか。


「俺はこの霧を吸った者の命を奪いそして肉体をコントロールする事が出来る、いわば俺は無限にゾンビ兵を生み出せることが出来るのだ、この秘術の名は「百鬼夜行」」

「ひぃぃぃぃ~!!(百鬼夜行ってそれ鬼や妖怪が夜な夜な歩き回るってアレじゃん……ゾンビを生み出す力には合わないんじゃないの? ウォーキングデッドとかの方がまだマシじゃないかな)」


ルシファーが能力名を言った時、一瞬王が真顔になったような気がしたがすぐに王は悲鳴を上げて腰を抜かしたまま後ずさり


間抜けな恰好で醜態を攫す王を前にして、周りにウヨウヨとゾンビ達を囲ませながら、まさに鉄壁の布陣といった構えでコツコツと一歩一歩と王の下へ歩を進めていくルシファー。


「豚は養豚場へ行けと言ったがやはり撤回だ、お前にはやはりここで死んでもらう、かつての部下によって盛大に惨く惨めに、少しずつ千切ってその体に嫌という程痛みを味わいながら地獄に堕ちろ」

「す、すまんわしが悪かった! 欲しいモノはなんだってやる! だから命だけは! 命だけは取らんでくれぇ!」

「悪いが俺が欲しいのはこの城そのものだ、故にお前は邪魔以外の何者でもない。下らん命乞いをする前に神に対して懺悔でもしておけば良かったな、アディオス」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


