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親子二代の離婚  作者: あまやま 想
何があっても日常は終わらない
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そんなわけないじゃないか…

「あー、暑いよー! こんな時に限ってクーラーが壊れるなんて…」


 あおいは部屋にこもって宿題を進めていた。二学期が始まるのは、まだ先のことだが、お盆が終わると夏の課外授業が始まるのだ。


 それまでに宿題を終わらせないといけないのだが、これまで怠けたり遊び過ぎたりしたせいで、まだ半分ほどしか終わっていない。夏休みの初めに桜と冬彦がやって来て、いろいろあった。


 さらにお盆前には祖母・梅子の四十九日で長野にも行った後、大阪に寄って家族旅行をしたため、一週間近く家を空けていた。まだ高校一年生とは言え、大学進学を希望しているあおいにとって、これは実に由々しき事態である。


「もう、こんな所で勉強できん。図書館に行こうっと!」


 図書館ならクーラーも効いていて、すごぶる快適であろう。多分、この日一日だけではもう全部終わらないだろうけど、ごまかしの効かない怖い先生の教科の宿題から順番に片付けるしかない。教科書、ノート、課題プリントを全てバックに入れて、素早く部屋を出た。


「あっ、姉ちゃん、どこへ行くと? プールなら私も行く…」


 妹の夏美がアイスをくわえながら、部屋から出てきたあおいに言う。あおいは、中学生って…のん気でいいなと思いながら言った。


「高校生って、大変なんだね…」


「いや、中学生も知らないような楽しいこともいっぱいあるから。まあ、今回は私が遊び過ぎたのが悪いやん…」


 苦し紛れにあおいが言った。そうでも言わないとやりきれなかった。夏美はそれを苦々しく思ったのか、またしてもウワッとつぶやく。


「そう言えば、夏休みの初めに桜ちゃんと冬彦君が来ていたけど、おじさんとおばさん、結局離婚しちゃったね。二人がここに家出したり、私達がそれに協力したりしたことって、何か意味があったのかな…。ばあちゃんの法事の時、あの二人、何事もなかったかのようにしていたけど、大丈夫かな…。桜ちゃん、最近、メールをあまり返してくれんちゃけど…」


 さりげなく、夏美がつぶやいた。今、父・修平と母・ゆりは外に出かけていなかった。だから、夏美はその話をしているのだろう。


 祖母の法事が終わってから、両親よりその話はもうしないように言われている。もし、宿題のことさえなければ、夏美とそのことについて、ゆっくり話したいとさえ思った。しかし、宿題を少しでも早く終わらせないと…。次の日からの課外授業で大変なことになる。


「ごめん…、夏美。姉ちゃん、もう行かないといけない。そうしないと明日からが大変になるけん…」


 そう言って、あおいは夏美を横目に駆け出した。夏美はそれを物悲しげに眺めていた。


「どうして、父さんも、母さんも、姉ちゃんも、何事もなかったかのように生活できるのさ。あの二人のためにいろいろ協力したの、ほんの一ヶ月前だよ…。もう、伯父さんと伯母さんが離婚したら、それでおしまいなわけ? むしろ、これからが大変なんじゃないの? 違う?」


 あえて、あおいは何も言わなかった。そんなわけないじゃないか…。それは父も母も同じに違いない。でも、何かをやったからと言って、常に望む結果になるとは限らないのだ。


 むしろ、思い通りの結末にならないことの方がはるかに多いのだ。それに今回に限って言えば、辰雄と小秋のヨリが戻るか、そうでなければ今回のような結末になるしかなかった。


 桜と冬彦が家出した結果、かえって辰雄と小秋の離婚が促してしまったかもしれないし、さらに複雑にこじれてさせたのかもしれない。当事者でもないのに、余計なことをしてしまったように思えてならない。あおいは何となく、そのことに気付き出していたが、うまく言葉にできずにいる。


「無視するな! もういいよ! 姉ちゃんにも頼らないんだから…。私だけが桜ちゃんと冬彦にこれからも協力していく。父さんも、母さんも、姉ちゃんも、自分のことだけ考えて生きていけばいいさ…」


 一瞬、クルッと引き返して階段を駆け上がろうかと思った。夏美をひっぱ叩いてやりたい衝動があおいを襲った。そんなわけないじゃないか…。なんで分からないんだよ…夏美。


 外野は無責任なことを何とでも言えるし、余計なおせっかいを焼くこともできる。所詮、外野は外野に過ぎない。当事者になることはできないのだ。そんなことも分からない夏美はまだまだ子ども…。あおいはそう自分に言い聞かせて、心を落ち着けた。それから、静かに家を後にした。


 夏美は一人、家に取り残された。夏の太陽が容赦なく照りつける家の中で…。ただ、蝉の声だけが嫌なほど、外から響いてくる…。家の中に取り残された夏美は、他に誰もいない家の中で、ひたすら耳を塞いだ。


 何も聞きたくないのに、耳をどんな力強く塞いでも、蝉の声が耳に響いてくる…。恐ろしいほど、静かでひんやりとした家の中で、夏美はうずくまったままだった。

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