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親子二代の離婚  作者: あまやま 想
何があっても日常は終わらない
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晩夏の夕暮れ(1)

 梅子の四十九日の法要が無事に終わった。小秋の父・小倉大和と母・真智は当然来なかった。もちろん、その子どもの翔次も和広も来なかった。


 小秋は桜と冬彦を連れてやって来た。もう、三人は小秋の勤める幼稚園の独身宿舎に移って、新しい生活を始めていた。辰雄は岡川の住んでいるアパートに戻って、岡川との生活を再開していた。


 ただ、岡川はここに来なかった。もうすぐ臨月を迎えるので、家でゆっくりとすることにしたのだ。もっともそれは表向きの理由で、本当はやっとの思いで落ち着かせたものを、また蒸し返さないようにすると言うのが本当の理由である。


 それから、勇務の妹・春子、修平・ゆり一家もここに来ていた。近親のみのこじんまりとした法要であった。ばあちゃんっ子の翔次が来ていないのは寂しいような気もしたが仕方がない。


 辰雄と小秋が離婚した今、高松家と小倉家の家付き合いもなくなってしまったのだから…。


「そうか…。家を貸して、そのお金で養育費を出していくのか。それはいいかもな。東京辺りなら、月十万ぐらいで貸せるだろう。そうすれば、養育費を払ってもおつりが来るなあ…」


 四十九日の法要を無事に終えて、勇務と辰雄は縁側で飲んでいた。もうすぐ盆にさしかかるせいか、夕暮れが心なしか涼しく感じられる。他の人達は法要が終わると、さっさと引き上げてしまった。


 これまでの成り行き上、ゆりと小秋は全く口を聞かなかったし、お互いを避けていた。あおいと夏美、桜と冬彦はこれまでにやったことを振り返ったり、あれこれやった結果がこのようになったりしたことなどをたくさん話していたようだ。


 子ども達はもっとたくさん話したかっただろうけど、大人の事情により話は一方的に打ち切られてしまったようである。辰雄はぼんやり夕日を眺めながら、これまでのことを振り返っていた。せみがせわしく鳴いていた。


「おい、辰雄。人の話を聞いているのか? 誰のおかげで、あれだけの大問題をすんなりと解決できたと思っているのか?」


 勇務はグラスに注いだビールをチビチビと飲みながらつぶやいた。塩ゆでした枝豆とたこわさびをつまみながら飲むビールは本当にうまい。ホッケの開きをむしりながら辰雄は頷く。


「なあ、親父。これでよかったのかな…。今さらこんなことを言うのも何だけど、どうしてこんなことになったんだろう。もし、遥と浮気なんかしなかったら、今も小秋たちと暮らす穏やかな日々が続いていたのかな…。そして、同じような毎日を過ごしながら、寂しい思いをしていたんだろうね。あの時は、それが嫌で浮気なんかしてしまったけど、本当は何か不安や不満を抱えながら、平凡な生活をしていく方が幸せだったような気がするな…」


 辰雄はパックに入った刺身をつまみながら言った。そして、コップに半分ほど残ったビールをぐいっと飲む。すかさず、空になったグラスに勇務がビールを注いた。


「そんなことをサラッと言うなよ。そんなこと、俺だって、昔離婚した時に思ったよ。しかも、俺の場合、離婚した時に浮気していた相手が急に離れていったから、本当にふんだりけったり…だったよ。まあ、自業自得なんだが…。なんか、やりきれなくて、人生って一体何だろうと、しきりに考えたね。もう、生きていても、こんな醜態をさらすぐらいなら、死んだ方がマシだとさえ思ったよ。そんな時だったかな…。ある高僧の方と出会ってね…」


 ここで勇務はビールで喉を潤した。それに合わせて、辰雄もビールを喉に注ぎ込んだ。勇務はそのまま続けた。

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