キメ台詞に使いたいワードトップ10に入るであろう「アディオス」を使われてはもう詰みである。

ルシファーがカッコよく指パッチンすると(失敗して音は鳴らなかった)ゾンビ兵達はそれを合図と察して(正確には空気を読んで)次々と無様な王の下へと歩み寄って行く。


そして


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


醜き王の断末魔の叫びが王の間にて木霊する。

それを聞き届けたルシファーは一人踵を返して両目を閉じる。


「哀れな王よ、自らの部下に切り刻まれながら死んでいくがいい」








「キングカウンタァァァァァァァァァ!!!!」

「え?」


突如背後から力強い咆哮を共にまばゆい光が放たれた。


カッコつけてたルシファーは何事かとすぐに振り返るとそこには


周りのゾンビ兵を全てひれ伏させ、天に向かって拳を掲げる肥満な王が立っているではないか。


「フッフッフ、滾る、滾ってきたぞ! こんなにも熱くなったのは久方ぶりじゃ!」


王はまだ倒れずに食らいつこうとするゾンビ兵達に向かって掲げていた拳を構え直すと


「キングパァァァァァァァンチ!!!!」


再び雄叫びと共に正拳を一発お見舞いする。その衝撃は食らったゾンビだけでなく周りの者も灰に帰す程。


「キングキィィィィィィィィィク!!!!」


今度は背後から近づこうとしていたゾンビ兵に短く太った足をお見舞い、その威力をゾンビを貫通して向こう側の城壁を楽々破壊して穴を空ける程。


「ほらほら来~い、もっと来~い! わしを倒して王に成り代わってみせ~い!」

「お、俺の秘技! ひゃ、百鬼夜行!」


ポキポキと拳を鳴らしながら王は極悪人の様な凄みのある表情でゆっくりと勇者ルシファーの下へ歩み寄って行く。

その迫力に表情に怯えが見えつつも、能力を使って再びゾンビ兵を黄泉の地から呼び戻すルシファー。


再びルシファーを守るようにワラワラと現れるゾンビ兵達、それを見た王はスゥーと大きく息を吸うと……


「キングブレェェェェェェェェス!!!!」


王の口から放たれたのはただの勢い良く放たれた巨大な息、しかしその息は瞬く間にルシファーを守っていたゾンビ兵を遥か彼方へと飛ばしてしまった。


再び一人になってしまったルシファーは歯をガチガチ鳴らしながら完全に怯え切った表情を浮かべている。


「どうした勇者よ、まだ奥の手があるんじゃろ? 隠してないでさっさと出さんか~? まさか死体を操るだけがおぬしの力な訳ないじゃろ~?」

「……けてください」

「ん~?」


ブハーッと満足げに笑いながら王はこの戦いを愉しむかのようにルシファーの下へと親し気な態度で歩み寄って行く。

だがルシファーはどういうばかりか、先程まで散々豚呼ばわりしていた王に対して目を涙でにじませると


「助けて下さい!」

「聞こえんな~わしは見た目も悪い上に耳も悪いんでな~」

「もう嫌だなんだよコレ! なんで王様がこんな強いんだよ! 命だけはどうか! 故郷には俺の帰りを待ってくれる娘達がいるんです!」

「キ~ングゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


プライドも何もかもかなぐり捨てて、必死に命乞いをするも王は真上に飛んだと思いきやまたもやこちらに向かって何かしようとしている。


遂にルシファーは彼に背を向けて震える足で必死にその場から逃げようとするのだが


「ドリルキィィィィィィィィィィィク!!!!!」


背後から王の最後の咆哮が聞こえたと同時に、王は空中を回転しながら飛び蹴りを勇者ルシファーの背中に浴びせた。

その瞬間、ルシファーの体は一瞬でバラバラに飛び散り、周りに彼の身体の一部であった肉片を盛大にぶちまけた。


一撃を叩きつけた王はスタッと綺麗に床に着地するとフゥーと一呼吸。


「さあて余興もこれでまでじゃな、命乞いの演技は見事じゃったぞ。では! 本番と参ろうではないか!」


そう叫びながら王が拳を構えるが返事はない。見るとそこには”ルシファーだったモノ”があちらこちらに散乱している。


「フッフッフ、読めたぞ勇者よ。バラバラになって死んだと見せかけて、実は強靭な再生能力を持っていて瞬く間に復活できるのじゃろ、死体を扱うぬしならそれぐらい容易いという事か……」


不敵な笑みを浮かべながら王は腕を組み静かにその時を待つ、だがその時が一向に来ない。


「……あれ? 勇者よどうした? 勇者? ゆ、勇者様……?」


段々不安を帯びた表情を浮かべ出す王様、そして恐る恐るルシファーだったモノに歩み寄ってしゃがみ込むと


「もしかして……本当に死んじゃった?」


返事はないただの屍の様だ。




こうして勇者は王権奪取の為に討とうとした王に見事に返り討ちにあった。

屍は操れる力をもってなお自らが屍となっては元も子も無かったのである。








勇者ルシファー=ヘルヴェイン、一二三の城で平民を貪り私腹に肥えた王に肉片にされ死亡。


最期の言葉 『誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』









「本当に申し訳ない……」

「なんで王様が勇者殺しちゃうのよさ……」


時は進んでいつもの魔王城。

玉座に座るのは王ではなく魔王、彼に対して深々と頭を下げるのは先程勇者を肉片に転職させたばかりの王であった。


「そこは普通に殺されてあげようよ……自分が従えていた兵達に殺されるとか最高の死に方だったのに……」

「いやだってやっとこさ来た勇者がいきなり王権奪取イベントやるんじゃぞ、テンション上がっちまうじゃろ普通、死ぬ前にせめて一太刀浴びせてやるわーといった感じで適当に戦ってたらいつの間にかバラバラになっちゃうんじゃもん」

「もう開き直ったよ、神経図太いなぁ」

「わし王じゃからね」


得意げに親指を立てて自分を指す王に魔王は呆れつつふと疑問が頭に浮かんだ。

なぜ彼は直接この魔王城にわざわざ出向いて来たのであろう。


「そういえば今回ばかりは我に非はないよね? だって王様というか人間全般の管理は女神様がやってるんだし、我は魔物全般の管理しかやってないから関係ないよね? 謝るなら我じゃなくて女神様にじゃないの?」

