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親子二代の離婚  作者: あまやま 想
何があっても日常は終わらない
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ささやかな幸せ

『それにしてもさ、ひどいと思わない? 一時はあれほど協力していたのに、伯父さんと伯母さんが離婚したとたんに、父さんも…母さんも…姉ちゃんも、何事もなかったかのように過ごしている。こんなの許せない…』


 夏美は誰かに自分の気持ちを分かってもらいたくて、思わず桜に電話した。


「いや、そんなことないよ。冬彦と私のために、伯父さんも伯母さんもあおい姉もいろいろしてくれたでしょう。私、とても感謝しているの」


『えー、そんなのおかしいよ…。もし、二人が離婚しなかったなら分かるけど、そうじゃないでしょう? 桜ちゃんが、今、とってもつらいこと、分かっているのは、私だけだからね!』


 桜は夏美の恩着せがましい発言に少しばかり嫌気がさしていた。何より、この人は心配しているふりをして、面白がっている節がある。電話しているそばで、母・小秋と弟・冬彦が荷解きと片付けを少しずつ進めていた。

 

 小秋は仕事の合間をぬって、ちょくちょく家に戻って、作業を進めていた。幼稚園横に家があるので、こう言った時や子どもに何かあった時はすぐに家に戻れて便利である。


「夏美ちゃん、気持ちは嬉しいけどさ…。もう、全部終わってしまったの。これからは母さんと冬彦と、三人で一緒に頑張るしかないと思う。だから、もう、そんなに心配しなくていいから…」


『そうなんだ…。わかった…。じゃあね…』


 そんな遠回しに言うなよ…。もっと、はっきりと「余計なことしないで!」と言えばいいのに…。変な所で気を遣われたら、もっと惨めになる。もう、誰も私のことを必要としてないのかな…とさえ夏美は思った。


「もう、夏美ちゃんったら…。勝手に電話をかけてきたくせに、一方的に話して、勝手に電話を切るなんて…。頭にくるなあ…。もう!」


「桜、電話終わったの? じゃあ、こっち手伝ってよ! 冬彦なんか、さっきから、ずっと黙々とお手伝いしているよ。ほら、お姉ちゃん! さっさと動く!」


 小秋は娘に早く手伝うように促した。それに急かされるように、桜は段ボールを開ける。そして、中断していた作業を再開した。こうやって、親子三人が着々と作業を進めているおかげで、山のようにあった段ボールがあと二箱までに減った。


「あっ、冬彦、終わったの。じゃあ。そっちも開けて。母さん、こっちを開けるから…。これが終わったら、引っ越しの後片付けも、もう終わりね…」


「母さん、これだけ手伝ったんだから、お小遣いちょうだいよ」


「冬彦、あんた、お小遣いのために手伝ったの?」


 母の問いかけに冬彦は黙って頷く。小秋は息子の正直過ぎる反応にあきれてしまった。


「おかしいなあ…。母さん、そんなこと一言も言ってないんだけど…」


 冬彦はそれを聞いて、頭をがっくり下げた。桜もそれを聞いて、ハアーッと大きくため息をついた。


「桜、お前もか…」


 桜が大きく頷く。まったく姉弟二人そろって…。小秋はあきれかえって、やれやれと首を振った。でも、二人が手伝ってくれなかったら、こんなに早く片付けは終わらなかったからな…。よし、ちょっとあげようかな…と母は思った。


「わかった。今回はたくさん手伝ってくれたから、特別に二人に五百円ずつあげましょう!」


「えっー。五百円だけ?」


「えっ、何だって? じゃあ、冬彦にはあげない!」


「あー、母さん。今のなし! ごめんなさい…」


 こんなささいなやり取りの中で、小秋はささやかな幸せって、こんな時のことを言うのかな…と独りごちる。辰雄の浮気が発覚してから、実にいろいろなことがあった…。でも、今こうやって、親子三人で何事もなかったかのように過ごせることに無上の喜びを感じた。

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