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親子二代の離婚  作者: あまやま 想
祖母の葬儀
4/70

妻の直感

 小秋はやっと日常の生活に戻れたことにホッとしていた。梅子ばあちゃんの葬儀は本当に大変だった。義父である勇務は


「これは私がやるから、小秋さんは休んでいなさい」


と、優しい言葉をかけてくれたが、他の親戚の目もあるから、お言葉に甘える訳にもいかない。外戚の男性であれば、ゆっくり休む事ができただろう。実際、小秋の父・大和や辰雄の姉の夫・修平などは女性陣が片付けている中でも、お客様扱いで楽しそうに話していたけど…。


 同じ外戚でも、小秋の母・真智は他の女性陣と一緒に裏方の仕事を手伝っていたので、小秋も一緒に仕事を手伝った。その方がかえって気が楽だった。


 でも、そんなことはどうでもよかった。それよりもどうしても気になる事があり、それが頭から離れない。


 岡川さんと言う夫の会社の同僚がわざわざ義祖母の葬儀に駆けつけたことである。なんで、彼女が義祖母の葬儀に来ないといけないのか? それに平然を装っていたけど、明らかに辰雄は彼女が来たことに動揺していた。さらに葬儀が終わった後、夫は彼女をわざわざ近くの駅まで送っていったし、その帰りがすごく遅かった。


 そんな話を職場の同僚と話せる訳も無い。一週間ぶりの幼稚園での仕事は適度に忙しくて、少しは気が紛れた。幼子が「せんせー、せんせー」と言って慕ってくれるので助かる。中には


「せんせーがいないと、さびしーよ」


と言う園児もおり、先生冥利につきる。小秋がいない間は園長先生が担任を代行してくれた。この一週間、特に問題は無かったと聞いている。子ども達が帰ると、とたんにあのことが気になってしかたない。


 これが杞憂ならいいけど…。でも、もし夫が実際に岡川と言う女と浮気していたら、その時は…。おっと、うっかり大切な書類をくちゃくちゃにする所だった。園児の家庭調査表を破ったら大変である。慌てて、小秋はそれをきれいに引き延ばす。


 それから、毎週水曜にある職員会議に出て、さらに教室の整理や掃除をしてから帰路についた。いつもなら五時に帰れるのに、会議のある日は帰りが六時を過ぎる。


 最近は桜も冬彦も大きくなったので、仕事で遅くなってもそれほど問題ないが、二人がまだ小さい頃は本当に大変だった。今では桜が料理の手伝いを、冬彦が洗濯の手伝いをしてくれるようになり、幾分は楽になった。


「ただいま」

「お帰り、お母さん」


 冬彦が声をかけてくれた。冬彦はもうすでに洗濯物をたたんでくれたようで、のんびりテレビを見ていた。これで宿題も終わっていたら言うことなしである。


「冬彦、いつもありがとうね。ところでもう宿題終わったの?」

「……。まだだよ」

「じゃあ、宿題を終わらせてから、テレビを見なさい」


 しばらく渋っていたものの、冬彦は部屋に戻ってから台所に宿題を持って来た。それから問題を解き出した。一方、桜はもうすでに宿題を終わらせていたようで、私の声を聞くなり、二階の部屋から降りて来た。


「お帰り〜、お母さん」

「ただいま、桜」

「お母さん、何か手伝おうか?」


 彼女は料理に興味があり、小秋はとても助かっていた。今はまだ一人では料理できないけど、あと一〜二年もすれば一人で料理できるようになるだろうと…。小秋は密かに期待していた。


 母の料理作りを手伝う娘に、きちんと言いつけ通りに洗濯物を畳み、宿題をする息子…。母にとって、これほど幸せなことはない。これからもこんな日々がずっと続けばいいのに…。

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