「いや別に謝りに来たのは建前で、本当は女神様から逃げる為にこの魔王城へ駈け込んで来たんんじゃ」

「ちょっと魔王の城を避難場所みたいにすんの止めてくれる!?」

「固い事言うなよ、わしとお前の仲じゃろ」

「いや魔王と王は本来敵対するもんでしょ!」


サラッと本音を吐露する王は悪びれる様子も微塵も感じない。

さすがは民を虐げる事を生業とする目的で女神から創造された王、性格もかなりねじ曲がっている。


魔王と王が気さくに会話している一方で、魔王の間の扉がバタンとまたもや強く開かれる。


「くおらぁクソキング! テメェやっぱここに逃げてやがったかぁ!!」

「ほげぇ~女神様! どうしてわしがここにいると!」

「人間を統括している私ならテメェを見つけるぐらいお茶の子さいさいなんだよ!」


やって来たのはこの世界の創造神である美しき女神。ズカズカと魔王の間へ入ると早速王を見つけると、チンピラの様な表情で王の元へ歩み寄ると、勢いよく彼の胸倉を掴み上げる。


「なぁんで勇者をお前が殺してんだコラァ! お前王だろ! 魔物じゃねぇだろ!? なに勝手な事して戦闘イベントやってんだああ!?」

「いやだってずっと勇者が来なくて色々溜まってたんだもんわし……ていうかあの勇者に能力授けたの女神様ですよね? 死体を操る能力以外にももっとマシな能力与えられんかったかの?」

「いいだろ別にゾンビを創り出す能力でも! あの勇者は自分で戦いたくないからそういう能力欲しかったんだよ! ずっと他人任せの人生送ってたんだから永遠に自分だけに従ってくれる駒が欲しかったんだよきっと!」

「だったらもっと他の能力も付け加えてあげれば……」

「私の女神の特権じゃ与えられる能力は一個だけなんだよ! 世の中そんな上手くいかねぇんだバーカ!!」


物凄い気迫で睨み付けて来る女神に対しても若干言い訳がましい事を呟く王に彼女は更に激怒する。

だがしかし、そもそもそんな王が転生者に比べてずっと強く設定されていたのが事の元凶なのであって


「そもそもわし等人間の設定を弄っているのは女神様なのじゃから、キチンとバランスのいいレベルにしてくれないとわし等もどう立ち回ればいいのか……」

「うるせぇ! 王が戦おうとするなんて考えてもなかったんだから仕方ねぇだろ! ただでさえ転生者をこっちに呼ぶのにでさえ大変なのに! 全員のレベルを上手い具合に調整なんて出来るかぁ!」

「ああ、女神様また雷神様にお願いしてきたんですかの?」

「そうだよ! 遂に泣く泣く土下座するという選択権がない程追い込まれてる一方だよ! 周りの女神や神様からも白い目で見られて立場完全に無いんだよ!」


抗議する王に対して女神は逆切れで食ってかかる。彼女も彼女なりに辛い境遇に立たされているのだ。

あちこち頭を下げてばかりの日々を送り精神も追い込まれてる模様である。


そんな毎日辛くても転生者をこの世界に送り続ける事に一生懸命頑張っている女神を、玉座の肘掛けに頬杖を突きながら魔王は「あ~あ」と言葉を漏らす。


「やっぱ異世界の運営って難しいんだなぁ」

「魔王様」

「お、黒騎士、いたの?」

「つい先ほど、死んだ勇者が逆転生の間に送られたようなんですが……魔王様、一つよろしいですか?」


この先一体どうなるのかなと魔王がしみじみと感じているとふと足元には自分の部下である黒騎士の姿が

どうやらいつもの様に勇者の情報を伝えてに来ていたらしいが何か他にも言いたげな様子。


黒騎士はふと疑問に感じた事を思い切って魔王に問いかけてみた。


「逆転生の間というのはどういったものなのでしょうか? 私は魔王様に幾度も死んだ勇者はこの場所へ送られたと伝えておいてなんですが、実は私自身はその場所の事をよく知らないのです」

