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無関心の災厄  作者: 早村友裕
シラネアオイ
18/57

-- : プリムラとイベリスとシラネアオイ

 花屋を出て、まっすぐ高校の文芸部部室へ直行し、その扉を開けたオレは愕然とした。

 そして、たっぷり30秒は部屋の中を見渡した後、窓際でのんびりと外の様子を眺めている同級生に向かって指を突き付けた。

「おい、そこのマイペース」

「ダメだよ、マモルさん、ヒトを指でさしたりしちゃ。それに俺の名前、マイペースじゃない」

「うるさい、それは初対面で同じ事をしくさった、白根にも言ってやれ」

 そう言って、オレは部屋の中央あたりでパイプ椅子に座って読書する黒髪の美少女にもう一度指を突き付ける。

「現在の文芸部員が2人って事を考慮すると、この『無表情美人』を部室に招き入れたのはどう考えてもオマエしかいないんだが、その予測は間違ってないよな?」

「うん、そうだねえ」

 そうなのかよ。

 しかも白根は、シリウスの身代りに捕まるのではないかと思っていたのだが。

「白根、警察はいいのか警察は」

「その提案は承認されませんでした」

 ああそうですか。

 オレの心配はなんだったんですか。

 気が遠くなりそうなオレに、夙夜は首をかしげながら尋ねた。

「ところでその花はどうしたの?」

「あ、これか? 先輩がくれたんだ」

「『プリムラ』だね。花言葉は――『運命をひらく』」

 運命をひらく。

 図らずも、オレがそっち側の世界を選んだように。

 まさか先輩、マジで夙夜と共謀してオレを『口先道化師』として育てようとしてるんじゃないだろうな?

「私の命題はすべて証明され、第一命題は『ケモノの監視』となりました。これから、私はここに滞在する事になります」

「よかったねえ、マモルさん。一人部員が増えたよ!」

 ああ、そうだな。春だからな。

 新入生勧誘……もうめんどうだからいいか。始業式からのゴタゴタで、どの部活も勧誘なんて忘れてるし。

 こうしてほとんど活動していない文芸部の部室からは、卒業式に一人減り、始業式に一人増えた。

 まさかコレで大団円、なんて、言わねえだろうな。

 オレはぜったいに認めねえぞ。


 でも、オレはこんなめんどくさいヤツは嫌いじゃねえ。

 それに、こんなめんどくさい毎日も、オレ自身も、もちろんこの世界も――嫌いじゃねえよ?




 たとえばそこで生じるモノガタリに、オレが付け入るすきなぞ残されていなくとも。


――運命をひらく


 世界がオレを選ばないなら、オレが世界を選ぶから。




シラネアオイ編はここで終わりです。

次からは、ワレモコウ編となります。


参考サイト

「花言葉 Floword」 http://www.floword.net/

「串間洋蘭」 http://www.kushima-orchid.co.jp/

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