「ああそっか、そうだよね。そこ知ってる者は本当にこの世界でも限られた者しか知らないからね、いいよ教えてあげても、別に隠す事でもないし」

「ありがとうございます」


逆転生の間とは如何な場所なのであろうか、黒騎士の素朴な質問に魔王は頷きつつ答えてあげることにした。


「逆転生の間というのはいわゆる異世界で死んでしまった勇者が送られる安置所みたいな所なんだよ、そんで次の転生を決める為の場所でもあるんだ」

「転生? 転生者をもう一度転生させるのですか?」

「そうそう、一度死なせてしまったのもこちらの責任だし、だから次はどういう世界に行きたいですかとアンケートを取って、希望通りの場所へ転生させてあげるんだ」

「なるほど、という事は無念に死んでしまった勇者達もそれで少しは浮かばれるという訳ですね、希望通りの人生を送れるならさぞかし転生者達も喜びましょう」


そうかそういう場所だったのか、死なせてしまった転生者達にせめてもの慈悲を込めて、希望通りの異世界に転生させる、それが逆転生の間なのだと黒騎士は理解したと手をポンとと叩く。


しかし魔王は頬杖を突いたまま平然とした様子で


「まあウソなんだけどね」

「へ!?」

「だって他の世界に転生させるなんて出来っこないじゃない、そんな権力ウチが持ってると思う?」

「いやだって転生者にどこへ転生させたいかアンケートを取って……」

「アレはそういう希望持たせないと暴れ出したり泣き喚いたりするから書かせてるだけ、実際の所何を書こうが送る場所は一緒」


あっけらかんとした感じで普通に話す魔王に戸惑いを見せる黒騎士に、魔王は話を続けた。


「元々その転生者がいた世界にもう一度送り返すんだよ、記憶を失った状態にして転生される直前の時期に戻してね」

「えぇー!? そうなんですか!?」

「本当の事言ったら転生者は素直に戻ってくれないんだよ、だからウソついてあなたのお好きな世界へご案内しまーすって言っておくの、そんで記憶を奪って元の世界へボッシュート。ね、簡単でしょ?」

「なんだか救われませんねそれって……」


こっちが来てくれと呼んだのに死んだとなったらすぐに送り返す、しかもこちらにいた数十年の記憶を奪って。

それを知れば死んだ転生者達は抵抗するのでウソを付くしかない、何故なら異世界へ来てくれと女神の誘いを受けたという時点で、元々彼等は自分がいた現実から逃げたかったという事なのだから。

その現実に再び送り返すと思うと……黒騎士は少々この世界で死んでいった勇者達に哀れみを覚える。


「おい魔王、適当な事言うな、私だって一応救いは与えてるんだよ。こっちに呼んだ手前私にも責任あるし」

「女神様?」

「ええそうなんですか、知らなかったですよ我」

「まあ私なりに考えてキチンとアフターフォローしてんだよ、散っていった転生者達は」


二人の会話を聞いていたのか、王との喧嘩を止めて女神がしかめっ面で歩み寄って来る。

魔王でさえ知らなかった死んだ転生者達に授けた最後の女神の力というのは……


「元の世界に戻ったらこれから先の人生、ほんのちょっぴり運が良くなるわ」

「ほんのちょっぴり運が良くなるって……具体的にどうなるんですかそれ?」

「そりゃまあ宝くじ買えば5ケタぐらいの金額が当たる確率が少しだけ上がるとか、仕事先で凄いタイプという訳ではないけど中の上ぐらいの異性とお近づきになれるチャンスがあるかもしれないぐらいな?」

「すっごい微妙……」

「仕方ないでしょ、私の力じゃそれぐらいが精一杯なのよ」


一応彼女なりの贈り物なのであろう、魔王は首を傾げて「うーむ」と声を漏らす。

少しだけ運が良くなる、まあ無いよりはマシ程度に考えればいいのであろうか。


「それにここにいた記憶を全部奪うって訳じゃないのよ、多分たまにこの世界の事を夢に見るとかおぼろげにフラッシュバックしたりする事があるのよ。もう勇者にはなれないけど、目を背けたかった現実の中でたまにはこの世界でやって来て色々と頑張っていた事を思い出して欲しいからね」

「楽しい思い出だけじゃなく辛い思い出も蘇るって事ですよねそれ……」

「まあね、でも思い出は思い出でしょ、辛い事なら今後の人生で役立つ経験になるかもしれないし、何はともあれ運がよくなったり思い出もあれば多少の後利益はあるって事だよ」


そう言って女神はいつものヤンキーみたいな様子とは打って変わって、子供を見守るかのような優しい微笑みを見せた。


「ここでは見つけられなかった本当のヒロインだって見つかるわよきっと」

「……頑張ってほしいですね、元の世界に戻っても」

「まあ私はこっちの世界で頑張って生き抜いて、私というヒロインをゲットして欲しいんだけど」

「最後の最後にぶっちゃけやがったよこの女神」


踵を返してこちらに背中を見せつつ女神は最後にぶっちゃけると、呆れている魔王を置いてスタスタと歩き出す。


「さあて向こうの世界の事なんざ考えてるヒマなんかもうねぇぞ、またすぐに転生者こっちに送るから。目に入る神様全員に土下座してなんとかこっちに回してもらうよう頼んで来るから、おい王様、今度勇者とバトったらマジで許さねぇからな」

「わかっておるわい、次からはちゃんと素直に殺されればええんじゃろ」

「それと魔王、今回はテメェに責任はねぇが魔物の管理は常にチェックしておけ。とりあえずあの目玉だけの魔物をどうにかしろ、勇者が生まれる予定の一の街にも出て来たって報告があったぞ」

「どんだけ自由なんだよメダマン……了解しました」


王を連れて女神は魔王の間を後にする、そして去り際に彼女は魔王の方へ振り返ると


「それじゃ、頑張れよ魔王様、頑張って勇者に殺されてみろ」


それだけ言い残して手を振ると彼女は扉の向こうへと消えてしまった。


ラストバトルの舞台にポツンと残された魔王と黒騎士はしばし間を置いた後ゆっくりを顔を合わせて






「頑張ろうか、転生者にこの世界のエンディングを迎えさせる為に」

「はい、散っていった転生者達に負けられませんからね、我々も気合を入れて殺されましょう」


転生してきた勇者がエンディングを迎えるまで


この世界の者の戦いは終わらない。








元転生者 デルタ・クロノス


現実世界に戻った後、ブラック会社から転職を決意。家の近くの工場で働き始める。

4度目の婚活パーティで出会った女性と結婚、後に二人の子供をもうける。

どういうわけか巨大な丸形を見ると変な汗が出る。


元転生者 ジークフリード・ベルダンテ


現実に戻った後、親に頼んで在籍していた学校を転校する。新しい高校ではなんとかやっている模様。

同じ委員会の同級生の子に片思い中である。

周りの人の話をしっかりと聞き、無駄な特攻をかまさないように淡々と告白の準備をしている。


元転生者 ルシファー=ヘルヴェイン


現実に戻った後、他人に頼らず自分の力で生きてみようと親のすねをかじるのを止める。

今は警備員としてバイト生活の日々。

休日の日には痩せる為にトレーニングジムに通うのが習慣となる。

同じくダイエット目的でジムに通ってるちょっとぽっちゃりしてる女性と話し友達になった。

別に痩せる為とかではないのだが、何故か豚肉が食べれない体に。

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